恋人は元から素直でした。 | ももたまい妄想奮闘記

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キモいオタクが書くももたまい小説

(恋人が素直になりました)の玉井編です。
見てない方は必ず前作を読んでから今作をご覧ください。
全て百田目線。

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私、百田夏菜子は悩んでる。

何にって、付き合っている玉井詩織についてだ。

私はこの前、その玉井詩織の罠にまんまとハメられた。詩織が道端で貰ったとか言う飴を普通に舐めたら、自分でも訳が分からないくらい本当の気持ちが全て言葉になって出てしまった。

そして今日、その飴を見つけた。
それはベッドのサイドテーブルの引き出しの中に入っていた。

「詩織め…2つも貰ってたのか」

2回も私をあんな目に遭わそうたってそうはいかないんだからね。

「あれ?夏菜子、そんなとこで何やってんの?」
「うわっ!えっ、あっ、いや」
「そんな驚く?」

笑いながら私の方へ近づいてくる詩織。
やばいやばい、手に飴を持ってるのに。
よし、もうしょうがない。

飴を素早く袋から出し、口の中に放り込む。
舌に触れないよう奥歯で挟んだ。

そして詩織の方を振り向いて、ベッドの上で両手を広げれば。

犬みたいに飛びついてくる詩織。

詩織の顔を両手で包んでキスをした。

「……かなっ…」

詩織が微かに口を開けた瞬間に、奥歯に隠していた飴玉を流し込んだ。

「んっ!?ちょっ……」

詩織は驚いたけど、口から出させまいと舌も一緒にねじ込んだ。

あれ、でももしかして私も舐めることになるのかなって途中で気づいて口を離した。

「なにっ!?すっごい甘いんだけど、さっきまでなんか食べてた?」
「あっ、いや、ちょっと、ね」

よかった…飴玉を入れられたことには気づいてないみたい。いつもは苦しめられる詩織の鈍感さに救われた。

あの飴は確か舐め終わってから4時間くらい効果があった。でも個人差とかあるのかな…。

「夏菜子?」
「えっ、なに?」
「大丈夫?なんか今日おかしいよ」
「そ、そう?」

やばいやばい、いつも通りにしないと。
さてさて、詩織はどれくらい素直になってくれるんだろう。

「詩織」

優しく呼び寄せて、抱きしめる。

「んっ、どうしたの夏菜子」
「え?」
「今日は甘えてくるじゃん」
「べっ、別にそんな…」
「そんなことあるよ」

違うのよ、これは作戦であって…ってまぁそんなことはどうでもいいか。
詩織はニヤニヤしてる。可愛い。

「夏菜子、私のこと大好きだもんねー」
「あー、はいはい」
「私も夏菜子が大好き」
「うん、知ってる。私も好きだよ詩織」
「私の方が好き!」
「そうかな〜」
「夏菜子の好きより私の好きの方がぜーったい大きいんだからね!分かってる?」

いやちょっと待て、これ素直になってんのかな。
普段から詩織は素直だし、今みたいなこともしょっちゅう言ってる。あれ?ん??

「聞いてる?夏菜子」
「あ、うん聞いてるよ」

くそう…分からない…。
飴の効果なのか、はたまたいつもの詩織なのか。

「詩織、私のこと好き?」
「ふふっ、急になに?」
「いや…」
「言われないと、不安になっちゃう?」
「ちがっ、違うよ!」

この前のアレをいじってくるとは…。
珍しく私が詩織に弄ばれてる。
しかもまたニヤニヤしちゃって。
今日の詩織は頬がずっと緩みっぱなしだ。

ここは一歩私が攻めるか…。

「そう、不安になっちゃうの」
「え〜、どうしよっかな〜」
「なっ…」

なんか意地悪になってる…。

「夏菜子が言ってくれたら言うよ」
「なんでよ」
「なんでも」
「はぁ……」
「あっ、夏菜子今呆れたでしょ!」
「呆れてないよ」

あれれ、なんか面倒くさくなってる。

「ぜーったい呆れてた!今!」
「呆れてないってば」
「そう?」
「そうだよ」

こんなくだらない会話、久しぶりにした気がする。なんだか懐かしい。

詩織、こういうのがしたかったのかな?
思わず笑みが溢れた。

「あっ、なに笑ってるのー?」

そう聞いてくる詩織も嬉しそうに笑ってて。

そんな詩織の頭を撫でて可愛らしい唇に一瞬だけ触れると、背中に詩織の腕が伸びてきて2人してベッドに横になった。

「し、詩織?」

またまた珍しく、ベッドの上で詩織に見下ろされる。この視界が新鮮で嬉しくなって、詩織の顔を両手で包んで引き寄せる。

口をつけて、すぐに舌を入れると当たり前のように応じる詩織が愛おしい。

「んっ…はっ…かなっ…」
「たま……」
「やめっ……」
「……んっ…?」
「かなっ…やめてっ…」

途端に肩を叩かれて離れていく詩織。

「ちょ、詩織?」

体を起こして私の上に跨る詩織。私も体を起こしてまた抱き合いながら座る形に戻った。

「どうしたの詩織」

詩織の目は少し潤んでいて、顔が赤くなっていた。

「やっ…」
「詩織?」
「……いつも私ばっかり夏菜子のことが好きみたいなのが悔しい」
「……へ?」

悔しくて泣いてるの?
か、可愛い……。
私も大好きだけどね。
言わない私が1番卑怯だ。

「好きだよ、詩織」

詩織の潤む瞳をじっと見つめながらそう言うと、恥ずかしげに詩織が目を逸らした。

そんな詩織の顔をもう一度こっちに向けてキスをしようとしたら、

「やめっ、やだっ…」
「は?」

首をブンブン横に振る詩織。

「なんでよ、詩織」
「だって……」
「だって?」

少しだけ沈黙が続く。

「……夏菜子の…キス、き、気持ち…いいから…したくなっちゃうん……だもん…」
「……っ」

最後は本当に消え入りそうな声だった。

そんなうるうるした目で言われて、我慢できる人なんていると思うの?

詩織を抱きしめて、またベッドに倒れ込む。

「ごめん詩織、我慢できない」
「かな、こ…?」

いつも通りの詩織を見下ろすこの視界が、これから始まることを容易に想像させて。

あの飴玉に1番翻弄されてるのは、私なのかもしれない。

詩織の全てが愛おしくて。
ぐちゃぐちゃにしたいくらいに愛おしくて。





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情事が終わった後に、飴のことを詩織にバラしたら、笑いながら

「気づかなかった」

って言ってた。

「だからさ、夏菜子」
「ん?」
「今度は飴なしで、夏菜子に甘えてもいーい?」
「飴なんてなくても詩織は甘えんぼうだよ」
「そんなことないもん」
「ふふっ、どうかなー?」

今夜はまだ長いみたい。