その輝きは【星桃】 | ももたまい妄想奮闘記

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キモいオタクが書くももたまい小説

完全パラレル。
大学3年生の百田さんと、大学2年生の玉井さん。
そしてこの話の主人公は大学1年生の完全なる第三者です。
他の誰でもない第三者なので、是非ともあなたが主人公と思って読んでいただけたら楽しんでいただけると思います。

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空きコマの暇つぶしに大学の図書館に来た。
この星桃(せいとう)大学に入学してからもう半年。
すっかり大学生活にも慣れた。

図書館に入ると意外にも混んでいて、私は窓際の席に座った。
ふと隣を見ると、女性が自分の腕を枕にして机に突っ伏して寝ていた。

茶髪の高めのポニーテール、綺麗な肌に華奢な体。ふと彼女の近くに置いてあるノートを見ると、「百田夏菜子」の独特な文字。

あ、3年生の百田さん。
スポーツ推薦で入学して、うちの大学のバスケ部を予選敗退の弱小校から全国大会出場校にまで引っ張った人。
可愛いルックスでかっこ良すぎるプレーをするというギャップが広まって校内ではすっかり有名人。

やっぱりこうやって近くで見ると小さくて可愛らしい人だ…。

まじまじと見ていると、彼女の耳に光るものが見えた。

ピアス…?

驚いた、百田さんピアスしてるんだ。
真っ赤なピアスだ。キラキラと輝いている。

少しの間見惚れていると、スッと前に人影を感じた。

「夏菜子、勉強しに図書館来たんでしょ」

その口調は少し怒っていて、呆れているようだった。
声の主を見上げると。

あっ…!この人、ミス星桃を2連覇した玉井詩織さん……めっちゃくちゃ可愛い…。

「夏菜子、起きて」
「んんん〜〜〜」
「夏菜子ってば」
「詩織…」
「なに」
「ちゃんとパンツ履いて…」
「ちょっ、ばかっ!ここ図書館!」
「ん…?あぁ…」
「あぁ…じゃなくって…!」

大丈夫かな、なんかパンツとか聞こえたけど。
2人は小声でずっと言い合っている。

そういえば友達が言ってたな。
玉井さんと百田さんはこの大学のナイスコンビだって。
学年も学部も違うのに一緒にいることが多くて、お昼はいつも一緒に食べてるところを目撃されているし、休日に2人で出掛けているのを見た友達だっている。

あ、百田さんは部活の練習の時に毎回玉井さんの作ったお弁当を食べていたり、玉井さんお手製のお守りがバッグに付いていたり、練習終わりはいつも玉井さんが迎えに来るってバスケ部の友達が言ってた気がする。

この話を何人かの友達とした時に、もしかしたら2人は付き合ってるんじゃないかって盛り上がったなぁ。

そんなことをぼんやりと思い出していると、私の視界に玉井さんが入り込んできた。

「ごめんね、夏菜子がうるさくって」
「あっ…………いえ……」

びっっっっっくりした…。

「うるさいのは詩織だよ。ねー?」

今度は百田さんが視界に入り込んできた。

なんだなんだこの一瞬で開幕して一瞬で終わったパレードは。

「だから夏菜子は勉強して、今度こそ単位やばいんでしょ?」
「大丈夫だって〜」
「そう言ってこの前ギリギリだったでしょ」
「ぎくっ…」
「今度こそ本当に留年しちゃうよ?」
「へへ〜、そしたら詩織とおんなじだね」
「ばかっ、そういう事じゃない」

所詮私はモブだった。
私の存在なんて秒で忘れて2人はまた言い合っている。仲良しだなぁ。

でも一応ここ、図書館なんだよなぁ。
2人とも絶対忘れてるな、これ。

「もー、とにかく勉強しなよ?私これから川上教授のとこに用があるから、帰ってくるまでにここの問題までやっておいて、分かった?」

玉井さんは百田さんに早口にそう伝えると颯爽と図書館から出て行ってしまった。

そのあと百田さんは素直に勉強するのかと思いきや……

「ふぅ…」

と息を吐いて、また自分の腕を枕にして机に突っ伏してしまった。

図書館の人もだんだん少なくなってきて、暇つぶしにやっていた課題も終わりそうになってきた頃、百田さんが顔の向きを変えた。

ねっ、寝顔が…!なんて思ってたら、チャリンという音がした。微かな音だったけれど、百田さんが勢いよくガバッと起きたのでびっくりした。

「ピアス………ピアス!」

え?と思って百田さんの耳を見ると、さっき見た真っ赤なピアスがない。

百田さんは椅子から立ち上がって椅子と机の下を一生懸命に探し始めた。
私もいてもたってもいられなくなって椅子から立ち上がった。

図書館の床はカーペットだ。だからこそ、さっき聞こえたチャリンという金属音が結構なヒントだと思う。

百田さんと目が合って、彼女は少し驚いた。

「ピアス、大切なものなんですね」
「うん、すっごくすっごく大切なの」

こんなに可愛い百田さんがこう言ってるんだ…!なんとしてでも見つけなくては!と意気込んだものの、本当に見つからない。

「えぇ…なんでないの……?」
「きっとありますよ!もっと探しましょう!」

しばらくたった後に、前の椅子のネジ穴に綺麗にハマっているのを発見した。

「良かったぁ……!」
「百田さんの大切なもの見つけられて良かったです!」
「ありがとう、ほんっとうにありがとう!」

ぐっ…!めっちゃ可愛い何この人。

「そんなに高価なものなんですか?」
「え?あぁ、ルビーなの、これ」
「へぇ!凄い綺麗です…」

百田さんは満足そうに笑った。

するとちょうど玉井さんが図書館に入ってきて、百田さんの前まであっという間に歩いてきた。

「夏菜子、終わった?」
「詩織、帰ろ」
「え?終わったの?」
「いーから、帰ろ」
「終わってないでしょ」
「いーからいーから」

百田さんは机の上に広げていた教材やノートを素早く鞄に入れ始めた。

「もう…留年してもほんとに知らないからね」
「そう言ってこの前助けてくれたじゃん詩織ちゃんてば」

2人が仲良く帰り始めた時、百田さんが「あっ」と言って私の方を振り向いた。

百田さんは私の前に立ってポケットをゴソゴソして、
「ありがとね」と小さな声で言いながらチロルチョコを2つくれた。

「夏菜子、仲良くなったの?」

と言いながら玉井さんも私の前へ来た。

「私のピンチを救ってくれたの」
「へ?」

何も意味が分かっていない玉井さんをよそに、百田さんは私の目を見て満面の笑みで
「ね!」と言ってくれた。それだけであれだけの労力をかけた意味があった気がする。もうこちらからお金を払いたいレベルで可愛い。

「じゃ、夏菜子が迷惑かけたってことで私からも」

そこで気づいた。

玉井さんの左手の人差し指に赤く光るものを見つけてしまった。

あの輝きは安っちい指輪の飾りなんかじゃなくて、間違いなくルビーだ。

きっとお揃いなんだ。
だから百田さん、あんなに必死になって探してたんだ。

「あれ?もしかしてミルキー嫌いだった?」
「あっ…いえ!大好きです!」

危ない危ない、めっちゃキュンッてなってた。

「じゃ、ありがとね!」
「夏菜子がごめんねー」

そう言って2人は今度こそ図書館から出て行ってしまった。

ルビーが高価だからあんなに探してたんじゃない、もっともっと凄い価値があるからだ。

いや、価値なんてつけちゃダメなくらいのとてつもない愛を私は目の当たりにした。

確か、ルビーは愛の象徴であって、石言葉は純愛だとか情熱的な愛だった気がする。

バレる人にはすぐバレますからね。

2人がチロルチョコやミルキーみたいなとっても甘い関係なんだってことは、みんなには黙っておこっと。