<ルーク・シュヴァルツ side >
9
大夫暖かくなったとはいえ、さすがに床にそのまま寝ると背中が痛い。僕は痛さで目が覚めた。
ぼんやりと床に寝転がったまま、毛布がわりのにくるまったコートをはぎ取る。改装が済んだばかりのクロス貼りの天井を見つめていると、河面に乱反射された光りが、斑な鱗のように輝いていた。
光りの鱗は、まるで生きているように跳ねていて、その調子が、なんとなくビリーさんの表情を彷彿されて、僕は一人頬をゆるめた。
昨日の事を思い出していると、玄関のチャイムが鳴った。
きっとあの兄弟だろう。
僕は顔ものっそりと立ち上がり、玄関ドアのチェーンと鍵を開けると、勢いよくドアが開いた。
「なんだ。お前、まだ寝てたのかー? 今日からオレ達もここに移るから」
「兄さん、ちょっとは荷物運んでよ」
ビリーさんの後ろの方から大きなダンボールを二つも抱えたル-クさんが、僕に気づくと顔を出してお辞儀をした。
「大丈夫ですか? 何か手伝いましょうか?」
僕が手を出そうとすると、ルークさんは笑顔で答えた。
「ああ、ルカさんありがとうございます。でも後は業者さんにお願いしてあるし。ルカさんの荷物は全部運び終わったの?」
「僕の荷物はギターだけだから。足りないものはこれから買い物に行こうかと……」
僕がおずおずと申し出ると、話を訊いていたビリーさんがわくわくした顔で近づいてきた。
「買い物するのか? なら一緒にいくぞ」
「すいません。この荷物はどこに入れればよいでしょう?」
アルフォンスさんの後にやって来た引っ越し屋のお兄さんが、ダンボールを山のように積んだカートを、狭い廊下で立ち往生しながら聞いてきた。
「兄さん、買い物もいいけど、まずは荷物を運び終わってからにしようよ」
「ああ……わりぃ」
「荷物はここの部屋。急いで頼むな」
ビリーさんは引っ越し屋のお兄さんに指示すると、昨日つけてもらった自分の部屋の鍵を開けに行った。
ここの部屋は8階建てのマンションの2階の角部屋。広いルーフバルコニーに面してリビングルームがある3LDKだ。
ゆわゆるファミリータイプの間取り。
8帖のマスターベッドルームと、6帖の洋間が2部屋あり、じゃんけんで部屋の割を決めた。
8帖のマスターベッドルームをビリーさん、残り2部屋をルークさんと僕が使う事になった。
僕の部屋は一番南側のバルコニーに面している6帖間。僕の部屋の隣がビリーさん、一番北側がルークさんの部屋。
がらんと殺風景だったリビングルームも、次々とビリーさんが使っていたという家具やテレビが手際よく業者の人に運び込まれ、あっというまに兄弟の引っ越しも済んだようだった。
「まずはカーテンを買わないとな。それからルークのベッドだろ。冷蔵庫や洗濯機、テレビにダイニングセット。このあたり一通りはオレが使っていたのがあるからいいとして、冷蔵庫の中もからっぽだしな。中身も調達しないと」
「兄さん、食器も足りないよ。それに僕のパジャマも」
「わかった。ルカ、買い物行くなら一緒にどうだ?」
「いいんですか? じゃ支度しますね」
どうぜ行く先も同じなのだ。ならば一緒に買い物するのも悪くはない。
僕も彼らの買い物にお供することにした。
to be continued……