『中国経済 2023』
第8回
「資源」
中国は、多種多様な鉱物資源が豊富な国です。
現在でも、強力な政府の後押しと採掘技術を駆使して鉱石の種類や量の増産が続いている。
その結果、2018年の非鉄金属の総生産量は前年比6.0%増でした。
また輸出入も活発で、2018年は前年比で輸入は18.3%増、輸出は21.1%増である。
特に原油は輸入量では世界一です。
● レアメタル
「産業のビタミン」といわれるハイテクに欠かせないレアメタルは、生産量は中国が世界の6割を占めていて、中国の外交政策の脅しとなっている。
中国への依存度が米国で80%、欧州で98%にもなっている。
サプライチェーン全体を見ても、再生可能エネルギーおよび電気自動車といったいわゆる「クリーンテクノロジー」への移行は、その地政学を大きく変える。特に選鉱工程で中国が圧倒的な存在感を示す。選鉱工程とは、採掘した鉱物を、破砕ないし溶解し、化学処理を施して、求める金属を抽出する工程である。エネルギーコストが大きく、環境負荷が高い。環境規制が厳しくコストが高い先進国は中国に対して圧倒的な不利にある。
● 石炭
<中国 石炭生産量推移>
中国は国内に多くの炭鉱を持ち、石炭を自給できるが、実は石炭の純輸入国でもある。中国は国内消費量の10%弱を輸入に頼ってきた。これは、中国国内で採れる石炭に比べて、インドネシアや豪州の方が質も高く安価であり、電力コストを抑えることができるためだ。
こうした中、政府は電力・石炭不足の解消策を矢継ぎ早に打ち出した。まずは、国家石炭備蓄の放出である。石炭生産の抑制も緩和された。政府は53カ所の炭鉱の生産を再開させた.。合計生産能力は昨年の全国石炭生産量の3%となる。2021年9月と10月には追加で153カ所の炭鉱に生産を許可した。
加えて、融資拡大などを通じて電力企業や石炭企業を支援している。金融当局は、電力企業や石炭企業に向けの融資拡大を金融機関に要請している。石炭輸入価格は、政策支援によって石炭輸入量は大幅増加した。これら措置を受けて、石炭在庫に持ち直しの動きがみられる。
現時点における石炭在庫の少なさや冬場の電力・石炭需要の拡大などの懸念材料は残るものの、以上のような政府支援によって、電力・石炭不足は2022年には解消に向かうとみられる。
● 鉄鉱石
<中国 鉄鉱生産量推移>
中国は世界最大の鉄鋼生産国で、2021年の粗鋼生産量は10億3,280万トン。世界の54%を占めた。
ただ、製鉄の主原料に使う鉄鉱石の国内生産は2014年の15億1,400万トンをピークに減少に転じ、2018
年には7億6,000万トンと半減した。中国は年10億トン以上の鉄鉱石を消費、その80%超をオーストラリアやブラジルからの輸入に頼っている。中国は鉄鉱石の確保と価格決定力の強化に向け、国内外の鉄鉱石鉱山への投資を企業に要請している。
中国の鉄鉱石は含有率・品質ともに輸入したものよりも低く、規模・経営の問題もあり生産が伸びていない。中国自然資源省は2021年8月、鉄鉱石資源を国家戦略上の重要資源に位置付け、資源の探査・採掘を強化して国内の生産量を増やす方針を示している。
● 石油
中国は米国に次ぐ世界2位の石油消費国で世界の消費の1割強を占め、消費の7割を輸入している。2017年に米国を上回る世界1位の石油輸入国となった。2019年時点で世界の原油貿易の23%を中国が占めている。
IEAは21年3月、中国が2019年から2026年までの世界の石油需要増加の55%、日量240万バレル増加するとしている。
一方、中国の石油需要はEV促進策、燃費規制、天然ガス自動車や高速鉄道の普及などの代替により伸びが2010年代に比べ鈍化しており、ガソリン、軽油を中心とする輸送燃料は2025年頃にピークアウトするという見方が多い。しかし自動車のストック(2020年の保有台数2億8,100万台)や石化需要により需要の急速な減少は考えにくい。
また国内生産供給が頭打ちであることから、需給ギャップは当面高止まりする見通しである。
<中国 石油生産量推移>
<中国の石油需要と需要の年平均成長率推移>
中国の原油輸入先の首位はロシアとサウジアラビアだが今後イランからの原油輸入が増えるかもしれない。中国は2021年に入りイランからの原油輸入を増やしている。
IEAによると2020年末現在中国の石油貯蔵能力は17億バレルある。IEAは同時期の世界の貯蔵能力増強の90%を中国が占めたと指摘している。中国各地の油田は小規模で埋蔵量も少ないため原油生産量は伸びていない。そのため国内の拡大する需要を満たしきれていない。そこで当然、輸入依存率が高くなってきます。
<米中日印の原油輸入推移>(日量千バレル)
(BP統計)
中国の2020年の原油生産量は前年比1.6%増の日量390万バレルであった。原油は低油価に伴う投資縮小とコストの高い成熟油田の生産を抑制したことで、2015年から2018年にかけて生産が減少していた。しかし、米中貿易摩擦や産油国の供給不安定化を受けて同国のエネルギーセキュリティ意識が高まり、政府が国有石油企業に国内供給強化を働きかけ、企業が投資を増加させたことで2019年以降増加に転じている。ただし損益分岐点がバレルあたり60ドルを超える成熟油田を抱える同国の原油生産が今後大幅に上向くことは考えにくい。
「日本経済指標と米国経済指標」 http://www1.odn.ne.jp/keizai/
「中国経済指標」 http://www1.odn.ne.jp/china/
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次回は 第9回 「財政・物価・金融」
(担当E)
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