『九州の地質的景観』第10回 阿蘇山① | 奈良の鹿たち

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『九州の地質的景観』 

第10回

<阿蘇山①>

 

概要

阿蘇山は、日本の九州中央部、熊本県阿蘇地方に位置する火山です。カルデラを伴う大型の二重式の火山であり活火山です。「阿蘇山」という単体の山はなく、「阿蘇五岳(あそごがく)」を中心にした東西にのびる連山を呼ぶことが多いですが、広い意味では外輪山や火口原をも含めた呼び名です。

カルデラが形成された後、その中に生まれた新しい火山のことを「中央火口丘」と呼びます。一般に「阿蘇五岳(あそごがく)」と呼ばれる根子岳(ねこだけ)、高岳(たかだけ)、中岳(なかだけ)、杵島岳(きしまだけ)、烏帽子岳(えぼしだけ)のうち、根子岳以外は中央火口丘に当り、それらも含めて現在17の山体が数えられます。

阿蘇五岳の中央に位置する噴火口のある山が中岳、最高峰が高岳、ギザギザの山が根子岳です。

カルデラの外側には、なだらかな火砕流台地によって外輪山が形成されており、学術的にはこの外輪山まで含めて「阿蘇火山」と呼んでいます。

 

●阿蘇山

最高峰の高岳(1,592.3m)を始めとする中岳(1,506m)、根子岳(1,433m)、烏帽子岳(1,337m)、杵島岳(1,270m)の阿蘇五岳の他、往生岳(1,235m)などを含む山々が連なる。(Wikipediaより)

 

・中岳(なかだけ)(1,506m)

一般に阿蘇山といえば中岳の中央火口丘を指しています。溶岩の岩肌がむき出しになり、火口壁は度重なる噴火によるしま模様がきれいです。中岳火山は複雑な構成をもつ成層火山です。活動を続けている現在の火口を囲むように七つの火口跡があり、古くから激しい活動を続けてきたことが想像できます。火口は南北に人の耳に似た形で並んでおり、東西400m、南北1,100mにわたり広がっています。これは「中央火口丘群」とよばれています。火口の底には、火山ガスが溶け込んだ強酸性の湯がたまっています。

有史時代の噴火は、現在も活動している中岳の火口から発生しています。中岳火口は静穏時には湯溜りになっていますが、活動が活発化するとそれは干上がり、火口底から火山灰の放出が見られます。しばしば赤熱したマグマが吹き上げられるストロンボリ式噴火も発生します。また地下水とマグマとの接触により、激しいマグマ水蒸気爆発も繰り返し発生しています。

 

・高岳(たかだけ)(1,592m)

高岳は阿蘇の最高峰で、全体が丸みをおびた円錐形の成層火山。頂上部には東西約700mの火口があり、南西側は中岳と峰続きで他の方向はすそ野が長く、東側は根子岳に連なり、鞍部は「日の尾峠」と呼ばれています。北側は小堀牧・二塚牧・泉牧など広々とした美しい牧草地になっています。山頂部は東西400m、南北100m、高さ10~30mの壁で囲まれた楕円形の旧噴火口があります。

山頂北部斜面は鷲が峰、虎が峰の険しい岩場になっており、西部から仙酔峡にかけての斜面は層を成した線状の溶岩流跡が見られます。

 

・根子岳(ねこだけ)(1,433m)

山頂部がノコギリの刃のように鋭く尖り、その独特の山容が目を引きます。阿蘇五岳の中で一番東に位置しています。古くは大火口があったとされており、4回目の巨大カルデラ噴火(9~8万年前)よりも古く、はるか15万年前頃に形成された成層火山です。Aso-3火砕流よりも下位にあり、後カルデラ火山よりも前につくられたもので、他の4つの山とは成り立ちが異なっています。深い放射谷に開析され、中心から対称的に外に傾く溶岩・火砕岩の成層構造が南北側からはよく見えます。 東西両側は火山斜面が保存されています。山頂部から深い谷が放射状に刻まれていて、複雑な地形を成しており、頂上部の稜線は硬い溶岩層の突出によって鋸歯状をなしています。その中央の岩峰、天狗岩は中央火道部の岩脈で、周囲には数本の放射状岩脈があって、いずれも板状の岩峰として周囲から突出しています。

 

・烏帽子岳(えぼしだけ)(1,337m)

山頂部は狭くとがっていて全体が草に覆われ、西に緩やかなすそ野を引いています。北斜面に草千里の側火山があります。烏帽子岳火山は草千里ヶ浜南方の、やや開析された安山岩の成層火山です。頂上部は草千里ヶ浜火山噴出物に覆われているので、烏帽子岳山体にみられる成層構造の上部は草千星ヶ浜火山、下部が烏帽子岳火山の噴出物です。烏帽子岳山体を作る火山の中心部は粗粒の火砕岩と溶岩流からなり、溶岩流は西に流下して地獄・垂玉温泉付近では数枚の溶岩流があり、その先端は国鉄高森線の線路傍にまで達しています。

 

・杵島岳(きしまだけ)(1,321m)

五岳の中で一番西側に位置する形の整った成層火山。頂上に直径200m深さ50mの旧火口があり、西に爆裂火口、東斜面には「古の御池(ふるのみけ)」という最長直径50mにも及ぶ楕円形の旧噴火口があります。火口底は深さ50mで火山灰の平地になっています。

杵島岳と北側の寄生火山の往生岳も山体に放射状の谷があります。往生岳山頂にも旧噴火口が東西に3個並んでいて、西と中央の火口はほぼ円形、東の火口は不規則な楕円形です。

 

・米塚(こめづか)(80m)

約3000年前にできた阿蘇地域では比較的新しいスコリア丘で、お椀を伏せたような美しい火山で有名です。米塚から流れ出した溶岩は付近を覆っており、広々とした草原となっています。米塚溶岩の内部には溶岩トンネルもあります。

 

・草千里ヶ浜(くさせんりがはま)

この牧歌的な草千里は、実は中央火口丘群の一員で、直径1kmの火口跡が草原になったもの。

草千里ヶ浜火山は、直径500mと1kmの二重の火口をもつ大きい軽石丘です。

 

●阿蘇カルデラ

阿蘇カルデラは、ほぼ900mの高さで火口原を囲む外輪山で出来ています。南北25km、東西18km、周囲約128㎞に及び、面積380km2の大きい凹地(カルデラ)とその中にある中央火口丘群からなっています。その大きさは日本では2番目で、1位は北海道の屈斜路カルデラ、3位は鹿児島県の姶良カルデラです。

 

約30万年にわたる複雑な活動・成長の歴史を経て今日に至ったものです。

その間に大規模な噴火が4回ありました。約27万年前、約14万年前、約12万年前、約9万年前の4回。毎回数百km3のマグマが噴出しました。

9万年前には、阿蘇が現在ある場所には数多くの火山があり、盛んに活動をしていました。これらの火山が一斉に噴火活動をし、火山灰や溶岩などを噴出していました。この活動が終ると大陥没が起こって、今の外輪山の原形が生まれました。この大規模な火砕流噴火に伴って形成されたカルデラの周囲には、広大な火砕流台地が発達しています。5万年から3万年前に、東西方向に並んで阿蘇五岳の山々が噴出したと考えられています。その噴火の火山灰は日本列島のほぼ全域を覆い、北海道東部でも数㎝の厚さで堆積しています。カルデラ形成後、その中央部に安山岩や玄武岩からなる成層火山群が成長しました。

カルデラ盆地は中央火口丘によって南北に二分され、北の広く平坦な谷を「阿蘇谷」、南は「南郷谷」と呼ばれています。南郷谷を西に流れる白川は、カルデラの西縁で阿蘇谷の水を集めた黒川を合わせ、立野を通って西方熊本平野へ流下しています。逆に、熊本から阿蘇へ向かう国鉄や国道などの交通路も、この峡谷沿いにカルデラ内に入ります。

阿蘇谷の北側、カルデラの北壁は高度差300m程度でその上面は平坦です。一方、南郷谷の南側、カルデラ南壁は高度差300~700m、深い谷と尾根が交互し、北壁とは対照的な彫りの深い地形を作っています。カルデラの外側の地形は、東と北側は火砕流によって作られたきわめて緩傾斜(1~2度)の台地がひろがっています。また、南と西側は古い火山の山腹で10度前後の斜面からなり、その外側に阿蘇火砕流の台地が接しています。

カルデラを取り囲む外輪山も阿蘇火山に含まれ、東西約18km・南北約25kmに及びます。

カルデラを見下ろす阿蘇北外輪山の最高峰「大観峰」などは、カルデラ噴火前の火山活動による溶岩とカルデラ噴火による火砕流堆積物(溶結凝灰岩)で構成された山です。

 

 

 

 

 

 

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次回は 第11回(最終回)「阿蘇山②」

 

 

(担当 G)

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