8月22日、横浜市長選挙の投開票が行われ、野党推薦の山中候補が圧勝するという衝撃的な結果となりました。
今回はこの歴史的な横浜市長選挙について振り返りたいと思います。
1.横浜市長選挙概要
まず、横浜市長選挙はどのような選挙だったかを振り返ります。
8月29日に任期満了を迎える林文子市長の後任を決める選挙で、現職の林市長の他に7人の候補者が乱立するという前代未聞の選挙でした。しかも、ただ候補者が多いだけではなく、国会議員や知事、大臣などを経験した有力な候補者が乱立するという状況でした。
得票率25%を上回る候補者がいない再選挙に突入する可能性も報じられ、全国的な注目を集めていました。
2.候補者一覧(届け出順)
太田正孝 前横浜市議会議員(立憲)
田中康夫 元長野県知事、元衆参議員議員(新党日本)
小此木八郎 前衆議院議員(自民)、前国家公安委員長(菅義偉内閣)
坪倉良和 卸売会社社長
福田峰之 元横浜市議会議員、元衆議院議員(自民→希望)
山中竹春 医学部教授(立憲推薦、事実上の野党統一候補)
林文子 現職(過去の選挙では自民・公明・民主などが推薦)
松沢成文 前参議院議員(維新)、元衆議院議員(民主)、元神奈川県知事
争点は主にコロナ対策とIR(カジノなどの総合的リゾート)誘致問題で、林、福田の両氏のみIR推進賛成、それ以外の候補者は反対を表明していました。
小此木氏は現職の大臣でしたが、大臣職と衆議院職を辞してまで横浜市長選挙に出馬しました。
松沢氏も横浜市長選への出馬を以って参議院議員を失職しました。
3.投票率
投票率は前回を11.84%上回る49.05%でした。
前回を大幅に上回った理由として、候補者が多く選択肢が豊富であったことや、争点が明確であったこと、コロナ対策への不満などが考えられます。
4.選挙結果について
山中竹春 506,392票
小此木八郎 325,947票
林文子 196,926票
田中康夫 194,713票
松沢成文 162,206票
福田峰之 62,455票
太田正孝 39,802票
坪倉良和 19,113票
山中氏が当選、5位の松沢氏までが供託金返還
5.投票動向について
出口調査の結果は以下の通りです。
注目すべきは無党派層(特になし)です。
無党派層の約半数が山中氏に投票しており、その次に多い田中氏が無党派層の4分の1を占めています。
それに対し、小此木氏、林氏は無党派層の10分の1程度しか取れていません。
小此木・林の両候補を与党系、山中、田中の両候補を野党系の候補者と考えると、与党系:野党系の得票の割合は約2:8です。つまり、野党候補は与党候補の4倍、無党派層からの支持を得ていたということです。無党派層だけで考えると野党は与党を圧倒しています。
これは、横浜市内だけに限った現象ではなく、全国的にこのような状況になっていると予測できます。なお、松沢氏は維新系ですが、維新だけは地域差が顕著です。近畿以外の支持は上のグラフの通りでしょうが、近畿地方ではこのような状況ではありません。
世論調査の結果だけを見ると自民党の支持率が他の政党を圧倒しているように見えますが、上記の通り自民党支持者よりも多い無党派層の大多数は自民党以外に投票しているため、単純に支持率だけで予測をすることはナンセンスです。
無党派層の多くが野党候補に投票している理由として、「野党は支持できないが、与党よりはマシ」と考える人が多いからではないでしょうか。野党を支持していたら無党派層ではありませんし、与党に投票していたら、与党の方が良いと言っていることに他なりません。
有権者の多数を占める無党派層、その無党派層の中の多数派は「野党は支持できないが、与党よりはマシ」で野党に投票しているのでしょう。ですから、立憲の支持率が自民の支持率を大きく下回っていたとしても、立憲をが衆院選に勝つことは十分に考えられるのです。
6.今後の横浜市
山中氏は今までは政治家ではありませんから、優秀なブレーンを付けて市政運営をしていく必要があります。山中市政が失敗すると野党にも大きなマイナスです。
横浜市民の期待に答えられるように、推薦した野党もバックアップしていく必要があります。
7.今後の政界
菅総理の地元で、菅総理の側近であった小此木氏が大敗したことで、菅総理の責任問題につながります。
菅総理は自民党内で求心力を失いつつあります、自民党総裁選や衆院選にどう影響が出るのか注目です。
落選した候補者のうち小此木氏は政界引退を表明しました。
林氏は8月29日までは横浜市長であり、市長退任後はどうするのかわかりません。年齢的に引退の可能性は高いです。
田中氏と松沢氏は今回を以って引退するとは考えづらいです。国政復帰を目指すのか、いずれかの首長を目指すのかはわかりませんが、いずれ何らかの選挙に立候補する可能性が高いです。
また、松沢氏の失職の影響で2022年の参議院神奈川選挙区は定数4+1という変則的な選挙区になります。これは、通常の4議席に補欠選挙分の1が加わり、4位以上は通常の6年任期、5位は補欠当選となり3年任期となるものです。いつもと定数が異なるので、各党がどのように考えるのかが注目です。
横浜市長選を終え、茨城県知事選挙は与野党相乗りとなったため無風模様で、注目の首長選挙は暫くありません。
衆議院の任期満了まで約2か月と迫った中、いよいよ本格的に衆院選ムードに入りそうです。