『東北の地質的景観』 第7回 仏ヶ浦 | 奈良の鹿たち

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『東北の地質的景観』 

第7回

「仏ヶ浦」

 

 

 

仏ヶ浦は,福浦崎から牛滝集落まで続く2kmほど続く白っぽい侵食された岩石の断崖(海食崖・波食崖)です。

白亜紀(約1億4500万年〜6600万年前)中期に,流紋岩質(中~酸性マグマ)の火山の活動が活発になり,地殻変動が各所で断続的に見られるようになりました。

東北の日本海側は、新生代(約6600万年前)以前の古い地層や花崗岩類を基盤としており、その上に新生代の地層があります。さらにその上に第四紀(約260万年前~現在)に噴火した火山岩や火山砕屑岩が覆っています。

(↑日本列島 大陸から分離)

アジア大陸の東の縁にあった日本列島の基となる部分が大陸から離れ始めたのは、中新世初期(2300万年前)です。九州地方を固定点とし時計の針のように回転し大陸から離れていきました。大陸が裂けて海水が流れ込み、日本海が誕生しました。焼山崎(やけやまざき)エリアで見られる断崖は、この時代の海底火山の溶岩と噴出物で出来ています。焼山崎の岩質である玄武岩は鉄分を多く含むため、風化を受けると赤褐色に変化します。

(↑焼山崎)

大陸から日本列島が裂ける動きは約1500万年前まで続き、その後は比較的穏やかな時代となりました。そして、近年の研究により、仏ヶ浦の岩石は、約400万年~350万年前、日本海で大規模かつ長期間に渡る海底火山活動が起こり、この時の火山活動により降り積もった火山灰が堆積して固まり、厚い凝灰岩の層を形成したことがわかりました。

仏ヶ浦周辺の地層は、中新世(約2303万年~725万年前)古期から中期の層で、その上に中期(約1500万年前)から新期(約500万年前)にかけて海底火山を主とする大規模な地殻変動で噴出したマグマに由来する噴出物(火山れき,火山灰など)が堆積し押し固まった火山砕屑岩が分布しています。

この火山砕屑岩は、海底噴火により堆積した火山岩類が緑色となったもでグリーンタフ(Green tuff、緑色凝灰岩)とよばれます。グリーンタフは日本列島の日本海沿岸を中心に広いエリアに分布しています。

(↑グリーンタフ地域)

グリーンタフは空気中にあるときは白く見えるますが、水の中にあると青緑色に見えるため、仏ヶ浦では白い色の岩肌と海中の青緑色が織りなす光景が色鮮やかに見えます。

(↑白い岩肌と海中の青緑色)

下北半島の中新世の火山活動は、大量のグリーンタフを生み出したのでグリーンタフ変動と呼ばれています。グリーンタフの火山活動の多くは、陸上だけでなく海中でも起こり、海底噴火による火山岩やその水中の火山砕屑岩が堆積していきました。海底に堆積した地層が隆起し、雨水や波浪、凍結による侵食を受けて現在見られるような形となりました。火山灰が固まった凝灰岩は、波や流水の侵食や風化に弱く、構成する岩石(鉱物)や固結度の違いによって,様々な造形物が出来上がり仏ヶ浦の複雑怪奇な様相の海岸線をつくっています。加えて、冬の寒さで岩に染み込んだ水が凍り、亀裂を広げることで、岩石の表面は剥がれやすくなり奇岩・巨岩が形成されました。

今後、風雨や潮流による侵食がさらに進行していくことが想定されます。

雲の形のように侵食されたタフォニ(Tafoni、岩盤や岩塊の表面に形成される風化穴)とよばれるものや、流水によると思われる縦に筋がたくさん入った侵食地形、海の波の浸食による海食崖など、さまざまな侵食地形を見ることができます。

 

 

 

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次回は、第8回(最終回)「蔵王」

 

 

(担当 G)

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