異邦人/アルベール・カミュ | なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

なおぱんだです。
北の国から、読んだ本、買った本、大好きな曲、そして日々思うことなどをポツリポツリと書いてます。

 

 

少ない給料で生活の面倒を見ることができないことを理由に、母親を遠い町の施設に入所させていた青年が、突然の訃報を受けた母親の葬儀に形ばかりの参列を済ませただけで自宅に戻り、その翌日ガールフレンドと喜劇映画を観て海水浴を楽しみ、友人と遊び回った後、ふとしたきっかけで友人に付きまとっていた男を射殺してしまう。青年は逮捕されて裁判を受けるが、殺人を犯した理由が「太陽のせい」であるとし、母親の死に対して冷淡で友人たちと遊び歩くその行動に強い批判を浴びて死刑宣告を受ける。青年は監獄の中で司祭の訪問を拒否し、自らの罪を問い続けながら近づく死を受け入れていく。

 

ノーベル賞作家の文壇デビュー作です。人間が抱える不条理という観念に彩られた作風が広く受け入れられ、著者の代表作の一つとされている作品です。これまでに数回読み直してきた作品ですが、その都度新鮮な発見があって初めて読むような感覚に囚われます。北アフリカの灼熱の大地を舞台にした作品で、殺人を犯した青年の行動を糾弾する裁判の中で、検察官から舌鋒鋭く青年の非常識で理不尽な行動が暴露されていきます。最終的に冷血な殺人犯として死刑判決が下されますが、青年はただ日々を懸命に生きているだけであり、殺人の動機についても意味を必要としない自然の行為に過ぎません。そんな社会全体と個人としての青年の行動の乖離が、現代にも通じる自由と身勝手さの境界のあいまいさを提議しているようで、そこが時代を超えて広く受け入れられている理由なのかなと感じました。