『東北の地質的景観』 第4回 恐山 | 奈良の鹿たち

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『東北の地質的景観』 

第4回

「恐山(おそれざん)」

地質的概説

恐山とは、下北半島(青森県)の中央部に位置し、東西17km、南北25kmの範囲に、

小型火山や溶岩ドームからなる外輪山に囲まれ、その中の直径約3kmのカルデラから成り立っています。これら火山全体を恐山と呼んでいて、「恐山」という単独峰はありません。

最高峰は標高878mの釜臥山。外輪山は、蓮華八葉と呼ばれている剣山、地蔵山、鶏頭山、円山、大尽山、小尽山、北国山、屏風山の八峰からなります。外輪山の東の外側斜面には釜臥(かまふせ)山(879m)が、西側斜面には朝比奈岳(874m)がありますが、いずれも寄生火山で、恐山の一部です。

宇曽利(山)湖(うそりこ)は、直径約2kmの噴火後できたカルデラ湖です。宇曽利湖の水は、強い酸性なので、特殊な動植物プランクトンや、酸性水に強いウグイが生息しているだけです。宇曽利山湖の北東には正津川があり、湖の水が津軽海峡まで流れていきます。火山湖の水が流出して谷ができ(火口瀬)、水面が12mほど下がりました。そのため湖の周辺には、湖岸段丘が見られます。

(↑宇曽利湖)

 

火山としての恐山

恐山の活動は、約146万年前~約68万年前の外輪山を形成した活動と、約48万年前以降のカルデラ付近を中心として火砕流及び降下火砕物を噴出した活動に大別されます。 カルデラ内北部には、約8万年前までに形成された火砕丘、溶岩ドーム群(剣山等)が分布します。活動時期の違う火山群が、カルデラの外と中にあるため二重式火山と呼ばれています。

最近1万年間の活動を示す堆積物は見つかっていません。 最後の噴火は1万年以上前と見られています。ただし、カルデラ内の一部には水蒸気や火山性ガスの噴出が盛んで、ごく小規模な水蒸気噴火を起こしていた可能性はあります。堆積物から確認できる最新の噴火は約2万年前に起こった水蒸気噴火(鬼石テフラ)です。
天明九年(1789年)正月に刊行された『東北旅行談』巻之五には、「一陽の火おこり猛々焔々と燃え上がり」との記事があり、間欠的な噴気を示している可能性が高い。

 

宇曽利湖の湖畔には噴気孔や温泉が多く、日本三大霊場の一つである恐山菩提寺があります。

宇曽利山湖の周辺には、噴気が立ち上っているところや、熱水が沸いているところなどがいくつもあります。これらは、カルデラ形成の後にできたいくつかの火山円頂丘が、その熱源となっています。火山円頂丘をつくったマグマが今も活動して、熱水や蒸気を噴出しているのです。噴気を盛んに上げているために、活火山になっていますが、噴火の危険性は少ないと考えられています。

 

火山性ガス

恐山の地獄付近には火山性ガスが充満しており、硫黄臭を放出しています。むつ市の市街地でも、北西風のときは恐山の火山ガスによる硫黄臭が充満する場合があります。恐山を参拝した際、頭痛や倦怠感を発症する人がいますが、これは心霊現象ではなく有毒ガスによる軽い中毒症状です。

宇曽利山湖周辺は、現在も活動する活火山で、地面からガスや水蒸気、温泉がわき出て、湯気が立つようすを見ることができます。宇曽利湖はカルデラに雨水がたまってできた「カルデラ湖」です。酸性の強い水が流れ込み、しかも湖底から噴出する硫黄ガス(亜硫酸ガス)が溶け込んだ宇曽利湖の水はpH3.4前後と強い酸性湖となっているためです。

 

金鉱床

恐山は、噴出する熱水が、現在も金鉱石を形成しているのです。金鉱床は、爆裂火口の中にできた浅い熱水湖の底に沈殿物の中に見つかっています。金を含む沈殿物の地層が、ヘドロ状に形成されています。

2007年、「恐山の金鉱床」として日本の地質百選に選定されました。地質調査によると、世界的にも良質の金鉱脈です。しかし、恐山一帯が国定公園に指定され新規鉱山開発は出来なくなり、埋蔵量もそれほど多くなく、そもそも土壌には高濃度の砒素と硫化水素も含まれていて、地面を掘れば生命に危険が及ぶため本格的な金の採掘はされていません。

 

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次回は、第5回「松島」

 

 

(担当 G)

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