臨時国会について | 大人のための政治教室

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政府が臨時国会の召集を見送るというあり得ない報道がありました。

 

 

憲法53条

「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」

 

内閣は自主的に臨時国会を開くことができますが、国会召集の要求があった場合、必ず召集しなければならないルールになっています。当然として、野党だけで総議員の四分の一を上回っています。野党の要求があった時点で、内閣に国会を開くかどうかの選択権はなく、必ず開かなければならないのです。

これは、明確な憲法違反です。
 
また、同時に憲法99条違反でもあります。
憲法99条「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」
 
1.自民党の言い分
自民党は、「いつまでに開かなければならないという決まりはないのだから、そのうち開けば良い」と言っています。
過去の臨時国会は、ただちに日程の話し合いが行われ、召集の要求があってから概ね20日以内に開かれていることがほとんどです。
また、自民党の改憲案においても、「20日以内に開会しなければならない」と明記してありますので、20日以内に開会することが常套と言えます。
 
2.民主党政権時の臨時国会
民主党政権時の臨時国会召集はとてもスムーズで、臨時国会召集の要求があった直後に日程の調整があり、数週間後に開かれるといったものでした。
2011年9月に開会した野田政権時の臨時国会は、9月9日に野党自民党、公明党から開会の要求があり、即日日程の話し合いが行われ、9月中旬に首相の外遊が予定されていることから期日は4日間で短期のもの(最終的に延期されて18日間)とし、10月に改めて臨時国会を召集することとし、与野党合意を得ました。約束通り10月20日には再び臨時国会が開かれ、本格的な議論が行われることになりました。
臨時国会とは本来、こうあるべきものです。
 
 
3.臨時国会が開かれなかった例
四分の一の要求があったものの臨時国会が開かれなかった例は過去3回あります。
共に小泉政権の2003年、2005年は、11月に要求があったため、通常国会開会までの期日が短いため、1月の通常国会開会を以って国会を開会したという解釈です。
 
安倍政権時の2015年は、10月に要求があったものの、臨時国会が開かれることなく年明けとなりました。通常国会開会まで2か月以上もあったものの、開きませんでした。
四分の一の要求を無視して国会を開かなかった政権としては、現在までのところ、安倍政権が最初で最後です。
 
 
4.臨時国会での冒頭解散
安倍政権は、2017年にも四分の一の要求を無視して国会を開かなかったことがあります。
2017年6月30日に野党各党の連名で臨時国会召集の要求をしました。しかし、臨時国会が開かれないまま3か月が経過し、9月28日にようやく開会された直後、衆議院が解散されたため、何の審議のないまま臨時国会は閉会しました。
国会というのは当然として、開ければ良いというものではなく、審議をすることに意味があります。何の審議もない国会を開くことは無意味です。
 
なお、冒頭解散というのはこれ以外にも2例ありますが、佐藤内閣のときは通常国会、中曽根内閣や橋本内閣のときは内閣が自主的に決めた臨時国会の冒頭で解散されたため、四分の一の要求を無視したわけではありません。
 
やはり、この件でも、憲法違反の前例は安倍政権のみです。また、菅義偉政権でも行われる可能性があります。
 
 
5.非常時の国会日数
視点を変えて、非常所の国会について考えます。現在はコロナ禍という非常時であり、2011年の東日本大震災のときの国会と比較します。
 
2011年 菅(直人)、野田政権
通常国会 1月24日~8月31日 220日間(会期末に野田首相の首班指名)
臨時国会 9月13日~9月30日 18日間
臨時国会 10月20日~12月9日 51日間
合計289日間
 
2012年 野田、安倍政権
通常国会 1月24日~9月8日 229日間
臨時国会 10月29日~11月16日 19日間(衆議院解散による閉会)
特別国会 12月26日~12月28日 3日間(安倍総理の首班指名のみ)
合計251日間
 
2020年 安倍、菅(義偉)政権
通常国会 1月20日~6月17日 150日間
臨時国会 9月16日~9月18日 3日間(菅義偉総理の首班指名のみ)
臨時国会 10月26日~12月5日 41日間
合計194日間
 
2021年 菅(義偉)政権
通常国会 1月18日~6月16日 150日間
合計 150日間
 
このように比較すると、民主党の菅(直人)、野田政権は、ほぼ一年間国会が開かれており、様々な審議が行われております。
これに対し、自民党の安倍、菅(義偉)政権は、憲法で決められた最低日数である150日間の通常国会や、首班指名だけの臨時国会など、国会に数が極めて少なく、まるで危機感がありません。国会がこんな状態で緊急事態と言われても全く説得力がありません。
 
 
6、自民党が国会審議を避ける理由
自民党が国会審議を避ける理由は、政権維持のためです。
国会審議は、主に、野党の質問に対して政府が答えるという形で行われます。
疑惑の追及など、政府として答えたくない事柄を質問されることを避けるために、国会を開かないという強硬手段に出ています。
森友学園や、加計学園、桜を見る会問題などで国会審議によって拙い説明をしたことが影響し、内閣や自民党の支持率が大きく低下した前例があります。それを避けるための行為としか考えられません。
 
 
7.野党が国会で行っていること
野党は国会で政府の疑惑の追及だけを行っているのではなく、法案の審議や、政府の対応の審議、修正要求などを行っています。政府のコロナ対応の問題点などを指摘し、野党案を提示することも当然として行っています。国会が開かれなければ、政府が独断でコロナ対応をすることになるだけです。
 
 
安倍政権以降の自民党政権は、国会を無視し、憲法を無視してきました。
憲法も守れない政権には政権担当能力があるとは言えず、ただちに政権を返上すべきであると考えます。
 
菅総理だけでなく、自民、公明の与党議員にはそれだけの責任があり、次期選挙で鉄槌を下さなければなりません。