売れた気のつくづくしない三連勤を終えての単休。
年末年始の変則シフトももうすぐ終わりで、次の休みは久しぶりの連休だ。
とはいえ、何も予定がないので寝て過ごそうかと思っていた今日という日。
一昨日、柴又散策に行ってくれた子から突然、予定が空いたと連絡があって急遽予定ができた。
期待していなかったどころか、想定もしていなかった出来事で、多少驚いたけれど、ものすごく嬉しいびっくりなので、慌てながら準備した。

恋人たちの予感
老夫婦が馴れ初めを語るインタビュー。
出会った瞬間、結婚を決めて二週間後に本当に結婚し、50年経った今も仲の良い夫婦であると語る。

1977年シカゴ大学。
ハリーが恋人とキスをしているところに車でやってくるサリー。
熱々の二人の様子にうんざりし、クラクションを鳴らして急かしてハリーを車に乗せた。ハリーとサリーはニューヨークへ向かう車の同乗者。
これが二人の出会いだった。
ニューヨークでジャーナリズムの勉強をしようとしているサリーは希望を抱いているが、ハリーは“暗い”人間だ。
本を読む時も、途中で死んでは困るので結末から読むというハリーに対して、サリーは“ネアカ”だ。
そんなサリーに「死について考えるか?」と問うハリーに、サリーは「もちろん」と答えるが「たまに考えるんだろ?僕は日々考えている」と答えた。
「死を待ち暮らすだけの人生なの?」
サリーは呆れ果てていた。

途中『カサブランカ』のラストシーンについて意見を言い合いながら休憩で寄ったレストラン。
イングリッド・バーグマンがハンフリー・ボガートを置いて飛行機に乗ったのは酒場の主人だからと主張するサリーに「君はいいセックスを知らないんだ」と反論するハリー。それに腹を立てて「いいセックスなら山ほどしたわ」と大声で言い返すサリー。
注文の際も、二人は真逆。
「3番定食」とサラッと注文するハリーに対して、サリーは“ドレッシングは横に添えて”など細かく注文する。
食後の割り勘も細かく計算するサリーに、ハリーが「君はチャーミングだ」と言うと「恋人の親友を口説く気?」と言い放つサリー。
「チャーミングだと褒めると口説きか?」
言い合いながら、車に乗り込み「私たちはただの友達よ」と言うサリー。
「友だちになんかなれるもんか。セックスが邪魔をして男と女は友だちになれない」
「私にはセックス抜きの男友達がたくさんいるわ」とサリーが言っても、ハリーは「相手は君と寝たがってる」と取り合わない。
魅力がない相手でも男は寝たいと思い、女が拒否すればその時点で友情は壊れるというハリーに「ニューヨークで唯一の友だちが消えるわけね」とサリー。
そうして到着したニューヨーク。
サリーの車を降りて、ぎこちなく握手をする二人。
「いい人生を」とサリーが声をかけ「君もな」と答えてハリーが去っていく。

老夫婦のインタビュー。
高校時代に出会った二人は引越しで離れ離れになりながら、お互いに忘れずに想い続け34年後に偶然再会し、結婚した。

ハリーとサリーがニューヨークで別れてから5年後。
空港で恋人とキスをしているサリーの横をハリーが通りがかった。
ハリーは戻ってきて二人を見つめていたが、サリーの恋人ジョーの知り合いだったのだ。
サリーを紹介されても大した反応もせず、そそくさと去っていくハリーを「ニューヨークまで一緒にドライブした男だわ、人生で最悪の経験よ」とジョーに言い放つサリー。
そんなサリーが乗った飛行機。後ろの座席にはハリーがいた。
「シカゴ大?大学時代も美人だった?」とハリーが声をかけたため隣の席が譲られた。
ジョーが空港に見送りにきていたために“付き合って3週目”と言い当てるハリーは、熱々時代が過ぎてから嫌味を言われたくないために、最初から見送りには行かないと言う。
そんなハリーが結婚すると言ったために「楽天主義なのね」とサリーは笑い出した。
「恋をすればそうなるのさ」
飛行機を降りてから、サリーを夕食に誘うハリー。
「友だちとしてだよ」と言うハリーに「男と女は友だちにはなれないと言ったわ」と言い返すサリー。
「補足するよ、お互いに恋人がいれば別だ」
そう言いながらもハリーは、そうなった場合に恋人が持つ不満を語り出し、結局“友だちにはなれない”という結論に至ってしまう。
そのまま空港で別れる二人。

老夫婦のインタビュー。
40年前に結婚し、離婚。数回の離婚を繰り返して再会して再び結婚したという。

ハリーとサリーが空港で別れてさらに5年後。
女友達とランチを摂っているサリーが、友人たちにジョーと別れたことを伝えた。
「私も31歳よ。真剣に考えなきゃ」
「オバンだわ」「いいえ、オバンは36歳からよ」
友人たちは、次の恋をしろとサリーをけしかけた。
その頃ハリーは男友達とアメフト観戦をしながら離婚が決まったことを伝えていた。
不倫をしていた妻が、離婚を宣言して出て行ったのだ。
そんな二人が、本屋で再会した。
サリーの友人はハリーに興味を示すがサリーは「イヤな男よ」と言い続けた。
ハリーがサリーに声をかけ、お互いの近況を簡単に話したが、そのままレストランで語り合った。
「同棲しても結婚はしない。結婚すると男女関係は崩れセックスは消滅する」
サリーとジョーはその考え方が一致していたが、ある時サリーが友人の子どもが“家族が見えた”と言った言葉に泣いてしまったのだ。
家族をもつ気のないジョーとの意見は食い違い、別れたのだという。
それでもスッキリしているというサリーに「君はヘルシーだな」と言うハリー。
店を出てぶらぶらと歩きながら、初対面の時はお互いに“嫌な奴”だと思っていたことを話しながら、和やかに過ごした。
「いつか夕食でも」とサリーが誘うと「友だちとして?」と訊くハリー。
「そうよ」とサリーが答えると、ハリーは喜んだ。
「女友達か。魅力的だが寝たいと思わない最初の女性だ」
「うれしいわ、ハリー」

老夫婦のインタビュー。
誕生日も近く、同じ病院で生まれ、近所に住み、働くビルも同じだったのにすれ違い続けていたが、エレベーターで出会い、結婚したという。

ハリーとサリーはお互いの日常を過ごしながら、頻繁に電話で話すようになっていた。時折食事を共にしたり。
そんな日々の中、サリーにはデート相手ができたのだがハリーには言えずにいた。
「気を悪くするなんてないよ、デートは大賛成だ」
そう言うハリーだったが、ハリー自身は離婚の件からデートをする気分まで立ち直ってはいなかった。
それでもデートをしてみたハリーの話を、サリーも散々だったデートと話した。
ハリーの友人は、サリーとの関係を「幸せを恐れているのか?」とからかったが、ハリーは「素晴らしい経験だぜ。セックス抜きの女友達。新鮮だぜ」と答えた。
サリーには何でも話せると言い、男とは違う視点で語り合える新鮮さをハリーは友人に語った。
「彼女と寝る下心はないから、何でも本音で話せる」
そんなハリーとサリーがランチを摂りながら、セックスの後すぐに出て行ってしまうので“女を馬鹿にしている”とサリーに言い返され「あなたと恋人じゃなくて良かったわ」とも言われる。
ハリーが「女は満足してるさ」と自信満々に言い返すと、サリーは女がオルガスムスを演じる姿を実演した。
冬。
ニューイヤーパーティーに参加した二人。
「来年もお互いにシングルだったら付き合えよ」
そしてチークダンスを踊る時、二人の気持ちに揺らぎが生まれていた。
新年を迎え【オールド・ラング・サイン】が流れる中、周囲の人々がキスを交わす中、二人も“友だち”として軽くキスを交わすのだった。

老夫婦のインタビュー。
学生キャンプで知り合った二人の馴れ初め。

サリーは友人をハリーに、ハリーは友人をサリーに紹介するために食事会を開催したが、雰囲気はあまり良くないまま。
ところがお互いの友人同士が意気投合してしまうのだった。

老夫婦のインタビュー。
古い風習の村で決められた結婚をした二人だが、お互いに気に入り、結婚55年目を迎えたという。

食事会から4ヶ月後。
友人の結婚祝いを買いにきたハリーとサリーだったが、そこへ偶然ハリーの離婚した妻が新しい夫とやってきていた。
挨拶を交わすが、それまで明るく振舞っていたハリーは落ち込んでいくのだった。
そしてやってきた友人宅では、新居のテーブルで意見が合わずにいる様子だった。
我慢できなくなったハリーは自分の離婚の際の話を始めてしまう。
「たった8ドルの皿の所有権でいがみあう!この悪趣味なテーブルでも!!」
そう言って出て行ってしまったハリーを追うサリー。
そしてサリーにも「君はいつも涼しい顔で説教ばかりだ」などと当たってしまうハリーだったが、お互いに言い過ぎたことを認め、仲直りの抱擁をする。
そうして時が過ぎ、ハリーにもサリーにも恋人ができた。
しかしサリーはハリーの恋人のことを、ハリーはサリーの恋人のことを、お互いの友人に“合わない”と言い合うのだった。
そんなある夜。サリーからの電話でハリーはサリーの家に向かった。
ジョーが結婚すると聞いて、泣きくれるサリーを慰めるためだった。
サリーの家に着くと、サリーは泣きながら経緯を話し、自分を責めていたので、それをなだめるハリーだったが、いつしか二人は抱き合い、そしてセックスをしてしまうのだった。
幸福を感じるサリーに対して、友情の終わりを感じて呆然とするハリー。
朝になるとハリーは逃げ出すようにサリーの家を出ていくのだった。
その夜。夕食を共にしながら、お互いに“間違いだった”と言い合うサリーとハリーだったが、会話もなくぎこちなくなってしまう。

友人の結婚式。
3週間ぶりに再会したハリーとサリーは、言葉を交わすこともなく式に参加していた。
二次会のパーティーでようやくハリーがサリーに声をかけても素っ気ない対応。
感謝祭とクリスマスが迫っていた。
全てをなかったことにして“友だち”に戻ろうとするハリーに対して、なかったことにはできないというサリーは、言い争いになっていった。

クリスマス。
サリーは独りでもみの木を運んでいた。かつてハリーと運んだものだ。
ハリーは許しを請うためにサリーの家の電話にメッセージを残したが、サリーは無視し続けた。
ようやく電話に出たサリーだったが、冷たくハリーをあしらうばかり。
「大晦日は?お互いに相手がいなければ一緒にパーティーに行く約束だろ?」

「私はあなたの慰め係じゃないわ」
そして大晦日。
ハリーは独り家で大晦日の恒例番組を見ていた。
サリーはパーティーに参加していた。
「なんで来たのかしら?」
ハリーは独り夜の街を散歩していた。
いつしか、サリーと初めてニューヨークにやってきた場所に立っていた。
そしてハリーは走り出すのだった。
新年を迎える前にパーティーから帰ろうとしていたサリーの元へ駆けつけたハリー。
「やっとわかった。君を愛してる」
困惑するサリーに、ハリーは畳み掛けるように言う。
「サンドイッチの注文に1時間半。でも君を愛してる」
「一日の最後におしゃべりをしたいのは君だ。残る一生を誰かと過ごしたいと思ったら、早く始めるほうがいいだろ?」

「ほらね!あなたって人はいつも憎めなくなることを言うんだから!あなたなんか大嫌い。死ぬほど大嫌いよ」
そう言いながら、ハリーにキスをするサリー。
会場には【オールド・ラング・サイン】が流れていた。
「この歌の歌詞、理解できる?」

ハリーが訊くとサリーが答えた。
「古き友を忘れたことを思い出せってことよ。とにかく古い友だちの歌よ」

「初対面では反発しあった」とハリー。
「2度目は忘れてた」とサリー。
「3度目に会って友だちに」とハリー。
「それから、ずっと友だちで」とサリー。
ハリーとサリーがインタビューに答えている。
「それから3ヶ月で結婚」
出会いから12年と3ヶ月。二人は恋に落ち、結婚した。
二人のウエディングケーキは、チョコレートソースは“横に添え”られていた。
「ケーキがソースを吸うの。横に添えることが大切よ」
       

1989年の作品で、当時、銀座のみゆき座で鑑賞した。
“男と女の友情は成立するのか”をテーマにした作品として当時、話題になったものだけれど、当時は素直に“ひとつの恋愛の形”と感じていた。
しかし何度も観返していると、年々、印象が変わってくる。
いまは“夫婦”をテーマにしたものだと感じられる。
様々な老夫婦のインタビュー風映像が入るのはそのためだろう。
“友人”として最高な関係であるからこそ“夫婦”になれるのだというラストだ。
その存在は“横に添えて”あるような関係で、お互いの味を尊重しあえるもの。
全篇を通じて軽やかなテイストでありながら、ラストの幸福感がたまらない。
こんなに愛を込めて「大嫌い」と言われたら、それが「愛してる」という意味だとはっきりわかるだろう。
この映画で【オールド・ラング・サイン】を知った。
日本では【蛍の光】として有名な曲だけれど、スコットランドの準国歌として扱われているこの曲は、僕の中ですっかり大晦日の曲になった。
何度聞こうとも決して“閉店”の曲ではない(笑)
実際に歌詞を読むと、ハリーが言うように意味がわからない文言だ。
なので、僕はサリーの解釈を信じることにしている。

さて、急遽であたふたしたけれど、先延ばしになるであろうと思っていた約束が、実現する楽しみであまり眠れないまま朝を迎えて、河辺でレンタカーを借りて待ち合わせ場所へ向かった。
この子には昨年からいろんなところに同行してもらっていて、ありがたい限り。
本当に数年ぶりとなる女性と二人でのドライブも、嬉しい出来事だ。
そして向かうのは、1年半前に行って以来の“さわやか”さん。
前回と違うのは、念願の函南店にこだわったところ。
花束みたいな恋をした』のロケ地にもなった場所だけれど、僕個人としても何度も訪れた想い出のある場所だ。
その場所へ、女の子と二人で訪れることができるというだけで、興奮を抑えられず、運転中もずっと喋っていた。

そういえば世間は三連休の中日。東名高速がそれなりに渋滞していたこともあって、到着したのは14時少し前。
そして、4時間待ち・・・・・・

時間つぶしにどこかへ行けそうな場所も思いつかないまま、車の中でしゃべって時間をつぶしていたけれど、意外なほど話が途切れることもなく、僕としてはむしろ楽しい時間を過ごしていたら、すっかり日が暮れた頃に、順番がやってきた。

言わずもがなの【げんこつハンバーグ】を前に興奮も最高潮へ(笑)
昼も食べずにただただしゃべっていたので、一緒に行ってくれた子に悪いことをしたなぁと思いながら、初めてこの店のハンバーグを食べるこの子の笑顔に救われた。

この子は、可愛らしい美人さんなので、笑顔を見られると倖せな気分になる。
そのうえ、面白い感性の持ち主で、話題の一つ一つが楽しい。

大喰らいの僕はもちろん、おかわり(笑)
それも美味しそうに食べる僕を見て「本当に美味しそうに食べますよね~」と微笑まれて、ちょっと照れてしまった。
美味しいのだから、美味しそうな食べ方になるのだけれど、美味しいものをさらに感動的にしてくれているのは、一緒に食べてくれているこの子のお陰なんだけれど、もちろんそんなことは言えない。
すっかり夕食になってしまったので、夜のさわやかさんを撮れた(笑)
もうこの時点で、レンタカーの返却時間に間に合わないのは確実だったので、時間延長して翌朝返却の連絡をした。
帰りの車中も、ずっとしゃべりっぱなしで過ごす、楽しくて倖せな時間も、この子を送り終えたら終了となってしまう。その寂しさは大きいけれど、想定外のさわやかさん行きだったので、懸案のことを相談した。
要するに、給料日前の僕の現金が足りないのだ・・・。
こんな話を持ち出したら、楽しい一日が台無しだけれど、勇気を振り絞った。
突然そんなことを言われても、当然、この子も対応できるはずがないのはわかっていたけれど、この子の言葉で、d払いできるガソリンスタンドがあることに気づけた。
なるほど、この手なら僕の所持金でも間に合わせられそうだ!

もう少し余裕を持って、この日を迎えていたらこんな情けない相談を持ちかけなくても済んだのだろうけど、言ってしまったものは仕方ない。
こんなことを言ってしまった僕ではあるけれど、この子とまたどこかへ行けたらいいなぁと調子の良いことも感じてしまう(笑)
とにかく今日は、遅くまで付き合わせてしまったので、申し訳ない気持ちもありながら、付き合ってくれたことに感謝しかない。
こんな子、他にいないなぁと強く感じるので、この関係を大切にしたいとも思う。

とはいえ、もう誘う場所も浮かばない(笑)

そんなことを考えながら夜空を見上げたら、北斗七星まで見える星空だった。