『宇宙』 第4回 星や銀河の誕生と終焉 | 奈良の鹿たち

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『宇宙』 第4回

「星や銀河の誕生と終焉」

 

1.星の誕生

宇宙空間には星間物質や塵やガスが漂っていて、そのほとんどは水素ヘリウムで、他に炭素や酸素などの重い元素が塵として混じっています。星間物質は背景の星の光を遮ってしまって暗く見えるので暗黒星雲とも呼ばれ星の原料になります。このような星生成領域では超新星爆発の衝撃波などで星間物質の密度にムラが出来ます。 

 

暗黒星雲では重力が強くなり、さらに周りの物質を次々と降着させてどんどん成長していきます。 1㎤あたり約1000個以上のガスの分子が存在しているところを分子雲と呼び、高密度のため重力で収縮して球状のプラズマのようになります。 そして、そのガスは回転しながら集まり原始惑星系円盤をつくります。  

 

この分子雲の温度が10~30K(-263~-243℃)程度にまで下がると、ガスの圧力よりも重力が勝るようになって分子雲は収縮を始めます。この重力収縮の段階で重力エネルギーの一部は赤外線で放出され、残りは収縮が加速する物体の中心で温度を上昇させます。100万年程度の時を経て、原始(惑星系)円盤の中心ではコアとなる原始星と呼ばれる星の赤ちゃんが出来ます。この段階ではまだ重力エネルギー(収縮による温度上昇)で光り輝いています。分子雲の特徴として、そこから勢いよく垂直方向に噴き出すガスの流れ双極分子流(ジェット)があります。速いもので秒速100kmにも達し、数光年の距離にわたって飛んでいきます。

      

 

原始星が輝き始めて1000万年ほど経つと、密度と温度が十分に上昇し、中心温度が1000万度に達すると水素の原子核がヘリウムの原子核に転換する核融合反応が始まります。そうすることで原始星は、きらきらと自ら輝く恒星として一人前の星に成長していくのです。やがて収集も止まり、核融合反応で出来るエネルギーと表面から出ていくエネルギーが平衡状態になります。

この段階の星をヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)上の主系列星といいます。太陽くらいの質量の星の場合は、原始星の誕生から数千万年で一人前の星と惑星系が出来上がると考えられています。安定しているこの主系列星の状態は、中心部にたまるヘリウムが全体の質量の10%になるまで、恒星の寿命の90%程度の時間続きます。宇宙を観てみるとの主系列星の構成が圧倒的に多いのはこのためです。

 

2.星の終焉

星は核融合反応を繰り返し、次第に重元素を合成していきます。しかし、まで合成されると、この反応はこれ以上進みません。は元素の中でもっとも安定しているからです。そうなると、星は燃えるものがなくなって冷え始めます。 もともと星の大きさを決めているのは、内側へ押し込もうとする重力と、外側へ押し出す核融合からの熱放射のつり合いでした。核融合反応で自らの質量をエネルギーに変えていくと、星はどんどん軽くなるために重力が弱くなっていきます。そのため、押し出す力の方が大きくなって星は巨大化して赤色巨星になっていきます。

 <星の質量が太陽の8倍以下の場合>

主系列星の段階の後に赤色巨星の段階を経て、一部は惑星状星雲から白色矮星となり次第に冷却して一生を終えます。

恒星が進化した赤色巨星は、外側が大きく膨らんでいます。膨らんだ外層部分は星の中心から遠いため、重力があまり強くなく、外層部分にある水素の豊富なガスは、重力を振り切って宇宙空間に流れ出していきます。太陽のおよそ8倍以下の軽い星の場合には、このようにして外側のガスが流れ出し続けて、最後には星の中心がむき出しになります。ガスがなくなってしまうと核融合反応を続けることが出来なくなり、恒星はこの段階で死を迎え、重力で縮んでいき青白く輝く高温の星になります。

流れ出したガスは惑星状星雲になり、中心星が放つ紫外線によって電離され、以前は星の外層だった水素やヘリウム、また酸素や窒素などが元素特有の波長で光を放ちます。

5万度を超える高温の中心核は白色矮星になり、それは核融合反応でつくられたヘリウムや炭素、酸素などの原子核からできています。いったん白色矮星になってしまうと核融合反応を起こすことが出来ないので、炭素や酸素の燃えカスだけとなり長い年月をかけてゆっくりと冷えていきます。さらに電子の縮退圧で小さくなっていき次第に暗くなっていきます。白色矮星は非常に密度の高い天体であり、1㎤あたりの重さが10t以上にもなります。

おなじみのシリウス白色矮星のひとつです。

                              

<星の質量が太陽の8倍以上の場合>

赤色巨星に進化した後も、中心部では核融合反応によって水素→ヘリウム→炭素・窒素と次々と重い元素が出来ます。核融合で熱圧力が高まり、温度が高くなり、さらに核融合反応が加速されるというサイクルです。最終的にの中心核がつくられます。の原子核ではこれ以上の核融合反応は起こらず、星の中心部は熱源を失って星を押し潰そうとする重力収縮をおこします。収縮が進むと鉄の陽子と電子が結合して中性子に変化し、やがてほとんど中性子だけの核となる。この段階では、重力収縮によって核に降着する物質は激しく跳ね返されて衝撃波が発生し、重力崩壊によって一気に吹き飛ばされます。これが超新星爆発です。

爆発の後には中性子星として中性子からなる核が残される。中には中性子星が光やX線を激しく放出するパルサーとなることもある。

 

 

超新星爆発は、太陽の一生分のエネルギーをたった数秒で放出し、その速度は数万km/秒という凄まじい爆発です。超新星爆発によって、宇宙はかく乱され銀河や星々に致命的な破壊をもたらします。しかし一方、超新星爆発がなければ、新しい星は生まれず、われわれ生命は存在していません。高温高圧の超新星爆発の現象が、様々な元素を生み出すのです。超新星元素合成といってケイ素、硫黄、塩素、アルゴン、ナトリウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、そして、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルがつくられます。これらが、爆発によって宇宙にバラまかれ、再び星の生成時に集積されるのです。

アメリカの天文学者カールセーガン Carl Edward Saganは,「私たちは星屑で出来ている」と言いました。

 

約260万年前に起こったとされる超新星爆発の影響による大型海洋生物の大量絶滅について、カンザス大学の研究チームが新しい研究結果を発表した。

地球から約150光年離れたところで超新星爆発が起こり、空には奇妙な明るい光が降り注ぎ、その輝きは数週間もしくは数ヶ月も続いた。それから数百年間、この爆発による宇宙エネルギーの波が地球に到達し、大気を揺るがして気候変動を引き起こし、大きさのサメのメガトロドンなど、大型の海洋生物の大量絶滅を誘発した。

この超新星爆発が引き起こしたエネルギー波によって、世界中で鉄の同位体「鉄60(60Fe)」が海底に層状に広がり、「ミューオン」と呼ばれる質量が重く(電子の200倍)、透過力の強い宇宙線が地球に降って、特に大型動物に癌や突然変異を起こした。研究結果によると、これにより巨大海洋生物の36%が失われたとしている。絶滅は浅い沿岸域に集中しており、この海域では大きな生物ほどミューオンから放射線量を受けやすかったようだ。

 

地球から550光年先にあるオリオン座のベテルギウス Betelgeuseは、赤色巨星で太陽系に置くと木星の軌道までになり、質量は太陽の10~20倍にもなる超巨星だ。

この星が今後10万年以内に、超新星爆発を起こすと考えられている。

                                     

<星の質量が太陽の30倍以上の場合>

赤色巨星になった後、事故重力が中性子の核の縮退圧を凌駕するため(重力の強さで中性子が潰れ始める)、超新星爆発の後も核が収縮(重力崩壊)を続ける。この段階になると、星の収縮を押し留めるものは何もないため永久に縮み続ける。こうして小さく収縮した天体がブラックホールである。

 

3.銀河の誕生

現在ところ、銀河の誕生には2つの説がある。 

①ビッグバンで宇宙空間にまき散らされた元素を素材として、多くの星雲がつくられました。 重力によって、これら星雲の濃い部分に中心となる恒星が出現しました。最初は比較的少数の恒星からなる原始銀河が構成されたと思われます。原始銀河どうしの重力作用からさらに大きな銀河へと成長しました。まず銀河が生まれて、その中で密度の高いところで銀河群銀河団が出来たというボトムアップ説です。

②まず大規模構造となる巨大なガスの塊が出来、銀河団ー銀河群ー銀河と順に小さい構造が生まれたというトップダウン説である。

銀河の誕生には、宇宙構成の95%であるダークマター・ダークエネルギーがカギを握っていると考えられています。ダークマター・ダークエネルギーの正体は全く分かっていませんが、ダークマターは銀河の運動からも確実に存在していることは分かっている。そしてダークマターは銀河がその形・運動を保っているうえで重要な役割を果たしているらしいのです。

(ダークマター・ダークエネルギーについては、第1回「星をつくっているもの」をご覧ください)

 

4.銀河どうしの衝突

銀河どうしの衝突合体は、銀河の進化において比較的頻繁に発生しています。銀河の大きさに比べて、銀河銀河の間の距離がそれほど離れていないからです。

衝突には速度、大きさ、角度で、はぎ取り、飲み込み、通り抜け、合体などが生じる。 銀河は衝突によって爆発的星形成スターバースト)がおこることがあります。 銀河の衝突で元の銀河は消滅しても、あとに急激に銀河が圧縮され短時間でたくさんの大質量の星や銀河が生まれます。

なお、この銀河の形態は衝突の一過程に過ぎず、形は変わっていきます。

 

われわれの天の川銀河アンドロメダ大銀河の場合、二つの銀河の大きさは約20万光年、距離は230万光年です。大きさに対して距離がたったの10倍しかないのです。

われわれの天の川銀河は20億年後には大マゼラン雲と、40億年後にはアンドロメダ銀河と衝突すると考えられていて、 その時にできる合体銀河の名前も用意されています。

天の川銀河ミルキーウエーとアンドロメダ銀河で「ミルコメダ銀河」。

      

 

   

 

 

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次回は  第5回 (最終回)「宇宙の膨張と多次元宇宙」

 

 

(担当 P)

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