『進化論』 第6回 遺伝子DNA | 奈良の鹿たち

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『進化論』

第6回

遺伝子DNA

 

DNA

 

●  遺伝子

「遺伝子」という概念は、近年になって考えられました。

かつて、遺伝情報は”液体”のようなものが混ざり合って受け継がれると考えられれていました(「遺伝の混合観」)。

1866年 メンデルは論文の中で、「遺伝が起こるのは生物の体の中に遺伝の情報を伝える何らかの“粒子”が存在するからである」という考えを述べています。いわゆる「粒子的遺伝子説」と呼ばれる考え方で、遺伝の情報が特定の物質によるものであることを予測したものでした。

1900年 ド・フリースによってメンデルの説が再発見されてから、粒子的遺伝子説が生物学の中で急速に普及していきました。

1909年 ヨハンセンがこの仮想の粒子を“遺伝子“と命名しました。

20世紀後半になって、その正体が明らかになりました。それが“デオキシリボ核酸:DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)です。これが、遺伝情報を担うものの正体であり、進化とはDNAの変化の歴史であるというわけです。

細胞の中に核と呼ばれる領域があり、ここが遺伝情報を収容した場所です。の内部には細胞が分裂する時に、特別な染色を行う糸状の物質があります。これを「染色体」と呼びます。染色体は非常に細長い分子の列が極めて巧妙に折りたたまれたもので、その分子の列が「遺伝情報を記した生命の設計図」である「DNA」です。そして、DNAの中にある情報のひとまとまりを「遺伝子」と呼びます。つまり、細胞の中の核の中にある染色体が、DNAでできている遺伝情報の担い手であり、そこに遺伝情報がたくさんの遺伝子という単位で書き込まれているのです。

簡単に言えば、大きい順から細胞⇒核⇒染色体⇒DNA⇒遺伝子となります。

 

●  DNAとは

DNAは、一種の巨大な高分子化合物で、ヒトの場合その太さは50万分の1ミリメートル(2ミリミクロン)ほどで、長さは全部繋げるとおよそ2メートルにもなります。通常はDNAの糸が2本ずつらせん状に組みあわさっており、糸の本体は糖とリン酸とが交互に並んだものです。このらせん状のつながりを「DNA鎖」と呼びます。糖の部分からは4種類の塩基(A:アデニン、T:チミン、G:グァニン、C:シトシン)が横に突き出しています。

アデニン(A)=チミン(T)、グァニン(G)=シトシン(C)という対になって、糸と糸をはしご状につないでいます。

ヒトのDNAではこの組み合わせ(塩基対)の数は、およそ30億にも達します。この30億におよぶATGCの配列こそがDNA のもつ情報であり、生物の設計図となる遺伝暗号です。つまりヒトの設計図は、30億個の文字によって記述されていると言えます。

このDNA鎖は、細胞の核の中で必要に応じて解きほぐされ解読されます。からだの構成物質や、生命活動に必要なさまざまなアクションの指令をつかさどる物質を、ここに書かれた情報によって製造するためです。そして、時によってはその情報のわずかな変化が、長い歴史を経ることによって進化としてとらえられることになります。

 

化学物質であるDNAの二重らせん構造(double helix)が判明して、それが生物の本質情報を担うことが分かった時、われわれ人類もその本質は、化学物質に過ぎないことが分かりました。

生物と化学物質という無生物との間に、はっきりとした線が引けなくなりました。

いま、研究者の最大の関心は、化学物質から生命が生まれるプロセスの分析です。つまり現在の進化研究は、生命の誕生を生物学的進化の前段階である科学的な進化のレベルに求めるようになってきたわけです。

 

 

 

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次回は 第7回「生命の起源」

 

 

 (担当B) 

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