『量子』 第5回 量子の応用① | 奈良の鹿たち

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『量子』第5回

「量子の応用①」

<トンネル効果>

(Tunneling Effect)

 

 

●トンネル効果(トンネリング)Tunneling Effectとは?

電子は本来なら通り抜けられない”壁”を通り抜けることができる。これを「トンネル効果」といいます。 

この”壁”のことを”エネルギーの障壁”といいますが、この壁を電子が”通り抜けた”ことを意味します。正しくは、「量子の世界では、電子は壁を通り抜けたように見える」と言わなければなりません。

観測していないときは、粒子は波であって粒子が壁を通り抜けるということはありえません。

トンネル効果は、粒子の位置と運動量は同時に確定できないとする不確定性原理粒子と波の二重性を用いて説明することができます。 

電子が壁に向かって進む時、不確定性原理から粒子は存在確率が空間的な広がりがあることを意味しており、障壁の中にもそして反対側にも粒子の存在確率があり、壁が薄いほど確率は高くなります。そして壁の向こうに存在していても、トンネル効果は一瞬の出来事であり、波が壁の中を通る時間やスピードは存在しません。

このことは行動の問題ではなく、存在の問題なのです。 

これは、箱の中に電子を入れて仕切りを作っても、両方に電子は存在するのと同じことです。

(エネルギーと時間の不確定性の関係)

 

ただし、このトンネル効果の問題も、障壁の厚さが1~3nm(10億分の1~3 m)以下の時に起こるミクロの世界だけの話なのです。

 

●トンネル効果の応用

 ◎原子核のαアルファ崩壊

ウランなどの放射性原子の原子核がアルファ粒子(放射線の一種)を放出して少し軽くなる現象です。 

原子核の中のアルファ粒子は、強い核力で原子核につなぎとめられているので、普通では原子核から飛び出ることはありません。それでも、アルファ粒子はトンネル効果でエネルギーの壁をすり抜けて、原子核の外に飛び出ることがあります。

 

 ◎太陽の核融合反応

太陽の中では、水素の原子核である陽子どうしが、衝突合体して核融合反応が起きて、それで太陽は輝いています。ところが、プラスの電気をもっている陽子どうしが電磁気力の反発に逆らって衝突するためには、数百億℃の高熱を必要としますが、太陽の中心温度は1500万℃程度です。

太陽で核融合反応応が起きているのは、ある程度近づいた陽子どうしが、トンネル効果で衝突しているためです。

 

 ◎トンネルダイオード(エザキダイオード)

ダイオードとは、電流を一方向にしか流さず、逆方向には流さない半導体素子です。

2枚の半導体(n 型・p 型)の接合面 で生じるトンネル効果を利用して、電圧を上げても電流が増えない現象。 高速度スイッチやマイクロ波発信回路や定電圧源を作成するような高速素子などにおいて応用されています。

  

江崎玲於奈 博士         

半導体内のトンネル効果の発見で、1973年 ノーベル賞受賞 

トンネルダイオード                     

            

 

 

 

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次回は 第6回「量子の応用」

 

 

(担当 P)

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