『関東の地質的景観』第6回 伊豆半島③(景勝地2) | 奈良の鹿たち

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『関東の地質的景観』

第6回

伊豆半島③

(景勝地2)(中伊豆・弥波伊豆)

 

 

伊豆半島は元々南海の火山島でした。それが、そのまま北上し、日本列島に衝突して伊豆半島になりました。だから、伊豆半島は全地域、火山で成り立っているのです。

 

~中伊豆エリア~

<浄蓮の滝>(じょうれんのたき)

約1万7千年前に噴火した伊豆東部火山群に属するスコリア丘の鉢窪山(はちくぼやま)からの溶岩流は、茅野(かやの)の台地を造り、狩野川をせき止めて、浄蓮の滝を作りました。
滝が落ちる溶岩流の「末端崖」(まったんがい)は急速に冷え固まって、柱状節理(柱状節理)が発達しました。

 

<葛城山>(かつらぎやま)  

葛城山は伊豆長岡温泉の南に位置する標高452mの急峻な山。

火山の地下には地下深くからマグマが通ってくるマグマの通り道があります。このマグマの通り道が地殻変動などで隆起して地表に姿を現したものを「火山の根」と呼んでいます。
葛城山も数百万年前に噴火した海底火山のマグマの通り道が冷え固まり、伊豆半島の衝突で隆起した「火山の根」のひとつ。長年の浸食に耐えたこの急峻な山の山頂からは、伊豆が海底火山だった頃から現在に至るまでのさまざまな時代における大地の活動のなごりを一望することができます。葛城山の尾根に、海底火山のマグマがゆっくりと冷え固まってできた「板状節理」が露頭します。

 

~南伊豆エリア~

<河津七滝>(かわづななだる)  

河津七滝は、河津川の上流約2kmにわたって、大小の滝が続く渓谷です。約2万5千年前に、登リ尾の南斜面から流れ出した溶岩流が、河津川を約2kmに渡って埋め立てて、その後の水流により浸食された渓谷にいくつもの滝が出来ました。

下流から、大滝・出会滝・カニ滝・初景滝・ヘビ滝・エビ滝・釜滝と続く。釜滝の上流にある猿田渕も、登リ尾南火山の溶岩流が侵食されたものです。
河津では、滝のことを“たる”と呼びます。“水が垂れる”から由来します。

滝の上部には発達した柱状節理が見られるが、下部には基盤岩の海底火山の地層が見られます。

大滝は、溶岩流が流れ下った最先端です。

出合滝は、曲がった柱状節理が特徴です。

蟹滝は柱状節理が侵食された断面が露頭しています。

初景滝(しょけいだる)の手前には柱状節理が露頭しています。

蛇滝の下流右岸には、基盤岩である凝灰岩(海底火山の噴出物)が露頭します。登尾南火山の溶岩流が海底火山の噴出物を避けて流れたことが分かります

海老滝の滝つぼの右岸には柱状節理も見えるが、滝本体は、溶岩流の柱状節理ではなく、古い海底火山の堆積物が浸食されてできました。

釜滝の右岸の柱状節理の壁が見事です。滝つぼ近く右側に見えるのは基盤岩の湯ヶ島層群の凝灰岩です。登リ尾南火山から流れ着いた厚い溶岩流が、冷却する際に収縮して柱状のひび割れが出来ました。

 

<龍宮窟>(りゅうぐうくつ) 

波が海岸の波に打ち付けると、崖の弱い部分(柔らかい地層や断層など)が削られていき、洞窟ができることがあります。こうしてできる海の洞窟を「海食洞」(かいしょくどう)と呼びます。田牛(とうじ)の海岸の北東にある龍宮窟は、おおきな海食洞の天井が一部崩れて、直径40~50メートルほどの天窓が開いたものです。洞窟の壁には、海底火山から噴出した黄褐色の火山礫が美しく層をなし、天窓の底を満たす青い海水とのコントラストが神秘的な場所です。海食洞内部に降りると、海側の穴だけでなく、天井にも大きな天窓が開いていて、地元では「二穴」(ふたあな)と呼んでいます。水底土石流の凝灰質砂岩が海側の割れ目から少しずつ海食されて、大きな空洞ができ、その後に薄くなった天井が崩落して、天窓が開きました。

 

<恵比須島>(えびすじま)  

恵比須島は、須崎半島の南端に突き出た小さな島。島の南には、千畳敷(せんじょうじき)と呼ばれる凝灰岩の「波食台」(はしょくだい)があります。島の周囲を巡る遊歩道では、白浜層群の噴出物が堆積して様々な地質・地層を観察することができます。白浜層群の凝灰質砂岩・シルト岩の地層。水冷破砕岩、枕状溶岩、塊状溶岩が混在して露頭います。島の北東部の露頭では、凝灰質砂岩と礫岩の互層が見られます。礫岩層には、水流により礫の扁平面(へんぺいめん)が一方向に向いた「インブリケーション」が見られます。

 

<石廊崎>(いろうざき)  

石廊崎は伊豆半島の最南端に位置し、太平洋に突き出た岬です。先端にある石室神社(いろうじんじゃ)は、水冷破砕岩が塩類により風化された窪み(タフォニ)にすっぽりと社がはまっています。岬の周辺は、海底火山から噴出したマグマが水冷破砕された火山岩で、荒々しい地形が見ものです。

 

<入間千畳敷>(いるませんじょうじき)  

入間奥石廊(おくいろう)と呼ばれる険しい海岸線の中にできた小さな入り江を持つ漁村です。入間の港から断崖絶壁につけられた遊歩道を歩いて40分、伊豆の秘境ともいえる千畳敷には、海底に降り積もった火山灰や軽石からなる美しい地層が広がります。千畳敷では、かつて伊豆石(軟石)の採石が行われており、火山灰の地層を人工的に切り出した跡も残ります。

三ツ石岬の先端は、海底火山が造った荒々しい地形が目に入ります。約1000万年~200万年前に活動した海底火山の噴出物が多様な地層・地形をもたらしました。下部の白い一色(いしき)凝灰岩層に貫入した黒い岩脈から供給されたマグマが噴出して、上部を覆っています。また、柱状節理が発達しています。
白い一色凝灰岩層に水平に貫入する黒い岩脈が見えます。

 

<鉢ノ山>(はちのやま)   

鉢ノ山は、伊豆東部火山群のひとつで、約3万6千年前に噴火したスコリア丘です。どこから見ても、きれいなプリン状のスコリア丘は、大室山についで二番目の大きさです。
スコリア丘の北西側と南東側の麓からは、溶岩流が流れ出て、西の奥原川(おくはらがわ)と東の佐ケ野川(さがのがわ)を流れ下り、河津川まで達しました。佐ケ野川を流れ下った溶岩流は、下佐ケ野付近で「溶岩扇状地」の台地を造りました。

 

 

 

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次回は 第7回「浅間山①」

 

 

(担当P)

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