深海探検 第1話 | おバカな2人の二人三脚

おバカな2人の二人三脚

 ふたりで楽しいお気楽生活。 胸を張って前を向いて歩きましょ。

建造物の世界一といわれるものは、建設中を含めると、ほとんどアラブ首長国連邦のドバイに揃っているとか。
世界最大の人工島、世界一高いビル、世界最大のテーマパーク、世界最大の空港、世界最大の人口港 ――
さらにコンドミニアム、スポーツシティ、ショッピングモール、果ては室内スキー場まで世界一だって。 日中の気温が50℃にも達するアラブの地にスキー場はいらんでしょw

そして、世界最大の海中ホテル「ハイドロポリス」なんてものも建造中(もう完成?)です。
室内スキー場は興味ないけど、海中ホテルは面白そう。
ただし、お値段は1泊1人50万円を下らないとか。 なると1週間旅行した日にゃ、600万かい!
…… はいはい、ウチなんかお呼びでないようですね。

そんな酔狂なホテルに泊まらなくたって、いずれこういう時代がやってくるかもしれません。

   *   *   *

20xx年、自家用スターシップに続き、僕たちは自家用マリンビークルを手に入れた。
名前は ”DeepBlue”。 定員2名の小型モデルだが、バカにしちゃいけない。 水深20,000mだって潜ることができるんだ。
もっとも深いマリアナ海溝でさえ せいぜい11,000mぐらいなんだから、これさえあれば、潜れない海はないってことさ。 な、このマリンビークルの性能がどんなに凄いかわかるだろ?

来たるマリアナ海溝制覇を目指すべく、今日は慣らし運転を行うことにした。 場所は、南西諸島の東沖に分布する琉球海溝。
最深部が約7,500mであるため、慣らしにちょうど良いのがここを選んだ理由だが、本当の理由は他でもない。 海底リゾート『沖縄ドロップ』である。
深海の水圧にも耐えるドームには、ホテルやショッピングモールをはじめ、遊園地やゲームセンターがある。 先日オープンしたばかりのリゾートだが、月や火星などの宇宙旅行に飽きた若者を中心に、人気は上々のようだ。
2000年初頭に建設計画が持ち上がったときから、僕たちはこの海底リゾートを心待ちにしていた。 その間、超深海運転免許を取り、マリンビークルを買って、ついでに超深海救急救命士の資格まで取った。

そして、ようやくこの日を迎えたのである。
「用意はいい?」
「うん、いつでもいいよ!」
「よし、それじゃ、深海へGO!」
「GO GO!」
中で騒ぐ2人をよそに、マリンビークル”DeepBlue”は静かに潜行をはじめた。
すぐに陸上と『沖縄ドロップ』をつなぐ宿泊客輸送用エレベーターが姿を現した。 エレベーターで移動中も深海が見えるよう、アクリル板がはめ込んであり、一定間隔に設置された海中電燈が濃紺のはずの海中を明るく照らしていた。 僕たちは、この明かりに沿って潜行することにした。
「あのエレベーター、面白そうだね」
「うん、今度はあれに乗って泊まりに来よう」
「みてみて、中の人が手を振ってるよ」

深海探検

深度7,200m。 緑色の大きな『沖縄ドロップ』 の屋根が見えてきた。
そろそろ海底に達するから細心の注意が必要だ。 海底に激突したら大破して船外に放り出されてしまう。 そうなれば一巻の終わりだ。

計器が正常であることを確認していると、船内にキィーという音が響いた。
故障か? いや、そうではないらしい。 音は真下の海中から聞こえてくる。
やがて光に照らされ姿を現したのは、体長20mを超えるダイオウイカだった。
赤黒い身体をくねらせ、不気味な青白い光を発光させていた。
「あのイカ、エレベーターを狙ってるんじゃない?」
「ほんとだ、あれが激突したら大変なことになるぞ!」
マリンビークルには武器なんか搭載されていない。 せいぜい海底生物や砂を採取するために取り付けられたアームぐらいだ。
「アームでイカの腕をちょん切ってやるか!」
「危ないよ~、近づいたら吹っ飛ばされるよ」
確かに。 ヤツは圧倒的にデカイ。 とても勝ち目はない。

いろいろ考えたが方法は見つからない。 僕たちは、ただ固唾を呑んで見守るしかなかった。

To be continued .....and To be concluded