【BL小説】 room number213  | 一期一会

一期一会

本も人の出会いも一期一会。時々読者、時々物書き。好きな本やコミック感想を中心に、日常のつれづれと共につぶやいていきます。

<ルーク・シュヴァルツ side >


10


マンションから歩いて十分ほど行くと最寄りの駅があった。駅の途中には大きな駐車場付きのホームセンターがあったり、小さめだけれど商店街もあったりと、買い物するには不自由さは感じなさそうだ。
これから住むには、なかなかよい住環境かもしれない。
僕たち三人は、ホームセンターでカーテンや食器を買い込み、電気屋でノートパソコンを注文し、アンティークショップでしゃれたベッドとデスクセットを見て回った。
普段こんな風に友達と一緒に連んで買い物などしたことはなかったけれど、だれかと一緒にものを見て回り、一緒にモノを選ぶと言うのはとても楽しいことなのかもと思い知った。
「お! これ、カッコイイじゃん」
ちょうどアンティークショップで注文して店を出ようとした所に、ビリーさんがレジの横に陳列された銀製の十字架のキーフォルダーを見付けた。
「ねえ、兄さん。これおそろいで買って部屋の鍵をつけたらよくない?」
「ナイスアイデアだ。ルーク」
僕たちはおそろいでキーフォルダーを購入した。
こんな調子で、僕たちは、次々と必要な品を買いそろえて行った。

僕はとても満足していたけれど、一つだけ気になる事があった。
この兄弟は、どうも仲がよすぎるのだ。
品物を手に取り、吟味するにも、ルークさんの手がビリーさんの肩や腰に手がまわっていたり、妙に二人の距離が近い気がする。
上京する新幹線の中で、簡単に両親がいないことは、弟のルークさんから聞いていたので、二人きりの兄弟だという環境はわかっていたのだが、兄弟ってこれが普通なのだろうか? 僕は一人っ子で育ったからよくわからないけれど。
おそろいのパジャマを買ったり、ベッドを買うにもダブルベッドだったり。
食器は僕に気を遣ってくれたのか、とりあえず三人おそろいのものにしてくれたけれど。
まあ、パジャマがおそろいというのも、兄弟であり得ない話ではないし、ベッドがダブルベッドなのは広い方がいいのかもしれないし。でも、ビリーさんのベッドはシングルベッドで別にあったよな……。
まあいい。
なんだってかまわない。
彼らはただのルームメイトなのだ。
不必要に詮索しない方がいい。
僕は自分に必要なものを買い込むだけ買い込むと、まだ買い物を続けるという兄弟と分かれて先に帰宅をした。
先に帰宅した僕は、安物だけれどとりあえず窓にカーテンをかけ、買ってきたお弁当を広げて食べると、疲れたためかうとうとと眠くなってしまった。
そのままちょっと休むつもりで床に寝ころんだ。

どのくらい時間がたったのだろう。
あれ……?ここはどこだっけ?
ああ。そうだ。僕は引っ越ししたんだった。
気がつくと部屋は真っ暗だった。窓辺だけ差し込む月明かりで、うっすらとそこだけ明るい。
電気をつけなくちゃ。
そう思い、起きあがろうとすると、なにやらギシギシと音が聞こえてくる。
な、なに……? この音。もしかして泥棒?
ビリーさんたちはまだ帰ってきていないのかな。
そう思っていると、小さいけれど、声が聞こえてきた。
「……ああ…ん……」
「くっ……ん……」
なにやら艶っぽい声だ。
テレビの声?
エロビデオでも見ているのか?
でも聞こえてくる方向が違うし、声のトーンが明らかに女性と違う気がする。
僕はすっかり目が覚めて、灯りもつけずに声のする方向に耳を向ける。
こう見えても僕はミュージシャン志望なので、耳はよい方だと自負している。
声の方向を探ると、テレビのあるリビングルームの方からではなく、明らかに隣のビリーさんの部屋から聞こえてくる気がした。
……もしかして……
僕は下世話だと思いつつ、ペッタリとビリーさんの部屋との壁に耳をつけた。
「……ルークぅ……! ああ……ん」
「兄さん、声出しちゃダメだって。いくらルカさんが寝ているからといっても聞こえちゃうかもしれないじゃないか」
「だって……あ……お前が……」
「ふふ……兄さん。そんなにボクがいい…?」
「ば、馬鹿……」
「ボクは嬉しいよ。これからいつでも兄さんとこうしていられるんだから。ルカさんに気づかれないように注意しなくちゃね。早く僕のダブルベッドが届かないかな……」
小さいけれど、時折ギシギシとベッドのスプリングのような音と共にそんな会話が聞こえてきた。
う、嘘だろ――!!!!!!
僕は思わず大声で叫びたくなった。
急に心臓がドキドキして口から飛び出そうなのを、驚いて奇声を上げそうになるのを、僕は必死で我慢した。
その時の僕の驚きといったらどうだろう。
昼間一緒に買い物していて、一瞬、おかしいなとは思ったけれど。
やはりあの直感は間違っていなかった。
ど、どうしよう……。
電気をつけたいけれど、なんだかそれさえもためらわれる。
このまま寝たふり……?
もしかして朝まで?
うう……なんだか泣きたくなってくる。
神様、僕は何か悪い行いでもしたのでしょうか?
僕が無言で十字架を切る合間にも、ギシギシといった物音は隣の部屋から聞こえてくる。
前途多難。
僕の引っ越し一日目の出来事だった。


to be  continued……