はじめての方は 自分を知る① 人間の七つの要素 から順番にお読みください。
これまで7つの人間の要素について、特に心の三つの性質についてお話してきました。
こういった分類法は古くからあるもので、インド哲学の五つのコーシャや三つの体、仏教の五蘊(ごうん)、神智学の七本質についてご紹介しておきたいと思います。今回は用語の紹介を目的としているので、内容には簡単に触れるだけにとどめます。
用語がいろいろ出て来るので、難しいと思った方は読み飛ばしてもらっても大丈夫です!
インド哲学の分類法
まずはインド哲学の分類法から。インド哲学には六つの学派(サーンキヤ学派・ミーマンサー学派・ヴァイシェーシカ学派・ヴェーダーンタ学派・ヨーガ学派・ニヤーヤ学派)があり、そのうちヴェーダーンタ派やヨーガ派ので使っている分類法をご紹介します。
五つのコーシャ(パンチャ・コーシャ)
サンスクリット語で「パンチャ」は五つ、「コーシャ」とは鞘(さや)のことです。アートマンを中心とすると、それを囲むように人間の性質の層が展開しているのでこのように考えます。この五つの人間の要素を以下のように分類しています。
アンナマヤ・コーシャ(食物鞘)
「アンナ(食物)」の性質の鞘。人間の体はその人が食べたものによって出来ているので、物質的な体をこのように呼びます。
プラーナマヤ・コーシャ(生気鞘)
「プラーナ(生気)」の性質の鞘。呼吸などによって得られる生命エネルギーの層です。
マノーマヤ・コーシャ(意思鞘)
「マナス(心)」の性質の鞘。欲望や自意識などによって動く心の層をこのように呼びます。
ヴィジュニャーナマヤ・コーシャ(理知鞘)
「ブッディ(知識)」の性質の鞘。理性や知性などによって働く心の層です。
アーナンダマヤ・コーシャ(至福鞘)
「アーナンダ(至福)」は至福のことです。幸福感や喜びを感じる心の層です。
次に三つの体です。
三つの体
グロス・ボディ(粗大な体)
アンナマヤ・コーシャのこと。目に見える体。
サトル・ボディ(精妙体)
プラーナ・マヤコーシャ、マノーマヤ・コーシャとヴィジュニャーナマヤ・コーシャ。生命、欲望、知性などの目に見えない体や心。
コーザル・ボディ(原因体)
アーナンダマヤ・コーシャ。私たちは本質的にはコーザル・ボディ(至福状態)であり、サトルボディやグロスボディの働きによって至福が乱れるのでこのように呼ばれます。
次に仏教の分類法をご紹介します。
仏教の分類法
仏教の分類法は五蘊(ごうん)です。五蘊という言葉は聞いたことがないと思われるかもしれませんが、『般若心経』に出てくるのでおそらく耳にしたことはあるはずですね。冒頭の、
観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄
という部分。観自在菩薩が五蘊は空であると悟って苦しみから逃れたというところなので、五蘊が何かを知っておくことは『般若心経』を理解する上でも大切です。
五蘊(パンチャ・カンダ)
「パンチャ」は五つという意味でしたね。「カンダ」は集まりという意味で、五蘊とは五つの集まり、あるいは五つの塊というような意味です。つまり、人間を構成する五つの要素ですね。
色(しき)
物質のこと。人間で言えば肉体であり、その他のあらゆる物質も色と呼ばれます。
受(じゅ)
五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)を通して得られる物質の印象。
想(そう)
物質に対してのイメージ。
行(ぎょう)
意思や欲望など、行為に結びつく心の働き。
識(しき)
知識や理性的な心の働き。
少しわかりずらいので、りんごで例えます。
【色】物体としてのりんごの存在。
【受】赤い色や甘い匂い、ゴロッとした触り心地。
【想】美味しそうなりんごだなというイメージ
【行】イメージに対して食べたいと思う行動の欲求。
【識】これはスーパーで売られているもので、お金を払って買わなければ食べてはいけないという理性的な心の働き。
に分類することができます。
最後に現代のスピリチュアルなどでよく使われる神智学の七つの本質に触れておきます。
神智学の七本質
神智学とは、H・P・ブラヴァツキーが「トランス・ヒマラヤ密教の教え」として19世紀後半に西洋に紹介したもので、現在のスピリチュアル系の多くの考え方はここから派生しています。神智学では人間を七つに分類して考えます。
肉体
物質的な体
エーテル体
生命、プラーナのこと。
アストラル体
アストラルとは月のようなという意味。エーテル体の媒体。イメージの体。
カーマ・ルーパ
「カーマ」は欲望という意味で、心の欲望の働き。
マナス
思考などの心の働き。カーマ・ルーパ(欲望)に寄った低級マナスと、ブッディ(智慧)に寄った高級マナスに分けられる。
ブッディ
智慧(ちえ)、叡智。
アートマン
霊、人間と宇宙の本質。
さて、ざっと用語だけ並べてみましたが、全然頭に入らなかったよと思われる方も多いかもしれません。また、用語の解釈もいろいろあったりするので、これらの説明が全て正しいと言い切れないところはありますが、このような用語や考え方があるよーという感じだけつかんでいただければなと思います。
多くは古代インドの考え方でしたが、西洋にも、例えば『新訳聖書のテサロニケの手紙』の中でパウロは人間を体・心・霊の三つに分けて、
「全てのものを識別して、あらゆる悪いものから遠ざかりなさい。あなたの体、心、霊を完全に保ちなさい」
と言っています。
また、神智学(テオソフィ)という言葉は古代ギリシャの新プラトン主義の哲学者プロティノスなどが使っていた言葉で、プロティノスの著作などを読むとやはり同じような考え方が出てきます。
文化的、歴史的背景が違うので、これらのインド哲学や仏教、キリスト教や新プラトン主義などの分類法を全部同じ考え方だと言ってしまうのは無理がありますが、このように対象を分けて識別するというやり方は西洋や東洋問わず昔から使われていたんですね。
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