なりあやの韓国シネマ留学記

なりあやの韓国シネマ留学記

2017年、3度目の韓国留学。
ソウルの大学院で映画を勉強します!

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学期中は、やっぱり目の前の課題と発表で追われ続けて、気が付いたら夏休み。

あと来週もう1回、今村昌平の「うなぎ」で発表が残ってますが、ほかの授業が終わって、やっと一息。

記事書いたり、通訳したり、イベントやったり、ちょいちょい色々やって、相変わらず留学生活満喫してます。

 

今月から、朝日新聞「GLOBE+」で、「現地発 韓国エンタメ事情」という連載を始めました。

月2回程度で、映画、ドラマ、K-POPなどの話題をお届けします。

 

とりあえず1回目は、久々にはまって見ていたドラマ「よくおごってくれる綺麗なお姉さん(밥 잘 사주는 예쁜 누나)」から。ミートゥーに絡めて。

 

https://globe.asahi.com/article/11573232

 

2回目は、イ・チャンドン監督の映画「バーニング」。青年の失業問題に絡めて。

 

https://globe.asahi.com/article/11625829

 

ただただエンタメ事情を書くのは、あんまり現地発の意味がないので、リアル韓国社会に絡めるというコンセプトになってます。

 

同時に、週1回程度で、東亜日報の翻訳も始まりました。同じくGLOBE+で。

 

ミュージカル「フランケンシュタイン」

https://globe.asahi.com/article/11575147

 

東京特派員のコラム

https://globe.asahi.com/article/11594005

 

Kビューティー

https://globe.asahi.com/article/11541255

 

といった感じです。

お読みいただければ、うれしいです照れ

昨日のブログに、『鬼郷(귀향)』と『雪道(눈길)』の比較を読みたいという反響をいただきまして、ありがとうございます。

リクエストにお応えして、「韓国映画史」の授業から、学生の発表及び教授の解説の一部、ご紹介します。

 

まず、この2本は慰安婦がテーマの映画。

 

『鬼郷』は、2016年2月の公開。2015年12月の慰安婦問題日韓合意の後ですね。

 

 

合意に対する反発が韓国内で広がっていた時期で、異例のヒットとなります。

 

一方の『雪道』は、その約1年後、2017年3月の公開。

 

 

この時期は、朴槿恵前大統領の弾劾で韓国中が盛り上がり、そもそも劇場に足の向かなかった時期。

もともとテレビドラマだったのが映画化された作品で、それもあってか興行的には厳しい成績となりました。

 

が、わたしを含め、作品についての評価は「雪道」の方が高め。

 

二つの作品は共通点も多くて、二人の少女が主人公。

そして、現代と行き来しますが、現代も10代の女の子が登場します。

 

違うのは、『鬼郷』は男性監督、『雪道』は女性監督。

やっぱりそれぞれ、男性の視線、女性の視線が感じられます。

 

『鬼郷』の方が圧倒的に男性の役割が多い。

故郷のシーンでも、『雪道』に比べて父親の存在感が大きい。

これは、教授の解説ですが、現代の韓国人男性の発想として、慰安婦の問題というのは、当時の男性たちが女性を守りきれなかったという捉え方がある。

守りきれなかったものの中心は、やはり「性」にある。

だから、性的な苦痛を表現するシーンが多い。

露骨な描写を批判する声もあります。

 

女性監督の発想は、ちょっと違う。

必ずしも「性」ではない。人格を尊重してもらえなかったということ。

日常を破壊されたことに対する苦痛。

だから、慰安所で主人公2人が隠し持ってきた本を読むシーンがあるんですね。

本が読めるかどうか、というのも、人間らしく生きるうえで大事なこと。

 

チョン・スワン教授(この授業の担当)は、

historyは his story 男の歴史 公式記録

her story 女の歴史 記録に残りにくい個人の歴史

と言います。

歴史を記録として残してきたのは、男性が多いから。

 

これは『鬼郷』と『雪道』のオープニングから、その違いが如実に出ます。

 

『鬼郷』は、テレビのニュースから。

元慰安婦のハルモニ(おばあさん)が名乗り出たというニュースです。

これは公式の記録。

 

『雪道』は、元慰安婦の夢から。

個人的なものです。

 

元慰安婦の方々は、長い間、黙ってきた。

黙ったまま亡くなった方もいるだろうし、今も黙っている方もいるかもしれない。

これは公式の記録には残らないher story です。

だからと言って、なかったわけではない。

 

例えば、写真というのは公式の記録ですが、

『雪道』では、慰安婦たちが、看護師たちの写真として記録されたことを表現しています。

公式の記録は、必ずしも正しいとは限らない。

記録する人の意図がある。

 

もっと色んな話が出たんですが、ポイントをしぼると、こんなところかな。

 

最後に、『雪道』というタイトル。

雪は春が来ればとける。

つらい、悲しい her story ではあるけど、希望もある。

日本でも上映会が開かれる可能性があると聞きました。

機会があれば、ぜひご覧になってください。

 

 

 

 

 

韓国シネマ留学2年目突入しました。

って、もう新学期始まって3週間ですがニヤリ

 

超デジタル社会の韓国についていけず、悪戦苦闘続けてますが、慣れてきたと言えば慣れてきた。

 

今学期は授業三つ。それぞれ3時間ずつ。そして引き続き日本学研究所の方も出てます。

 

授業名を言うと、

●映画ジャンル研究

●アジア古典映画分析

●韓国映画史

 

映画ジャンル研究は、そのまんまですが、ジャンルとはなんぞやとか、各ジャンルについての国内外の論文を読みまくる&それについての発表、最後は映画ジャンルに関する期末レポート提出という授業。わりとスタンダードなスタイル。

 

アジア古典映画分析は、これはとっても偏っていて、というのも博士課程の授業なので。今村昌平の全作品を見てそれについて発表する授業。5人という少人数なので、発表がんがん当たります。とりあえず再来週「にあんちゃん」当たってます。

 

韓国映画史は、これもちょっと偏っていて、ほぼ2000年代の韓国映画。毎回2作品をそれぞれ発表して比較する。授業で扱うぐらいの作品なので、1回は見たことある作品ばっかりですが、改めて見ると、そして発表及び教授の解説を聞くと、新たな発見がいっぱい。

 

例えば1回目は『鬼郷(귀향)』『雪道(눈길)』。慰安婦ものですね。男性監督と女性監督の違いが如実に出てる。

 

そして今日が2回目。『インサイダーズ 内部者たち(내부자들)』『生き残るための3つの取引(부당거래)』

 

ちょろっと授業の内容を紹介。『インサイダーズ』を中心に。

 

 

この2本は、2010年代の韓国映画の主流となってるジャンル。범죄드라마(犯罪ドラマ)とも느와르(ノワール)とも。ジャンル名は韓国と日本でちょっと違うので、()内はほぼ直訳。そもそもジャンルなんて明確に定義できるものでもなく、分析には便利なので使うという面も。

 

この手の映画では、『インサイダーズ』が一番好きなぐらい好きだったんですけどね。改めて見たら、問題もいっぱい見えてきました。

 

なんでこのジャンルが流行るのか。「韓国人は刺激的なのが好きだから」という学生の分析。そうなんですよね。食べ物のせい?

 

暴力も性的な描写も、行き過ぎと思うけど、これでもかとエスカレートしてます。

 

『インサイダーズ』に限らずですが、特に『インサイダーズ』は主要登場人物に女性が出てこない。出てくるのは性接待の女性たち。かろうじてアン・サング(イ・ビョンホン)の彼女的な存在が出てきますが、これも復讐劇の駒として使われる。

 

と、まあ、この辺りまでは常々思ってることですが、さすが、教授の分析は鋭かった。

 

誰が一番욕(スラング)をしゃべってるか。

答え。検事のウ・ジャンフン(チョ・スンウ)。

 

わたしがこの映画が好きだったのは、ウ・ジャンフンが正義の味方とかでなく、出世欲の塊というところだったんですね。

 

韓国は世界的に見ても、スラングの発達した国。

なぜスラングが発達するのか。

ストレス解消のため。

それだけ抑圧されている。

抑圧されているというのは、不当な待遇を受けているということで、それは言い換えると欲があるから。

というのが教授の分析。

 

ウ・ジャンフンというキャラクターは、警察出身の検事で、実力ではなかなか出世できない。

出世欲は誰よりも強いのに。だから不当に感じる=ストレスがたまる=口を開けばスラング。

ある意味韓国社会を圧縮したようなキャラクター。

韓国の人がみんなそうと言ってるわけでは決してないです!

 

でもこの映画が全然架空の話に思えないのは、説得力のある部分がかなりあるから。

 

3時間の授業なので、この10倍ぐらいメモがありますが、この辺にしときます~

 

特にウ・ジャンフンが一番スラングが多いという話が印象に残ったのは、気づかなかったというのと、

わたし自身が最近ストレスを抱えているのは、そうか、欲深いからかと思ったから。

あれもこれも、色々あきらめられずに、自分があと3人ぐらいいたら全部できるのになとか思ってる。

せっかく仕事辞めたのにな。

1年前の初心に戻って、色々手放そうかと思います照れ