第四章
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二週間後、オスカーは無事に退院する事が出来た。
アルフォンスは、マーロウ、ルイズと共に退院の迎えに行くと、オスカーは思ったより元気だった。
右腕のほとんどを巻く白い包帯が痛々しいが、入院中よりも顔色がいい。アルフォンスは、少しだけ胸をなで下ろした。
「今夜はアルフォンスの家に泊まらせてもらいますから」
オスカーはいきなりマーロウに向かって言うと、隣にいたアルフォンスに「いいよな?」と真顔で尋ねた。
こんな状況で嫌だと言えるはずもない。
アルフォンスは「うちでよければ、もちろん」と二つ返事で答えた。
マーロウは心配したようだったが、オスカーが所望するのなら、しかたがない。ならば「せめてアルフォンスのアパートまで車で送らせてくれ」と、荷物をのせアパートへ向かった。
「我が儘言ってすいません。なるべくアルフォンスには心配かけないようにしますから」
車を降りるなり、片腕が包帯で殆ど見えないオスカーが、頭を下げた。
身よりのない自分を心配してくれるマーロウとルイズの心配は、アルフォンスからみても良くわかったが、こんなに礼儀正しいオスカーを見るのも初めてだ。
マーロウは苦笑いしながら「あんまりむりするなよ」とだけ言った。
今まで黙って見ていたルイズも、思う所があったのだろう。いつもは厳しい苦言しか言わないけれど、今日ばかりは、優しい顔をしていた。
「我が儘言える元気があるなら、大丈夫だな。アルフォンスには言ったが、多少ピアノの腕がよくて飛び級で大学生になっているとはいえ、お前達はまだ子供だ。甘えられる大人がいる時には、甘えろ。もっと大人を信用してもいいんだぞ?」とオスカーの頭を優しくなでた。
いつものオスカーなら、そんなことを言われたら反抗しているだろうし、黙って自分の頭をなでられているようなことはないだろう。だが、今日ばかりは違っていた。オスカーは下をうつむき、ルイズに黙って頭をなでられている。それだけ、心が弱っているのかもしれない。
「アルフォンス。悪いがオスカーを頼むな」
「オレはアルフォンスよりも子供か!」
ルイズの言葉を聞いたオスカーは苦笑しながら愚痴ったが、アルフォンスは「はいはい。けが人はさっさとベッドへ。部屋に入って」と右から左に受け流した。
「ちぇ」
小さく舌打ちするオスカーは、いつものオスカーだ。
その様子に安心したのか、マーロウとルイズは黙ってその場を立ち去った。
to be continued……