『量子』 第3回 量子の振る舞い ② | 奈良の鹿たち

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『量子』第3回

「量子の振る舞い ②」

<量子の重ね合わせ>

 

第2回の「量子の波と粒子の二面性」では、仕切り箱の右に現れたり左に現れたりして粒子が確率的に発見さるということを説明しました。 

コペンハーゲン解釈では、量子は、いくつかの異なる状態の重ね合わせで存在し、空間的広がりを持つ波を形づくっているということです。しかし、観測された瞬間に波はしぼみ(波束の収縮)、一つの状態(波か粒)に落ち着く。そして、いつどのようにして収縮したかは分からないというものです。

収縮の原因として、測定される側に乱れを起こすことなどが考えられるが確定はできないのです。

     

ここで、量子の「重ね合わせ」の状態というものが示されました。

 内容については、説得力のある論理にはなっていませんが、「異なる状態が同時に存在する」という可能性を表示したわけです。

具体的には、二重スリットでどちらのスリットを通ったかという問題では、一つの電子(光子)がAのスリットとBのスリットを同時に通ったという重ね合わせが生まれたということです。 仕切り箱の中の電子(光子)は、重ね合わせにより右にも左にも同時に存在するということになります。

これを「共存状態にある」ともいいます。 

そして、観測をした瞬間この共存状態が崩壊し、一つの状態に収縮するのです。だから、「共存状態とはどんなものか?」と観察すると共存状態がなくなってしまうので、「共存状態とはどんなものか」は誰にも分からないのです。

     

二重スリット実験では、一つの粒子が両方のスリットを同時に通ってはじめて干渉稿が出来る。
(観測すると、二つのスリット通過の共存状態が崩れて、干渉稿は出来ない。)

 

 

量子の発見の確率で「有るか無いか」のみを考えるのは間違いです。

正確には、「有るという状態と無いという状態」が同時に起きているのです(共存状態にある)。そして有るという状態を確認できるのは確率的です。

重ね合わせとは、有る無いという存在のみだけでなく、Aという現象とBという現象が共存状態にあるということです。

                             

 

論理的な議論ばかりしていくと、現実では奇妙な現象が起きる。

それが「シュレディンガーの猫」という、「猫は生きているし死んでいる」 という結論になります。

「ランダムの確率で毒ガスの出る装置を入れた箱に猫を入れて閉じ込めた時、

次に箱を開けて観測するまで、猫が死んでいる状態と生きている状態が共存状態にある。」

 

シュレディンガー自身は、「(当時の)量子論の論理ではこのような奇怪な現象が生じる。」ということを言いたかったのですが、これが後々まで大きな問題提議となりました。

現時点でもこの問題は物理学的に完璧といえる形で解決された訳ではありません。

   

ここで「コペンハーゲン解釈」の問題点に答える理論が生まれました。

 

アメリカのヒュー・エヴェレットHugh Everettの唱える『多世界解釈』です。

『多世界解釈』状態の消失の謎を簡単に解決してくれます。

SFチックに思えるこの解釈は、多次元の別世界(パラレルワールド)があって、不可思議な波動収縮や干渉稿を出現させているとしています。

量子論的には観測者の役割はなく、観測作用の地点に到達すると世界は決まった結果にそれぞれ分裂している。つまり不可思議な波動の収縮は、「波の状態の世界」と「粒の状態の世界」が干渉しあうことなく、関係性が切れて存在(世界が分岐)している状態ということになります。

これによると、収縮は起こらず、また状態の重ね合わせも起こらなかったことになります。

さらに観測すると干渉が起こらなかったのも、「干渉が起こった世界」と「起こらなかった世界」をわれわれが体験しているということになります。 

シュレディンガーの猫では、毒ガスが出た世界(死んでいる状態)と出ていない世界(生きている状態)に世界が分岐していると言えます。

また、二重スリットではAのスリットを通る世界とBのスリットを通る世界が別々に存在したということになります。

ただし、このパラレルワールドの存在を何らかの観察で確認証明することは出来ません。

それぞれの干渉が現れるのは、多世界の分岐による現れ。

 

 

 

 

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次回は 第4回「量子の振る舞い③」

 

 

(担当 P)

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