『量子』 第6回 量子の応用② | 奈良の鹿たち

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『量子』第6回

「量子の応用②」

  <バンド理論・超伝導・量子ビット>

 

 

<バンド理論 Band theory

温度や不純物の変化で自由電子が増減し通電量が変わるという理論。

金属は自由に動きまわれる(自由)電子をもつ物質だとされています。

一方、絶縁体は、自由電子をもたない物質で、温度を上げたり不純物を加えたりすると自由電子が増える物質です。こういった、結晶内での電子の振る舞いを理論付けしたのが「バンド理論」です。

ちなみに「バンド」は、固体物質中での電子の状態が、そのエネルギーの分布を見ると帯状になっているところから付けられたものです。  

この帯状(バンド)とその隙間(バンドギャップ)の間を、電子がいかに電流の流れを調節できるかが技術的問題です。

応用としては、金属・半導体・絶縁体を使っている現代の情報テクノロジーのすべてのところに行き渡っています。

 

<超伝導Superconductivity

ある温度以下に冷却された特定の金属や化合物などの物質で、電気抵抗が急激にゼロになる現象を超伝導現象といいます。 そのため電圧をかけなくても電流が流れ続けます。

金属は温度が下がると電気伝導性が上がり、逆に上がると伝導性は減少します。 超伝導になる温度は(臨界温度)は金属によって異なり、ニオブでは9.22K(ケルビン)、アルミニウムは1.20K(ケルビン)となる。物質が超伝導状態になることは「水が氷になる相転移」と同じ現象である。

 

超伝導体には電気抵抗がゼロになる超伝導の他にも面白い性質がある。

マイスナー効果:超伝導体は磁場を嫌い(完全反磁性)、磁石を近づけると、外からの磁場を打ち消す(磁場をゼロにする)方向に電流が流れて磁場を追い出す現象。 電流が流れ続けている間、超伝導の物質は「ピン止め効果」というものと相まって浮いたままになる(磁気浮上現象)。

                                         

ジョセフソン効果Josephson effect:電気を通さない薄い絶縁体を超伝導体ではさむと、二つの電子がペアを組んで(クーパーペア)、電圧降下なしでトンネル効果で絶縁体をすり抜けて電流が流れる現象。

高精度の磁場測定器や高速スイッチングに応用されている。

 

超伝導磁石

超伝導体を用いた電磁石のこと。 

超伝導体は電気抵抗がゼロであるので永久に電気が流れ続け、発熱することもなく強力な磁力を発生させることができる。 ただ超伝導体は外部からの磁場に弱く、その影響で超伝導現象が消失してしまう。 そのため材質には外部磁場に強い第二種超伝導体(銅酸化物高温超伝導体、ニオブ、バナジウム)というものが用いられる。

 

(超電導磁石の実用事例)

磁気浮上鉄道(リニアモーターカー)  

車両側に浮上や推進用の強力な磁力を安定して得るための超伝導磁石が用いられている。

 

トカマク型核融合炉

プラズマを強力な超伝導磁石の磁場で閉じ込める方式の湯核融合炉。 安全安定の問題、規模の大きさ、コイルの強度などさまざまな難しい問題がある。

 

核磁気共鳴画像法(MRI)

超伝導電磁石を使用して強い磁場を発生させることで、画像を精密かつ高コントラストで映像化することができる。

 

重粒子線がん治療

病巣をピンポイントで狙い撃ちし、がん病巣には強いダメージを与えても正常細胞のダメージは極力抑える治療方法。超伝導磁石を使用した照射回数を少なく有害事象を少なく治療期間を短くする軽量・小型の装置が生まれた。がん治療のみならず、腫瘍の除去などにも使われています。

<量子ビットQuantum bit, Qbit

多数の情報の最小単位を原子や電子、光などに担わせ、それを”分身”させて(重ね合わせ)、多数の計算を同時進行させることにより、飛躍的な計算速度を生み出すのが量子コンピューターです。

そこで使う最小単位を量子ビットといいます。 

 

量子コンピューターQuantum computer

量子ビットを使って、”0”と”1”の「量子の重ね合わせ」の状態で並列的に計算を処理していきます。

電子の向き(スピン)などを使うことにより”0”と”1”の重ね合わせの状態(”0”でもあり”1”でもある)をとることができ、驚異的な計算能力につながります。この「重ね合わせ」をつくりだすために、物質を絶対零度(マイナス273.15℃)近くまで下げて電気抵抗をなくす「超伝導」を使います。 超伝導の回路を流れる右回りの電流で”1”を表し、左回りの電流で”0”を表すとすると、この2つが重ね合わさったような状態にします。

量子ビットはn量子ビットに対し、2のn乗の状態を同時に計算できることになります。 2ビットなら4つの状態、4ビットなら16の状態を表すことが出来ます。 先日発表されたGoogleの量子コンピューターは53ビットですから、2の53乗の状態を同時に計算することになります。

さらに、たくさんの量子ビットを制御可能な状態にするために「量子もつれ・量子からみ」と呼ばれる量子の特徴を利用します。

量子コンピューターは高い計算速度と消費電力の低さを特徴としており、世界中で開発競争にしのぎを削っています。ただ、実用化までには10~20年かかるといわれています。

量子暗号Quantum cryptography

今、一般的に普及している暗号(PGP方式)は暗号文の規則性を複雑にして解読に時間がかかるようにしている。コンピューターは、掛け算は得意だけれど素因数分解(6の素因数を分解すると2と3)は不得意で、それを逆手にとって開発された。

しかし、量子コンピューターは通常コンピューターの1億倍も計算が速い。今までほぼ解読不可能と思われていた暗号を、あっさり解読してしまうかもしれない。 そういうわけで、現在開発を進めているのが絶対に解読できない「量子暗号」だ。

量子コンピューター同様、量子力学の原理を応用した暗号技術だ。

すなわち、「粒子の位置と運動量は同時に確定できない」(不確定性原理)と「量子は観測された瞬間に状態を変える」(量子の観測不可能性)により不可侵性が保証されている。

暗号データの受け渡しに使うのは量子の一種である光子です。

暗号を解読するための(ビット列)を光子で送れば、量子の特徴である観測した時点(操作したした時点)で鍵が壊れてしまうため、受信者は盗聴に気づくし暗号は解読されない。

 

<化学(量子科学)>

 

周期表the periodic table

元素を軽い順に並べると、似た性質の元素が周期的にあらわれます。

これを表にしたのが元素の周期表です。

表の縦に並ぶ元素は性質がよく似ています。

こういった周期性がなぜ起きるのかは、量子論にもとづいた原子の電子軌道の理論で明らかになりました。

 

化学反応

化学反応とは、原子どうしがくっついたりはなれたりする仕組みです。

これも量子論の電子軌道の理論計算によって、原子と分子の安定的な存在が可能なのかが解明されました。

 

 

 

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次回は 第7回 (最終回)「量子論と宇宙論」

 
 
(担当 P)

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