『宇宙』 第5回(最終回)宇宙膨張と多次元宇宙論 | 奈良の鹿たち

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『宇宙』 

第5回(最終回)

「宇宙膨張と多次元宇宙論」

 

 

1.宇宙膨張

灼熱状態のビッグバンのなごりの光が宇宙マイクロ波背景放射です。宇宙の膨張にともなって波長が引き延ばされ、現在のわれわれが観ることのできる現象です。

ビッグバンがあったという証拠となっています。

1922年にロシアのフリードマン Alexander Friedmannが、一般相対性理論の方程式を宇宙の歴史の中で宇宙空間がどのように変化するのかを計算しました。そして膨張宇宙のモデルをフリードマン方程式として定式化し宇宙は膨張していることを予言しました。

1929年にアメリカのハッブル Edwin  Hubbleの「宇宙は膨張しており、遠くの銀河ほど速く地球から遠ざかっている」というハッブルの法則が発表され、フリードマンの予言は高く評価されました。

ハッブルの観測方法は、ドップラー効果赤方偏移が生じることから光源から遠ざかっていることが分かり、セファイド変光星を基準とした距離の測定を行い、ハッブル定数から宇宙の年齢を推定しました。

 v=H0d  v:銀河までの距離、d:銀河の後退速度、H0:ハッブル定数(ハッブルの法則

宇宙膨張が加速し始めたのは今から約70億年前で、宇宙物質のダークエネルギーは宇宙膨張を加速しているアクセル役で、ダークマターは重力をおよぼすので宇宙膨張のブレーキ役となるとみられています。

アインシュタイン Albert Einsteinが一般相対性理論で、数学的に宇宙定数 λ(ラムダ)を設定したのがこの宇宙膨張にあたるという解釈もあります。アインシュタインは、この半ば無理に導入した宇宙定数を、「生涯で最大の過ち」として後悔したというエピソードは有名ですが、彼が宇宙を静的なものと捉えて挿入した宇宙定数は、実は動的膨張の要因であったわけです。

 

2.宇宙の誕生から消滅までの5段階過程

  第一段階 (137億年前):原始時代

   ビッグバンのすぐあとの星がまだ形成されていない時代。

 

 第二段階 (現在):星の輝く時代

   現在観測されている星や銀河が形成され活動している時代。

 

 第三段階 (1014 年後から1040 年後):縮退の時代

   星が輝きを失っていき(燃焼し尽くす)、コンパクト星、白色矮星、中性子星、ブラックホールといった星のみが残る時代。

 

 第四段階 (1040年後から10100年後):ブラックホールの時代

   白色矮星や中性子星やその他のすべての天体が、陽子の崩壊によって破壊され、ブラックホールのみが残る時代。

 

 第五段階 (10100年後以降):暗黒の時代

   ブラックホールも蒸発し、光子とレプトンのみが空間に残る時代。

 

3.多元的宇宙論:マルチバース

我々が全宇宙だと思っていたものは、物理法則も次元の数も異なる無数の「宇宙たち」の一つに過ぎないという説。この説によって宇宙の誕生から終焉までの多くの疑問が解決されるといわれています。

 

⦿ 泡宇宙(Bubble Universes)

我々の世界は、永遠に膨張する空間に無数ののようなものが生まれ続ける構造をしており、さらに餅を焼いたときにこぶがふくらむように「親宇宙」「子宇宙」「孫宇宙」が生じる。性質の異なる泡の一つひとつが、我々が宇宙と呼んでいるものなのである。つまり、我々が全宇宙と思っていたものは、この無数の「泡宇宙」の中のたった一つに過ぎない。

そして無のゆらぎからわれわれ宇宙が誕生した時に、同時に多くの宇宙が多重発生していたという説もあります。

 

 

 ⦿ 並行宇宙(Parallel Universes)

超弦理論(超ひも理論)という多次元理論からは膜宇宙(ブレーンワールド)という考えも導き出されている。われわれの4次元の空間を膜(ブレーン)のようなものだと考えており、別の膜(ブレーン)が別の次元(バルク)に浮かんでいるというもの。

 

 

 

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『宇宙』全5回(完)

 

 

(担当 P)

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