『おくのほそ道』
第10回「殺生石」
(せっしょうせき)
(石の毒気今だ滅びず 殺生石)
(那須温泉・殺生石 元禄二年四月十九日)
<第10回「殺生石」>(原文)
是より殺生石に行く。
館代より馬にて送らる。此の口付きの男、「短冊 得させよ」と乞う。
やさしき事を 望み侍るものかなと、
野を横に 馬 牽き向けよ ほととぎす
殺生石は 温泉の出る山陰にあり。石の毒気 いまだ滅びず。
蜂・蝶のたぐい、真砂の色の見えぬほど重なり死す。
(現代語)
黒羽から殺生石に行った。黒羽の城代は馬を付けて送ってくれた。その馬方が、「短冊に一句したためて下さい」などと頼んできたので、優しいことを望むものだと、
「野を横に馬牽むけよほとゝぎす」
殺生石は温泉が出る山陰にある。石の毒気が未だに残っていて、蜂や蝶などが、砂が見えないほど沢山折り重なって死んでいた。
(語句)
●「殺生石」:ここは、いまの那須温泉湯元。この石の周りには那須岳の火山性有毒ガスが絶え
ず発している。殺生石は、退治された「九尾の狐」(玉藻の前)の化身とされている。
なお、ここでは、「湯をむすぶ誓ひも同じ石清水」、「石の香や夏草赤く露暑し」の2句を詠
んでいた。
●「口付のおのこ」:馬子。実際はただの馬子ではなく館代桃雪の御者のようなしっかりした人
物ではなかったか? 曾良の『旅日記』では、図書家来角左衛門となっている。
(俳句)
「野を横に 馬牽き向けよ ほととぎす」
馬に乗って、那須野を横切っているとホトトギスが鳴いている。馬子よ、そちらの方に馬を
向けておくれ。
(写真)
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次回は 第11回「遊行柳」
(担当H)
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