『おくのほそ道』 第45回 汐越の松 | 奈良の鹿たち

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『おくのほそ道』

  第45回「汐越の松」

(しおごしのまつ)

 

(西行も歌ったと言われる汐越の松)

(汐越しの松 元禄二年八月九日)

第45回「汐越の松(しおごしのまつ)」>(原文)

越前の境、吉崎(よしざき)の入江を 舟に(さお)さして、汐越(しおこし)の松を尋ぬ。

終宵(よもすがら) 嵐に波を運ばせて 月を垂れたる 汐越の松  (西行)

此の一首にて 数景(すけい)尽きたり。

もし一弁(いちべん)を加うる者は、無用の指を 立つるがごとし。

 

(現代語)

越前と加賀との国境、吉崎の入り江に舟を出して、汐越しの松を見に行った。 

  「終宵嵐に波をはこばせて月をたれたる汐越の松」  (西行)

この一首でこの当たりの景色のすべては言い尽くされた。

もしこれに、一言一句でも何かを加えようと言うのであれば、それは五本の指にもう一本指を加えるに等しく無駄以外の何物でもない。

 

(語句)

●「越前の境」:加賀(石川)から、越前(福井)の北の玄関口・吉崎の浜坂に来ている。
●「吉崎の入江」:現在の北潟湖(きたがたこ)。ここに浄土真宗第8世蓮如上人が遁れてきて吉崎

 御坊を開いた。 

●「汐越の松」:歌枕。吉崎対岸の浜坂に有った松。汐が満ちてくるとその枝まで海水が上がっ

 てきて、枝が海中に没するところから名づけられたという。

●「夜もすがら 嵐に波をはこばせて」:西行に憧れていた芭蕉は、これまでにも西行ゆかりの

 地をあちこち訪ねているが、この句は西行の作ではなく蓮如の作だといわれている。

●「無用の指を立るがごとし」:蛇足を加えることになるの意。 すばらしい歌とも思えない

 が、西行の作と聞けば話は違ってくるという例であろう。

 

(俳句)

 「終宵 嵐に波を運ばせて 月を垂れたる 汐越の松」  (西行)

   夜どうしの嵐に、波を寄せさせて、汐をかぶった汐越の松の木枝から月の光を受けた滴が

   したたり落ちている。

 

 

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次回は 第46回「天竜寺・永平寺」

 

 

(担当H)

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