『量子』 第4回 量子の振る舞い ③ | 奈良の鹿たち

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『量子』第4回

「量子の振る舞い ③」

<量子もつれ(からみ合い)>

(エンタングルメント Entanglement)

 

     

<量子もつれ エンタングルメント Entanglement

 

 

量子(電子)はもともと「スピン自由度」というものを持っているのです。量子(電子)の基本的な「スピン状態」は2つあり、しばしば”上向き”と”下向き”というように言い表されます。ここで“上向き”、“下向き”というのは便宜上使っているだけであり、要するに2つの状態を示しただけのことです。

そして、1つの量子(電子)は、全く同時にこの“上向きスピン”と“下向きスピン”の両方の状態を持つことができるのです。これを量子(電子)が“上向きスピン状態”と“下向きスピン状態”の「重ね合わせ状態」にあるといいます。これが量子力学のいう「重ね合わせ」の一例です。観測するまではどちらの状態にあるのかは分かりませんが、観測することで、重ね合わせ状態からどちらかの確定した状態へと変わります。この変化を「状態の収縮」と呼びます。(「量子論の観測の問題」)

さらに、この「重ね合わせ」の真の不思議さは2つの粒子の「重ね合わせ」において決定的になります。それが「量子もつれ量子エンタングルメントquantum entanglement)」という状態です。

一つの量子から生まれた双子(ペアリング)の量子が媒介もなしに同期してスピン状態になり、片方は上回転もう片方は下回転するという性質があります。

これは、先ほどの一つの量子から生まれた双子(ペアリング)の量子になった特別な状態の場合です。例えば、ペアになった粒子Aと粒子Bのそれぞれのスピンの向きが“Aが上向き・Bが下向き”と“Aが下向き・Bが上向き”との重ね合わせ状態を形成している場合です。このような場合、一方の粒子を観測してその状態が分かれば、もう一方の粒子の状態は観測するまでもなく決まってしまうのです。たとえば、Aが下向きだと観測されれば、その瞬間Bは上向き状態に決まります。これは状態の瞬間収縮により瞬時に起こります(時間や距離といったものを無視します)。

 

量子もつれのある双子の量子は、お互いどんなに離れていても(何光年離れていても)、量子が何であっても(電子と中性子)、片方に何らかの変化が生じれば対象に触れずにどんな連鎖もなく、瞬時に他方に物理的影響をおよぼすというものです。

どのようにして相互関係が伝わったのでしょうか?

 

もしも何らかの粒子が媒介しているのであれば、その粒子は光の速度を超えていることになり、アインシュタインの相対性理論では説明ができません。そのため、「不気味な遠隔操作」と呼んでいました。この「量子エンタングルメント」による粒子間の遠く離れた相関を予言する量子力学の性質のことを「量子力学の非局所性」といいます。

 

この問題でアインシュタインとポドルスキーとローゼンの3人で、量子論の不完全さを指摘する論文を発表しました。3人の名前をとって「EPRパラドックス」といわれる。

 

しかし、現実に現象として起こっていることはあらゆるところで公認されています。

現在では、それは瞬時に影響が遠方に伝わるのではなく、二つの量子の状態がセットで決まっており(からみ合っており)、個別には決められないことになっていると考えられています。

言い換えると、双子のそれぞれの量子は観測しない段階では、右回りと左回りの時点のかさね合わせの状態にある。観測によって片方の量子が右回りに回転していることを確定すると、他方の量子は左回りに確定します。

 

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News!

2022年のノーベル物理学賞は,量子もつれ光子を用いたベルの不等式の破れの実験と量子情報科学の先駆的研究で,仏パリ・サクレー大学のアスペ(Alain Aspect)教授,米のクラウザー(John Clauser)博士,オーストリア・ウィーン大学のツァイリンガ−(Anton Zeilinger)教授に授与すると発表された。

彼らの実験で、量子もつれの存在は完全に実証され,相対性理論と矛盾するというパラドックスは解消されました。

(アインシュタインの言った「神はサイコロを振らない」は「神はサイコロを振る」になりました。)

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この量子のからみ合いは、見方を変えると一方に何らかの刺激を与えることによって他方に変化をさせるという遠隔操作が出来るということです。これを量子テレポ-テ-ションといい、将来的に高度な技術応用が期待されています。

 

<量子テレポ-テ-ションQuantum teleportation

量子もつれの効果を利用して、離れた場所に量子状態を転送すること。

テレポ--ションという名前ではあるが、量子が別の場所に瞬間移動するわけではない。量子もつれのある二つの量子のうち片方の状態を観測すると、瞬時に他方の状態が確定することからこの名前が生まれた。 

この際に量子間で情報の伝達や物理的作用は一切ないのです。

 

量子もつれの状態を利用して「0と1の両方」を重ね合わせで扱い、量子テレポテーションを利用して量子どうしを伝えさせると情報スピードが格段に上がり「量子コンピュータ―Quantum Computerの実現となりました。

 

 

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次回は 第5回「量子の応用①」

 

 

(担当 P)

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