ピアノマン 第五章 5 | 一期一会

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第五章



「オスカー、さっきの曲は?」
 すぐさまアルフォンスは尋ねた。アルフォンスは尋ねながらも、まだ興奮した胸の高まりが納まらない。
 オスカーは、自身たっぷりと、にんまりと笑っていた。
「さっきのか? 題名はまだないけど、オレが編曲したんだ。気に入ってくれたか?」
「編曲って……。作曲者は誰?」
「聞かれてもよくわかんないんだよな。オレも知らないうちに耳に残っていた曲だし。でもいい曲だろ? 適当にアレンジしたんだ。あ、それともそーいうのは、コンクールではダメなのか?」
 オスカーは今まで得意げだった表情を、少し曇らせたその時だった。
「アル! アルフォンス!」
 名前を呼ばれて振り向くと、そこには田舎にいるはずの母の姿があった。
「母さん!」
 なんで、ここに母がいるのだろう。アルフォンスは母の姿がここにあるのを信じられなかった。便りはまめに出しているので、もしかしたらわざわざコンクールを見に、田舎から出てきてくれたのかもしれない。
 アルフォンスは舞台の上の自分を母が見てくれたのだと思うと嬉しくて、今すぐ抱きつかんとばかりに両手を広げたが、母はアルフォンスの隣にいたオスカーの姿を見ると、そのままアルフォンスの前を素通りしてオスカーを抱きしめた。
「ち、ちょっと。母さん」
 両手を広げたままの間抜けな姿で、アルフォンスが母を呼んだが、母は聞こえていない風だ。
「オスカーなの?」
 名前を聞かれたオスカーは、知らない壮年の女性に名前を呼ばれて驚いていた。
「どうしたの母さん。オスカーと知り合い?」
「やっぱりオスカー! 貴方、生きていたのね」
 アルフォンスの母は何も聞こえていないのか、オスカーを抱きしめて泣き始めた。
 オスカーにすがりつく初対面の女性を、オスカーはどうあしらってよいのかわからず、おろおろしていた。
「ちょ、ちょっと…待ってください。確かにオレはオスカーだけど」
 見るからに、オスカーは困惑していた。
「母さん、突然どうしたの?」
 アルフォンスも流石に母の様子がおかしいと声を掛けると、ようやく自分の粗相に気づいたのか、母はオスカーから手を引いた。
「アルフォンス、この人が貴方の兄さんなのよ」
 ……オスカーがボクの兄さん?
 何を言われたのか、理解できなかった。
 今まで家族になれたらいいなと。思った事は何度となくあった。最初はひとりぼっちのオスカーを慰める意のものが多かったけれど、途中からは断固となくその気持ちは強くなっていった。
「母さん、それホントなの?」
 まわりにいたルイズ教官もオスカーも、驚いた顔をしている。
 話の内容を察したルイズが、「往来の中で話す内容ではないようですから、よかったこちらに」と、いつも使っている教官室を案内してくれた。
ルイズが案内してくれた教官室の椅子に腰掛けた四人は、ルイズ教官がが入れてくれたお茶で、ようやく落ちついてきた。
 アルフォンスの母親は、今までの経緯を話し始めた。

to be  continued……