しかしかなり威圧的に、
「おれこいつと話あるから悪いけど。」
とヒデくんに言った。
「二人だけで話したいんだ。」
「車の中で話そうか?」
カナ「うん。わかった。」
オレ「行こう。」
カナ「ヒデくんごめんね。ちょっと待ってて。」
本当に腹がたった。
ヒデくんなんかどうでもいいんだよ。
気なんか使ってふざけるな。
呼んだカナもカナだが、のこのこ来たヒデくんもヒデくんだ。
状況を知らされてなかったのかもしれない。
きっとそうだろう。知ってて来てたらただの能無しだ。
でも、知らされていても来るべきじゃなかった。
もちろんヒデくんには罪はない。運が悪かっただけだ。
二人は車に乗った。
エンジンは切ったまま。
道路が見える。その向こうはコンクリートの壁。グレーの壁が見える。
音楽もかかっていなかった。
懐かしいはずのその空間が重たい緊張感に包まれていた。
まず謝った。
オレ「ごめん。」
カナ「ううん。謝んないで。」
オレ「いや本当自分勝手でごめんね。」
カナ「話って何。」
オレ「うん、いろいろ考えたんだけど・・・、」
「・・・・・・・。」
「ふー、やっぱり切りたくない。
切れない。俺には必要だ。
悪い事ばかりしてきた、悲しませるような事ばかり。
なんども突き放した。
その度に都合の良いことを言って謝って来た。
そしてまた悲しませていた。
でも今回を最後にしたい。
君を誰よりも大事にしたいし、大事だと思っている。
カナを愛しているし、誰よりもいとおしい。」
カナ「ありがとう。」
オレ「だからやっていきたいんんだ。遅いかな。」
「いまさらだけど付き合って欲しい。」
でももちろん遅かった。わかっていたけど遅すぎた。
カナ「もう戻れない。無理だよ。
選ばないって決めたから。
それにさんざん悲しんで来た。
それはないことになんて出来ない。
嬉しいけど答える事は出来ない。
ごめんね。
もうカナには無理なの。」
オレ「・・・・・・。」
泣いていた。溢れる涙が止まらない。
全てが終わった。予想していたけれど
やはり現実になると耐える事が出来ない。
「そうか、そうだよね。
わかった。わかった。
ごめんね、ごめんね。」
オレは謝って泣いてばかりだった。
「もう二度と会わない。連絡もしないだろう。」
ウソにならないように自分に言い聞かせていたりもした。
「これで終わりだね。さよなら。
ありがとう。
カナ本当にありがとうね。
いままでありがとう。
これからもずっと忘れないから。」
彼女は何も言わなかった。
ただ鼻をすすっている音だけが聞こえて来た。
顔を見る事が出来ない。
しばらくすると、
小さい鳴き声で、「じゃあね。」
とだけ言って車から降りて行った。
店に入る階段を上って行く姿を目で追って、
見えなくなった瞬間、
たくさんの涙と嗚咽と大きな声で目一杯泣き叫んだ。
死んでもいい。死にたい。
カナがいないのならばそんな人生意味がない。
死んでしまいたい。死んでしまいたい。
グレーのコンクリートの壁が目に入った。
そのまま突っ込んで死にたい。
エンジンをかけた。
反対車線の壁に突っ込む。
車道に飛び出した瞬間に横から車が突っ込んでくるかもしれない。
パーキングからドライブへ。
サイドブレーキを解除。
「カナありがとう。」
アクセルを全開に踏み込んだ。
車道に出る。
車は来なかった。
そのまま踏み続ける。
壁が近づいてくる。
反対車線に出たとき、
ブレーキを踏んでいた。
情けない。何一つ自分で決めた事を守れない。
情けない自分の弱さ。
死ぬ事も出来ない。
悲しませる事だけしか出来ない。
また涙があふれてきて泣いていた。
今度は自分の情けなさに対する涙だった。
ただの泣き虫だ。
そんな記憶が蘇った。
後味が悪かった。
その後しばらくして知ったのだが、
ヒデくんは戻って来たカナがファミレスで
周りを気にせず大泣きしていてびっくりしたらしい。
でもそんな話を聞いたとき、哀しいけれど嬉しかった。
彼女の中に確かに僕がいたんだとわかったから。