『量子』 第7回(最終回)量子論と宇宙論(量子宇宙論) | 奈良の鹿たち

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『量子』第7回(最終回)

「量子論と宇宙論(量子宇宙論)」 

(Quantum Cosmology)

<量子宇宙論とは?>

量子論(量子力学)によって説明される宇宙論。

宇宙の誕生について、破錠なく説明するにはマクロを扱う一般相対性理論とミクロを扱う量子論との統合整合」が必要となってくる。

宇宙の始まりが、粒子のように非常に小さいものであるならば、ミクロの世界を説明できる量子論が、ここで最も適した道具となる。

・相対論:マクロの世界 重力による時空の成立ちを考える

     一つの事象に二つの異なる記述(見る立ち位置によって理解が異なる)

・量子論:ミクロの世界 根源的物質の振舞いを考える

     二つの異なる事象(粒子と波)に一つの(相補性)記述

 

難病と闘いながら、現代の宇宙論をリードしたイギリスのスティーヴン・ホーキングStephen Hawking博士は、一般相対性理論と量子論の統一に取り組み量子宇宙論を展開した。一般相対性理論と量子力学を融合し,宇宙の統一的理論の必要性を唱え追求した。物理学の本質を突く問題を提起し,理論物理学が追究すべき方向を指し示した功績は大きい。

 

<量子と宇宙>

● 無からの宇宙の誕生

何も存在しないはずの無の真空空間では、超短時間の間に物質が生まれたり消えたりしているのです。(対生成・対消滅)

相対性理論E=mc では、エネルギーと質量は同じものとされ、質量をもった物質をエネルギーからつくりだすことができます。

さらにエネルギーの不確定性関係 ΔE×Δt≧h  では、非常に短時間なら

たとえば、10の-20 秒後(1秒の1兆分の1のさらに1億分の1)に、エネルギーから電子が突然生まれる可能性あるということです。

 

ゆらぎ理論 : ビッグバン以前の宇宙の状態は、量子論の真空での「無」と「有」の間で揺らいでいた。 そして、突然「トンネル効果」で宇宙が誕生したというもの。

”無”から宇宙は誕生した」という仮説は、ビレンキン博士やホーキング博士らが唱えたもので、彼らは本来は相性の悪い量子論と一般相対性理論とを合わせて考えることで、宇宙が”無”から生まれる可能性があることを示しました。 ”無”とは、物質も空間も時間さない状態です。 しかし、物理学的には「”無”=真空とは、全く何もないということではなく、わずかな真空エネルギーのゆらぎが、誕生と消滅を繰り返している状態」ということになります。 すなわち、宇宙創成の”無”のゆらぎとは、未知のエネルギーが、無と有の両方の世界を同時にある確率をもって存在している状態を指し量子論の確率的存在になります。 そして、その状態から量子学的「トンネル効果」で突然パッと宇宙が生まれたと考えられています。

ビレンキンАлекса́ндр Виле́нкин博士の言葉

「われわれの宇宙は、宇宙の卵がトンネル効果を使って山を抜け、はかない運命の宇宙から急膨張する宇宙に転じて生じたものだ」

 

● 宇宙加速膨張

宇宙は膨張を加速させる暗黒エネルギー=ダークエネルギーで満たされ、ダークエネルギーの正体は真空のエネルギーであるとする理論がある。 そして、真空エネルギーは量子力学では真空中でのエネルギーのゆらぎとされる。

 

● 量子重力理論

素粒子論の4つの力(強い力、弱い力、電磁気力、重力)のうち重力だけは、量子力学の中では全くの未知数となっている。 重力は、重力子(グラビトン)という素粒子によって伝達されることに理論上はなっていますが、その重力子は全く見つかってもいないし、その存在性すら疑われています。

アインシュタインの一般相対論での重力理論だけでは、宇宙誕生の瞬間やブラックホールの特異点などでは説明がつかない。そこで量子論の登場となるわけですが、一般相対論と量子論で一緒に考えようとするとうまくいかなくなってしまいます。

それもそのはずで、一般相対論では大きさは質量に比例するが、量子論では大きさすなわち波長は質量に反比例するとなっているからです。

量子重力理論の構築なしには現代物理学の未来はありません。

 

マクロの宇宙とミクロの素粒子を結びつける理論として、超弦理論(超ひも理論)Super string Theoryというものが主流になりつつあります。

超弦理論(超ひも理論)とは、重力子をはじめ素粒子は粒子ではなく振動する弦(ひも)のようなもので、それはわれわれ三次元空間に存在するのではなく、十次元、十一次元の中での弦なのです。われわれ三次元の現象は、他次元の量子情報が投影されたものに過ぎないというものです。そこには、相対論で説明のつかない重力も含まれているのです。これをホログラフィック原理Holographic principleと呼んでいます。

素粒子は振動する開かれた弦、重力子は閉じた弦(輪)で表されます。

そしてこの世界は、ブレーンというの宇宙でできていて、すべての素粒子は、そのに両端を固定されていて、重力子だけがブレーン間を移動できるという考え方です。

量子論の多世界解釈マルチヴァースに発展していきます。

 

● 恒星(太陽)の核融合反応

恒星の輝きは、水素の原子核である陽子どうしが衝突合体してできる「核融合反応」で膨大なエネルギーが発生するためです。

しかし、プラス電荷の陽子どうしは反発して合体しないはずです。

合体するためには数百億℃の高温が必要ですが、太陽の中心温度は1500万℃程度です。

では何故、太陽は輝いているのか?

それは、ある程度近づいた陽子どうしが、量子力学上の「トンネル効果」で衝突し核融合を起こしているからなのです。

 

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『量子』 全7回 完

 

(担当 P)

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