『九州の地質的景観』第7回 桜島① | 奈良の鹿たち

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『九州の地質的景観』 

第7回

<桜島①>

 

 

 
 

概要

桜島は、九州の南・鹿児島県の薩摩半島、大隅半島に挟まれた鹿児島湾(錦江湾)の南縁付近に位置しています。もともとは海に囲まれた島でしたが、1914年(大正3年)に発生した大正大噴火により、対岸の大隅半島と陸続きになりました。大きさは高さ1,117m、東西約12km、南北約9km、周囲約52km、面積77km²の楕円形をしています。

 

桜島火山(御岳)

桜島は、北岳・南岳の2つの成層火山が重なった複合活火山です。

北岳の方が古く、約26,000年前の桜島誕生から約5,000年まで活動。 その後、火口の位置が南にずれ、約4,500年前から南岳の活動がはじまり現在まで続いています。

桜島は南北に並ぶ北岳、中岳、南岳から成り、山腹に多くの側火山を配しています。これらを総称して御岳(おんたけ)と呼ばれています。

有史以降の山頂噴火は南岳に限られますが、山腹や付近の海底からも噴火しています。 「天平宝字」「文明」「安永」大正の噴火はすべて山腹噴火で始まり、火砕流の発生、多量の溶岩の流出と推移しました。昭和噴火も山頂火口そばの斜面で発生し溶岩を流出しました。

(御岳)

●北岳(標高1,117m)

桜島の最高峰で山頂には直径約500mの火口があります。北岳は溶岩と火砕岩の互層の成層火山で,山腹から山麓にかけては顕著な溶岩末端崖を持つ溶岩流が分布しています。北岳最後の噴火は軽石噴火であり,北岳山頂付近の地形は厚い軽石層で被覆されています。特に山頂の北斜面では溶結した軽石層かわずかに二次流動した地形を示しています。有史以来、北岳山頂火口から噴火した記録はありませんが、北東斜面に安永大噴火の火口があります。

●中岳(標高1,060m)

北岳から約900m南に位置しています。有史以来噴火の記録はありませんが、地質調査では1200年頃の活動で形成したものと思われます。南岳の寄生火山(側火山)の一つです。

●南岳(標高1,040m)

中岳から約500m南に位置しています。山頂に直径約700mの火口があり、その内側に二つの小火口(A火口とB火口)を擁しています。この火口は1955年(昭和30年)10月以降活発な噴火活動を続けています。

南岳は溶岩が卓越する成層火山で,その形成史は古期と新期に分けられます。南岳の古期の溶岩は流動性に富み,南から東山麓に広く分布しています。これに対し,新期の溶岩はやや粘性が高く,比高の大きな溶岩皺や溶岩堤防を持つ凹凸した形態となっています。

噴出物(火山ガス・火山灰・火山礫・噴石など)や 爆発時の空振、また二次災害としての土石流などにより各方面に被害を及ぼしていきました。南側山腹に安永大噴火の火口、東側山腹には昭和噴火の火口(昭和火口)があります。昭和火口は、2006(平成18)年6月に58年ぶりとなる噴火活動を再開し、2008年以降活発な噴火活動が継続しています。

●寄生火山(側火山)

・湯之平(ゆのひら、標高373m): 北岳の西側斜面に位置する溶岩ドーム。

・春田山(はるたやま、標高408m): 湯之平の東側に隣接する溶岩ドーム。

・権現山(ごんげんやま、標高350m): 南岳の東側斜面に位置する溶岩ドーム。

・鍋山(なべやま、標高359m): 南岳の東側斜面に位置する火口跡。南側に大正大噴火の火口(東火口)があります。

・引ノ平(ひきのだいら、標高565m): 中岳の西側斜面に位置する溶岩ドーム。北東部に大正大噴火の火口(西火口)があります。

 

桜島マグマ

桜島のマグマは地下100 km以上の深部から供給されています。マグマはまず鹿児島湾の姶良カルデラ中央の地下10 kmの巨大なマグマ溜まりに供給された後に、火口直下5 kmにあるマグマ溜りに移動して噴火に至っているとされています。各マグマ溜りの容積は噴火によって多少の変動がありますが、噴火があってもマグマの増加分を消化できておらず、マグマ溜まりは増大傾向にあります。

 

桜島の成立ち

約2万9千年前に現在の鹿児島湾の奥部にあたる位置で巨大カルデラ噴火が発生し、姶良(あいら)カルデラ(『九州の地質的景観』第2回「姶良カルデラ」参照)が形成されました。そのおよそ3000年後の約2万6千年前に、この姶良カルデラの南端から後カルデラ火山として新たに始まった噴火活動により桜島が誕生しました。2万6千年前から2万4千年前に溶岩を流出しながら火山島を形成していきました。約1万3千年前には北岳が海上に姿を現し、この頃に北岳から噴出した火山灰の地層は九州南部に広がっておりサツマ火山灰と呼ばれています。この活動は2千年ほど続いたのち停止しました(古期北岳火山)。

その後、1万年ほどの休止期間を置いて、桜島火山最大の活動であった約1万2800年前の桜島-薩摩テフラ(テフラ:爆発型噴火で火口から放出され、空中を飛行して地表に堆積した火山砕屑物(かざんさいせつぶつ:火山灰、火山礫、噴石、スコリア、軽石、火山弾、火山岩塊などの総称)を噴出した噴火を皮切りに新規北岳火山が活動を開始しました。少なくとも10回の軽石噴火を繰り返し、その火砕物の総体積は11km3(6.6 DREkm3)に及び、火山爆発指数VEIは5(VEI火山爆発指数:火山の爆発規模の大きさを示します。イエローストーでVEI8、阿蘇カルデラ・姶良カルデラでVEI7)。この噴火によって、桜島の周囲10km以内ではベースサージ(水蒸気や空気などのガスと火山灰や岩塊など固体破片の混合した低温の火山砕屑流)が到達したほか、現在の鹿児島市付近で2 m以上の火山灰が堆積しており、薩摩硫黄島などでも火山灰が確認されています。以降プリニー式噴火(多量の軽石・火山灰を放出する爆発的な火山噴火)を繰り返し、山体が更に成長していきました。約5千年前には活動を停止し、約4500年前から噴出源が南岳とその側火山(中岳や昭和火口)に移行し、ブルカノ式噴火(爆発的な噴火を伴い、火山灰、火山弾などを噴出するとともに、粘り気の強い溶岩が流出する。)による火山砂の堆積、溶岩流の形成の他、間欠的にプリニー式噴火が発生しています。

桜島は、日本の火山の中では比較的新しい火山であり、有史以来頻繁に繰り返してきました。

 

上野原遺跡(うえのはらいせき)(鹿児島県霧島市)

縄文時代草創期1万3000年前の桜島噴火による火山灰P-13で埋まりました。

当時の縄文文化の最先端の生活レベルでした。国内最古級・最大の定住集落跡。 良好に保存された状態で発見されました。(「日本のポンペイ」といわれる)竪穴式住居跡のうち10軒は火山灰で埋まっていました。竪穴式住居46軒、石蒸調理のための集石遺構が39基、燻製製造のための連穴土抗15基、その他の土抗約125基、道の跡2条が確認されました。

 

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次回は 第8回「桜島②」

 

 
(担当 G)

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