はむかって、断固として、貫かれる無垢について、など。 | 奏鳴する向こうに。

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18の頃から集めたクラシックのCDを、それに合わせた絵や本とともに聴いていく、記録。と、イッカピ絵本。

今日のイッカピ

背中にミカヅキ傷のミッカはイッカピのツノに風船をつけて青い空を推し測る。

雷鳴がこの空のどこかにあるなら、きっと、「イミはまだなくていいよ」って言う人だって、いるはず。
イッカピを膝に置いて、素晴らしいまだ未意味な世界。
つづく(ごうごうと続きます)



フレデリック ロデオンの集成。箱のタイトルに「Le Flamboyant」(華麗なる)とあるが、ここはその語の語源に寄せて「火のような」と私はとりたい。シューマンとフォーレの室内楽曲を弾く火のようなチェロとして彼を知ったから。

今日はパイヤールとのヴィヴァルディを聴いた。

音が立っている。フランス系の人のチェロはなんでこんな良いのか。筆幅を比較的狭く、かつ彫り深く線を描く。


エドナ シュテルン(「スターン」よりドイツ語の「星」の響きが好きなのでこちらでお呼びするがご本人の発音はどちらに近いのか知りたい)。そのバッハのパルティータ第6番ホ短調。

まず曲が美しい。チェンバロよりこれは私は絶対ピアノで聴きたい。フォルテピアノならさらに美しく響くと思うがその例は知らない。ところがこのシュテルンは、ピアノといっても古い楽器ではないだろうか、まさに求めていた響きである。

積み重なってもすべてよく「見える」音。永遠に聴いていられる音である。

タイトルの「Me-su-bach」とはエドナ本人による英語ライナーを解読すると、ヘブライ語の「こみいった」を意味する語が、英語のme、イタリア語のsu(=英語の前置詞on)、そしてまさにBachに分けられることから、このアルバムはバッハに関する自分の個人的アプローチであるという旨を表した、一種の言葉遊びらしい。超訳して「バッハ上の私のアリア」でどうだろうか。

しかしここにあるのは紛れもないバッハだと私には感じられる。すなわち、尽きることのない、孤独で澄明なエナジーの流れ。


ニコレとホリガーによるCPEバッハ録音を2枚組としたセット。

今日はニコレとジンマン指揮ニーダーランド室内管弦楽団で協奏曲イ短調を聴いたが、鮮烈な音に圧倒された。ニコレのフルートはなんでこんなに心の裏側まで届くのか。



ハイドンのピアノ三重奏曲集成。初期の曲はヤープ シュレーダー他によるもので、ハープシコードとピリオド弦による。後期のものは現代楽器のトリオ フォントネが担当。

今日は初期の2曲。



フリードリヒ グルダによるモーツァルトのソナタ、そのグルダ自身によるいわば自どり録音がテープからCD化されて初めて出てきた時、「何曲かは手の施しようがなかった」とされて欠けていた。

ところがその後、今日聴いたK.570を含む数曲が補完発売されて、結果的にグルダが常に弾こうとしなかった第7番を除くすべてのソナタが揃う形となった。

今ではそれがまとめられている。

手持ちは当初出た国内盤で、リコ グルダによる感銘深いライナーが邦訳されていた。

もちろん条件の整った録音ではないわけだが、音圧が常に仮借なく高く、存分に思うところをぶつけてくるグルダの音の礫を全身に受ける感覚は比類がない体験である。


このモーツァルトには、華奢で貴族的なお飾りのイメージはどこにもない。どよめくような無垢、断固として反抗的に選び取られた無垢、傷つきやすいことを自分で知っていて、硬質化した肉体で途方もないものと戦う無垢である。


グルダが自分とモーツァルトのためだけに、瑕疵も遠慮もなく弾きまくっている同室に、隠れて聴いている気分。特に最初にリコ判断で出されたものは絶品と思う。



ベートーヴェン初期の息吹を聴く喜び。

ケーゲル指揮ドレスデンフィルのベートーヴェン第8番。



パガニーニ録音集成。パガニーニは一部の作品が異様に有名だが、室内楽がたくさんあって、無限に聴いていられる素晴らしさがある。

今日はアッカルドとゴネッラによるヴァイオリンとファゴットのためのデュオ。素敵すぎる。


ローラン カバッソのシューベルト、ソナタイ短調(第4番)。

小刻みに震える時間のもろさ。


ファイン アーツ四重奏団他によるメンデルスゾーン初期の弦楽五重奏曲イ長調作品18。

差し替えられた楽章まで入っている。アメリカ、シカゴのベテラン四重奏団のようだが、冴えた動きと艶を消した渋い音色が素晴らしい。


マルクス ボシュとカペラ アクィレイアによるシューマン交響曲全集よりハ長調作品61と序曲「ゲノヴェーヴァ」。

とりわけ序曲の陰影深さ、揺らめく火の雰囲気。灰色と廃墟のジャケットもぞくぞくさせる。



バレンボイムが2007年にミラノ、スカラ座で行ったライヴ録音より、リストによるヴェルディのパラフレーズ3曲。

DGやEMIでの録音より音が冴えていて、いつもの単色・力づくといった感じはない。それまでの録音のせいだったのか、自身の進展の賜物なのか分からないが、低音からピアニッシモまで響きの奥行き、音の色彩感が素晴らしい。力感がありながらそこはかとなくポッカリと空いた虚しさも感じさせるのは、本人の意図せざることかもしれないが私の耳には昔から一貫している。昔はそこが苦手だったが、この頃非常に美しいと感じるようになった。


マルケヴィチ指揮USSR国立管弦楽団による1963年のワーグナーより、序曲「タンホイザー」、「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と「愛の死」、そして「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲。

マルケヴィチの様々な録音をこれでもかと33枚詰め込んだ素晴らしいVENIASレーベルの箱。

ひたひたと押し寄せる硬い抒情が素晴らしい。


Marylene Dosseによる貴重なグラナドス全集。