『生物の変遷と進化』第23回
<2億年前>
(三畳紀)
「4回目の大量絶滅」
<大量絶滅>
この絶滅事件はパンゲア大陸が分裂を開始する直前の1万年以内という短期間で起こりました。
2億130万年前(±20万年)の三畳紀(Triassic トリアス紀)とジュラ紀(Jurassic)の境目にあたる「T-J境界」で大量絶滅が起きました。
まだ大西洋が開けていませんでしたが、三畳紀末にパンゲア大陸は中央(今の大西洋)の火山地域の活動が活発になり分裂し始めました。パンゲア大陸を分裂させて大西洋を形成する地殻変動における火山活動で、酸素濃度が30%から5%までに低下しました。その最盛期には「海洋無酸素事変(後述)」が発生していました。また大気中に放出された火山性ガスは降水に溶け込んで酸性雨として降り注ぎ、海洋表層の酸性化にも働きました。
三畳紀の大量絶滅は、ビッグファイブの中で3番目に大きな規模とされており、海域生物の属の43~58%、種の70~73%、陸上生物の種の70%が姿を消しました。そして、全ての生物種の76%が絶滅しました。
海ではコノドントとアンモナイト類の多くが絶滅し、腹足類、二枚貝、腕足類にも影響を与えました。コノドント(下図)は、0.2~1mm程度の大きさで、ウナギのような細長い体で歯を持った生き物です。
アンモナイトは実質的に三畳紀末の大量絶滅で姿を消しました。
魚竜(イクチオサウルス・ショニサウルス)などの海洋棲爬虫類も打撃を受けました。
また陸上の爬虫類や短弓類(下図)も大型動物を中心に多くの系統が絶えました。
陸上に君臨していたワニ類(下図)は、寒冷化の影響を受け絶滅しました。
ただ爬虫類では乾燥に強い繁殖様式を持つグループが生き残りました。短弓類やワニ類などの天敵から解放されたまだ小型の恐竜たちが、ジュラ紀から白亜紀にかけて大型化して大繁栄しました。
<大量絶滅の原因>
起きた原因はよくわかっていません。 それを知る手がかりは大陸の移動によって深く埋もれ、散逸してしまったからです。どの要因も、原因と結果の相関関係だったり、複合的に発生したりした可能性が高いのです。
一般的に考えられているのは、「火山噴火が主原因だ」ということです。
近年の研究では、「この時期に1度ではなく複数回(少なくとも、2億2000万年前と2億100万年前)の大量絶滅が起こっている」と言われています。 海水位の急激な変動と激しい火山活動があったことが分かっています。
別の研究では、「三畳紀の絶滅は1500万年の間に3回発生し、第1波は隕石の衝突による大量絶滅。 第2波は海洋無酸素状態での大量絶滅。 第3波は火山活動で大量絶滅が発生した」という説もあります。
原因1.大陸分裂➡火山噴火➡海洋無酸素事変
大量絶滅が起きた三畳紀末に活動したのが 「中央大西洋マグマ帯(CAMP) 」です。2億年前に起きた噴火活動は、ひとつに繋がっていた超大陸パンゲアを引き裂き、アフリカ、北アメリカ、南アメリカ、ユーラシアの4大陸に分割しました。その境目(今の大西洋)にあたるところで大規模な火山活動が起こったということです。
中央大西洋マグマ帯は、巨大火成岩岩石区(LIPs)にあり、広大な範囲に渡り火成岩が分布していました。中央大西洋マグマ分布域の地下深部から上昇してきた洪水玄武岩は、莫大な二酸化炭素CO2や二酸化硫黄SO2(亜硫酸ガス)およびエアロゾルを放出しました。60万年の間に4回に分けて噴出したともいわれています。
二酸化炭素は温室効果により地球を温暖化し、酸素濃度が30%から5%までに低下しました。
また、二酸化硫黄が成層圏に入ると、硫酸の粒子ができて太陽光を反射し、植物の光合成を妨げて地球を寒冷化させました。その最盛期には「海洋無酸素事変」(後述)が発生していました。
大気中に放出された火山性ガスは、降水に溶け込んで酸性雨として降り注ぎ海洋表層を酸性化しました。この海洋酸性化と温暖化による海水面上昇により、炭酸塩を骨格とするサンゴ礁が大打撃を受けたのです。
東北大学などの研究グループが、「T-J境界での大量絶滅の原因は火山活動(下図)であることが分かった」と発表しました。大量絶滅の時期の堆積岩には、炭化水素の一種で高温のマグマによってできるコロネンが多く含まれることが分かりました。つまり、三畳紀末に比較的低温だったマグマがその後、火山活動の変化で高温に変わったことを物語っています。 これが堆積岩に触れて大気中の二酸化炭素(炭酸ガス)濃度が上昇し、温暖化に向かったのでした。
原因2.海洋無酸素事変
「三畳紀の大規模火山活動は、大規模な火山噴火が気温の急激な変化を引き起こし、最終的に海洋の無酸素化から大量絶滅が導かれる」というシナリオです。実際に火山活動の最盛期に海洋深部の無酸素化が起こっており、この無酸素化と大量絶滅との関連性が濃厚となってきました。「海洋無酸素事変」が起きた年代の地層には、大量の植物プランクトンや陸生植物その他の生物の死骸が分解されないまま海底に堆積していることが特徴です。その堆積物が地殻変動で地下深くに埋まって大きな圧力がかかり、そこにシアノバクテリアや光合成硫黄細菌、その堆積物を餌にしているバクテリアなどの働きで、そういった地層がつくられます。その地層を「黒色頁岩層(こくしょくけつがんそう)(下図)」といい、それが特定の年代かつ広範囲にわたって見られる場所があることから、海洋無酸素事変の発生が見いだされました。
原因3.隕石の衝突
絶滅の原因を隕石の衝突と見る説もあります。
カナダのマニクアガン・クレーター(下図)は、2億1400万年前に直径5kmの小惑星が衝突して、直径100kmの多重リング構造ができたのではないかと考えられています。
大規模な火山の噴火が大量絶滅の主要な役割を果たしており、隕石の衝突はそこにとどめの一撃を加えたにすぎないという可能性も指摘されています。
原因4.カーニアン多雨事象
「火山活動の活発な時期に多雨の時代が訪れ、海洋での生物群の大量絶滅や陸上での恐竜の多様化といった生態系の変化が同時に引き起こされた」という仮説が提示されています。三畳紀という時代は全体として高温で乾燥した気候だったことが知られていますが、その中には200万年間にわたって降雨量が劇的に増加した雨の時代がありました。「カーニアン多雨事象」と呼ばれ、2億3400万年~2億3200万年前の間にわたる雨の時代でした。
「大規模な火山活動が起き地球が温暖化したことで、大気が水蒸気を多く含みやすくなり、雨が多く降るようになった。」というものです。陸上植物の変化と恐竜の爆発的な多様化や哺乳類の誕生も、カーニアン多雨事象の期間に起こったと考えられています。すなわちカーニアン多雨事象が、生物進化に何らかの影響を及ぼしたのではないかと推測されています。
<大量絶滅後>
大量絶滅の後には「大適応放散(だいてきおうほうさん)(大規模な変動の後、単一の祖先から多様な形質の子孫が広範囲に出現すること・進化の爆発)」という生物の多様性が増大することが過去何度も起こっていました。
三畳紀末の大量絶滅を乗り越えた恐竜(下図)が、ジュラ紀から白亜紀にかけて大型化して大繁栄しました。このころの恐竜は身体が小さかったこと、大型動物が絶滅して天敵から解放されたこと、寿命が短く成長が早かったことから個体数を素早く回復できました。
初期の哺乳類(下図)もT-J境界を生き延び、ゆっくりですが進化を続けていました。ただし昼間は恐竜の天下で、哺乳類は暗闇の中で虫を食べていたのかもしれません。
大量絶滅については、当ブログ『生物 大量絶絶滅』をご覧ください
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(担当B)
















