『九州の地質的景観』第6回 耶馬渓 | 奈良の鹿たち

奈良の鹿たち

悠々自適のシニアたちです

『九州の地質的景観』 

第6回

<耶馬渓>

(やばけい)

 

 

 

概要

大分県中津市にある山国川の上・中流域及びその支流域を中心とした東西36km,南北32kmのエリアです。本耶馬渓をはじめ奥耶馬渓,深耶馬渓,裏耶馬渓,津民(つたみ)渓など奇岩や絶壁の渓谷が各所にみられます。本耶馬渓は山国川本流の青ノ洞門付近から柿坂付近までをいい、上流の奥耶馬渓、支流の羅漢寺(らかんじ)渓・深耶馬渓・裏耶馬渓なども含めていいます。

日本三大奇勝として知られ、日本新三景に選定され、名勝に指定されている。耶馬日田英彦山国定公園に含まれます。

成立ち

耶馬渓溶岩台地は、約100~90万年前に大分県西部の猪牟田(ししむた)カルデラ(直径8km)からの2度にわたる非常に大規模な噴火により噴出した火砕流堆積物=溶結凝灰岩の台地です。特に、耶馬渓火砕流・耶馬渓溶結凝灰岩と呼ばれています。これらの火砕流の噴出時には、それぞれピンク火山灰及びアズキ火山灰と呼ばれる火山灰が偏西風にのって飛散し、近畿地方や、房総半島や新潟にまで達しました。その堆積層は地層の時代を決める鍵層となっています。

耶馬渓に切り立った崖や洞窟が多いのは、この溶結凝灰岩が比較的軟らかく、浸食を受けやすいためです。

耶馬渓は、日本最大の溶岩台地が、山国川などの諸河川による浸食で多くのメーサ(浸食作用により周辺が低下し、あとに取り残されて台地状をなす地形)やビュート(差別侵食によって形成された孤立丘)が形成されています。山国川の本流および支流は直立する節理と、もろく不均質な層理に沿って浸食され、雄大な渓谷美と奇岩怪石の連なる岩石美をつくりだしました。

「耶馬渓」は,「山国川」水系に属する多くの支流が開析(侵食)した「峡谷」で,極めて広い範囲に分布しています。元々は,「青の洞門」が存在する場所のみが耶馬渓だったと思われますが,現在では単に耶馬渓と言うと「深耶馬渓」を指すようです。それは,「開析谷」の規模(崖の高さや幅)が,本耶馬渓よりも深耶馬渓や裏耶馬渓のほうが大きくて,地形がダイナミックであると思われます。

「山国川」とその支流が,新生代新第三紀中新世(約300万年前頃)の「新期宇佐火山岩類」の広大な大地を侵食してできた「開析谷」の崖が「本耶馬渓」です。
大地が形成されてから相当程度の時間が経過しているので,開析谷の幅は広がり,「谷底平野】が広がっています。

「裏耶馬渓」を開析した「金吉川」は,「側方侵食力】が大きかったためか,谷幅が広がっていて,一部には,「谷底平野」ができているほどです。「還流丘陵」らしき地形が存在する一方,金吉川の支流である「大浦川」に対する攻撃(谷頭侵食)が始まっています。

 
 
 

====================

次回は 第7回「桜島①」

 

 

(担当 G)

====================