＜かぐやの転生＞
広い宇宙、ダークマターの中でひとつのカプセルに入って
ゆりかごのように揺られている輝く丸い玉。
千年前に、かぐや姫と呼ばれた魂です。
かぐやは今まで６回転生しそして今また７回目に産まれ変わろうとしていました。
受け入れてくれる魂を探す長い長い旅です。
あ、見つけた。
あの夫婦のところに行こう。女の子を産んだ後、何回も流れてしまった命に
たくさん涙するあの夫婦のところへ。
神様のところで、千年前のことをとても反省したかぐやは、今度こそ、やり残したことを
キチンとおこなって、神様にちゃんと報告しよう。。。
そして、その夫婦は１０年振りに女の子を授かります。
その子は歩き始める直前に「ちー」と教えるようになり
なんと１歳になる前にオムツが取れてしまいました。
もしや。。と思った母親は絵本を与え、読んで聞かせます。
２歳になる頃には字を覚えてしまいました。母親はびっくりします。
保育園に行き、いろんな病気をもらってきては寝込んだ弱かったかぐやも
小学校に行くようになると、めきめきと体が丈夫になります。
毎日、友達と朝早く学校に行き、帰りは真っ暗になるまで遊んで帰る。
そんなかぐやを夫婦も、心配でもあり可愛くてしかたありませんでした。
学校の先生に薦められて、かぐやはある日ＩＱテストを受けます。
先生は今まで見たことのない数字にびっくりして夫婦に話します。
これからどうしますか？
なんとなく予感のあった夫婦は、このまま手元で普通の子に育てますと話します。
そうして、自分の事は何も知らされずに、夫婦に守られてかぐやは
自分の好きな遊びや月の秘密を楽しみ成長していったのでした。
でも、かぐやは誰にも言わずに黙っていることがひとつだけありました。
産まれた瞬間を覚えていたことでした。
ダークマターのゆりかごに抱かれ、宇宙を旅していた輝く小さな玉は
産まれた瞬間を目に焼き付けた代わりに、それまでの記憶をなくします。
神様に誓ったことも、忘れていました。
やがて大人になったかぐやは、父との悲しい別れと、そして愛した人との別れを胸に
母と小さな子供と３人手を繋ぎ、波瀾万丈の世界へ飛び込みます。
その中で、沢山の沢山の闇を見ます。
そして、その闇の中に光る小さな玉がある事を知るのです。
その玉の正体は、かつてダークマターに揺られていた自分の「心」だったのでした。
そうだ、私の魂。。心はいにしえの時代から存在していた、とても古いものなのだ。
その度、神様に誓ったことを忘れ、何度も反省しては産まれ変わったのだ。
おぼろげながら、そんなことを思ったかぐやは、もう２度と苦しい思いの世界に
転生しないように、何か人の為になることをしよう。良い事をしよう。
ふとそう思います。
人の為？色んな事があるけれど、、、
毎日の生活の中で、それはなにか答えが見つからぬままやがて母親が倒れます。
母親の闘病を見るうちに、やっとかぐやは気付くのでした。
人の為になるには、まずは家族が幸せでなくちゃいけないんだ。
その幸せは健康とかお金持ちとかじゃなくて、、、心の幸せのことなんだ。
母はこんなに苦しいのに、きっと私が病院から家に帰ると
病院のベッドで涙を流し続けているはずなのに
私の前では、いや、誰の前でも何も言わない。
私を気遣って、笑顔で、ただ笑顔で
自分の命が終わる日へ向かって、ただただ生きているのだ。
「無」になることへ。悩むのはまだ執着があるからなのだ。
私がこの人の子供に産まれたかったのは、これを学びたかったのだ。
それから１０年、かぐやは今日も普通に笑い悲しみ怒り、そしてそれを楽しんでいます。
報われないことの方が多いけれど、裏切られることが多いけれど
これに囚われない心を育てることを学びにきたんだな。
悲しくなると、怒りが増すと、それを思って堪えます。
今日も、喜怒哀楽を楽しみながら、かぐやは、縁の下の力持ちとして生きていくのです。
そう言えば、ＩＱは？
そう、かぐやは大人になったら、ただの普通の人になったのでした（笑）
だからお話には続きがあります。
千年前に親を看取るという神様との約束は果たしましたが、
愛する人と添い遂げるという約束は忘れてしまっていたのです。
母のように生き、「人生」を全うしたかぐやは、
またダークマターのゆりかごに揺られ、千年の時を待つのです。
次はどの地球に行くのでしょうか。
輝く小さな玉はまた、宇宙の旅を繰り返すのです。
おしまい（笑）
これはまだブログを始める前、今から数年前に書き散らかしたショートショートです。
ふと思い出して、ＰＣの奥底から蔵出しして加筆してみました。
こんなのがいくつか眠っています。
オモシロイと思っていただけたら嬉しいです。
また気が向いたら、蔵出しします（笑）いや、しない（笑）
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