第三章
1
「アル、こっちの楽譜の解釈の方がよくないか?」
「本当? なるほど。そうかも。ここはやっぱりオクターブ下のほうが、ボクも好きだな」
「だろ?」
オスカーとアルフィンスは顔を見合わせると、どちらともなく嬉しそうに微笑み合った。
あれ以来、コンクールの教官が同じ担当者という偶然から、二人は急速に親しくなっていた。
あいかわらずイズミのレッスンは厳しいものだったが、二人は上手くなりたい。認められたい。と言う気持はお互い同じだったし、同じ編入生同士だという境遇が違和感なく二人を親しくさせた。
*
ルイズの講義が始まって明日で一週間になる。そろそろ自由曲を決めねばならない時期になっていた。
先程から思い当たる楽譜を並べ、作曲家順や、編曲者順にならべたりして二人はお互い意見を言い合う。こんな時間がとても楽しくて仕方がなかった。
気がつくとすでにかなりの時刻が過ぎており、当たりは真っ暗になっていた。
「なあ、腹が空かないか?」
先に言い出したのはオスカーだったが、それに同意してどこかに食事に出る? と提案したのはアルフォンスだった。
けれど、だが、提案したのはいいが、苦学生のアルフォンスは食事にあまりお金をかられない。ならばウチに来る? とアルフォンスが誘うと、オスカーは二つ返事で付いてきた。
オスカーがアルフォンスの部屋を尋ねるのはこれで二度目になる。だが、前回は怪我をしていたし、長居はしていなかたので、実質、部屋を尋ねるのは今日が初めてのようなものだった。
アルフォンスは手短にあった材料でシチューとサラダを作って振る舞った。
オスカーは目をまんまるくして言った。
「お前、どうしてオレの好物がわかたんだ?」
「好物なの? よかった。たくさん作ったから食べて」
好き嫌いがあるかも尋ねなかったが、アルフォンスにとっては、シチューが一番得意な料理だった。
材料を丁寧に切り、鶏肉と一緒にホワイトソースと一緒に煮込むだけ。
アルフォンスも大好きだが、母の得意料理でもあった。いつも母が料理する横で、アルフォンスも見ていたので、手順はよくわかる。いつの間にか、母の得意料理が、アルフォンスの好物。しいては、得意料理になっていた。
オスカーはアルフォンスが鍋一杯につくったシチューのほとんどを軽く平らげていた。
to be continued……