yahooニュース リンク より、以下転載
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日本の農業が危ない。種を保存する「シードバンク」に取り組む人たち

 これまで日本の多様な品種を守ってきた「種子法」が今年4月に廃止され、日本の農業は大きな転換点にさしかかっている。そんななか、「多様な品種・種子を守る」ためのさまざまな動きが全国各地で起きている。農産物の種子を保存する「シードバンク」もその一つだ。

◆大規模農業が始まり、収量は増えたがマイナス面も増えた

 とんがり屋根の小さな小屋の扉を開くと、壁際の棚にさまざまな形の種が入った瓶が並んでいた。

 北アルプスを望む長野県池田町の郊外でゲストハウスを営む臼井健二さん、朋子さんが2012年に始めたシードバンク「種センター」。ここでは、菜園やゲストハウスのある敷地の片隅に、現在200種類を超える農作物の種が保存されている。

 臼井さんがシードバンクを知ったのは、生活技術の普及のため訪れたバングラデシュでのことだった。

「向こうでは有機農業の復活が盛んで、バングラデシュ国内だけでシードバンクが50か所、米の品種は3000種も保存されていました。種を集めて預かり、それを倍にして返していました。そうしてできた農産物のほうが、土地に合っていておいしかったんです」(健二さん)

 バングラデシュでは1960年代に農薬・化学肥料を用いた“緑の革命”と呼ばれる大規模農業が始まり、作物の収量は2倍になったという。

「でも機械化で仕事がなくなったり、環境悪化で魚もいなくなったり。農薬の影響か皮膚病が発生したりと、マイナス面もたくさんありました。農産物の種も自家採種していたものが、だんだんと毎年買わなければならなくなってしまった」(同)

◆種子の「著作権」を主張する企業も、自然界の法則まで開発したわけではない

 そんなバングラデシュでの体験をもとに始めたのが「種センター」だ。臼井さんたちは、帰国してから種の交換会を始めた。種を倍にして返す仕組みも取り入れ、余剰分は建物に保管した。地元の人が採った種を送ってきてくれたこともあったという。

「種は一人でずっと抱えていると劣化します。みんなで分かち合うと、後で何千倍にもなって帰ってくるんです。年に5回ほど開く『種カフェ』での種の交換会では、東京からも人がやってきます。種を通じて、人的ネットワークも広がりました。ここの種のいいところは、撒けば増えるところ。何よりも、毎年買わなくてもいいのがいい」

 一方、日本の現状を見れば、種屋やホームセンターで売っている野菜の種は、9割が外国で生産したものだ。それも「一代交配種」=F1種が多く、その種を翌年撒いても実がならない。農水省は「知的財産権の保護」の観点から、今後新たに企業が開発した種の自家採種を禁止していく方針だ。違反すれば重い罰則が科せられる。

「自然界は、種が落ちれば芽が出て実がなるもの。新しく開発した品種の保護はあってもいいと思いますが、企業はその自然界の法則まで開発したわけではありません。本来、農産物の著作権は自然界にあるのですから」と臼井さんは首を傾げる。自然の営みと、農業の歴史を忘れた現代農業生産への率直な疑問だった。