『全国の焼き物』第23回 備前焼 | 奈良の鹿たち

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『全国の焼き物』

第23回

備前焼(びぜんやき)

 

 

 

備前焼は、岡山県備前市周辺を産地とする炻器。六古窯の一つとされる備前焼には、伝統的な歴史があります。備前市伊部地区で盛んであることから「伊部焼(いんべやき)」との別名も持つ。同地区で数多く見られる煉瓦造りの四角い煙突は備前焼の窯のものです。

 

(特徴)

備前焼は絵付けもせず釉薬も使わずそのまま焼いたもので、土味がよく表れている焼き物です。「酸化焔焼成」によって堅く締められた赤みの強い味わいや、窯の中で偶然に生み出される肌合い「窯変」によって、一点として同じ形も焼き味も模様もないのが特徴。乾燥させたのち、焼き味の景色は、胡麻・棧切り(さんぎり)・緋襷(ひだすき)・牡丹餅などの変化に富んでいます。それらは作品の詰め方や燃料である松割木の焚き方などの工夫と、千数百度の炎の力によって七〜十昼夜かけてじっくり焼き締めた硬質の炻器(せっき)です。

 

(胡麻)

(棧切り さんぎり)

(緋襷 ひだすき)

(牡丹餅)

「使い込むほどに味が出る」と言われ、派手さはないが存在感があり、飽きがこないのが特色です。日本の美の原点とさえいわれるゆえんです。備前焼の魅力である茶褐色の地肌は、備前市伊部(いんべ)地区の地下にある粘土層で「田土(ひよせ)」と呼ばれる田んぼの底から掘り起こしたやわらかい粘土と、山土・黒土を混ぜ合わせた鉄分を多く含む土とを焼くことによって現れます。「ひよせ」は、備前地方の田園の地下約3mに30cm位の層をなしており、2~3%程の鉄分を含んでいます。採掘量は年々少なくなっています。粘りが強く耐火度は低く、陶土としては鉄分が多い。土の配合比率や、土を寝かす期間や、出土する場所によっても土味が違ってきます。釉薬を使わないだけに、備前焼では土に神経を使います。

(田土 ひよせ)

 

(歴史)

備前市南部から瀬戸内市内には古墳時代から平安時代にかけての須恵器(すえき)窯跡が点在し「邑久古窯跡群」と呼ばれています。この須恵器の流れをくんで、平安時代に熊山のふもとの南大窯跡でおもに碗、皿、盤、瓦、壺・甕・擂り鉢などの日常品をして使われるものが多く焼かれて、現在の備前焼に発展したといわれています。

鎌倉時代初期には還元焔焼成による焼き締め陶が焼かれ、主に壷・甕・擂鉢が多く作られました。その後の鎌倉時代後期には酸化焔焼成による現在の備前焼特有の茶褐色の陶器が焼かれてきました。

今の伊部地区に備前焼きの窯が開かれたのも、この時代と言われています。
当時の主力は水瓶や擂鉢など実用本位のものであり、釉薬を使用せず、焼締で作られる備前焼きの焼き物は「落としても壊れない」と評判も高く広く庶民に広がっていきました。

この当時の作品は「古備前」と呼ばれ珍重されています。

(古備前)

室町時代から桃山時代には「ひよせ」と呼ばれる伊部の地から採取した粘土が使用されるようになり、成形にもロクロが用いられ量産ができるようになり、また半地下式の大形の穴窯が作られました。この時代にわび・さびに重点をおいた茶道が広がりました。枯れた味わいで素朴なたたずまいの備前焼は茶陶としての人気が高まり、窯元の数も広がっていきました。

しかし江戸時代には茶道の衰退とともに、備前焼きの存在が薄れてきた時代がありました。

また、京都・有田・瀬戸などで安価で大量生産が可能な磁器の登場も原因とされています。

一方、藩の保護・統制もあり小規模の窯が統合され、南・北・西に本格的大規模な共同窯(大窯)が築かれ、窯元六姓(木村・森・頓宮・寺見・大饗・金重)による製造体制が整いました。
備前焼は再び水瓶や擂鉢、酒徳利など実用品の生産に戻っていきました。この当時のものは近郷の旧家にかなりの数が残されています。

明治、大正に入ってもその傾向は変わらず苦しい時代でした。この衰退した備前焼を現在の繁栄に導くきっかけを作ったのは、昭和に入ったころ、備前焼きの代表作家である金重陶陽(かねしげとうよう)らが桃山陶への回帰をはかり、土と炎で奏でる窯変(ようへん)の美を追求し、備前焼きの人気を復興させることで、備前焼きは伝統的な焼き物として現在の地位を確立したと言えます。

陶陽は重要無形文化財「備前焼」の保持者(人間国宝)に認定され、弟子達の中からも人間国宝を輩出し、海外でも純日本的な備前焼の人気が高まり、備前焼の評判は不動のものとなりました。2017年、備前焼は日本六古窯として日本遺産に認定されました。

 

(備前焼の郷 伊部いんべ

 

 

 

 

 

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次回は 第24回「益子焼」

 

 

(担当 A)

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