土曜日、6時に目が覚める。
朝ヨガ、15分。
軽井沢で高校時代の親友の結婚式がある。
参列したあと、夕方に東京を出る夫と新幹線のなかで合流し、
上山田温泉で両親と夕食、それから実家で一泊。
翌日、お墓参りなどをしてから東京に戻る、というのが週末のスケジュールである。
10時半すぎにいえを出る。
新幹線はいつも指定席をとっている。
いつのまにやらインターネット割引のようなものができていて、
20%オフでチケットを予約することができた。
どうやら割引該当車両、のようなものがあるようで、
私が持っているチケットの号車は満席。
しかしそれ以外の車両などは結構空いているように見える。
自由席などはがらがらだ。
自由席と指定席がそこまで値段がかわらなく、
また世の中豊かになったせいか、自由席の需要はどんどん小さくなっているように思う。
むしろ自由席のほうが空いていたりするんだから。
これなら自由席にすればよかったなあ~、自分の席の状況を見てから、
自由席に移ろうかな。と思いながら、
とりあえず自分の席に向かう。
遅く予約したせいで、先頭車両の3人がけのシートの通路側である。
ここまでたどり着いた時点で、最後尾の自由席まで戻るのがメンドウになってしまった。
もうここでいいや!と思い、そのまま席に座ったものの
隣の席のカップルになんとな~く嫌な予感を感じてはいた。
そうしてその予感は大当たり!
私より少し若い?くらいの男性と、年齢不詳の女性であるところのそのカップルの会話の内容が
逐一耳に入ってくるのだ。
男性は自称弁護士(別に嘘ではないと思うけど)、女性はOLらしい。
二人はつい最近、付き合いはじめたものと思われる。
というのも、男性の趣味や特技や高校時代の部活とか仕事で出張が多いとか、
そういうことを女性は全然知らないで、「へえ~そうなんだあ~」と鼻にかかる声でいちいち感嘆する。
遠距離恋愛で月に1度も会えないようなカップルならともかく、
付き合って3ヶ月や半年も経てば知っているような内容も「へえ~そうなんだ~すごーい」である。
背は高いが小太りの男性の話す内容はいちいち少しばかり自慢が入っているし(おまけに使う必要が特にないノートパソコンとか取り出してるし)、
女性の長い髪が感嘆の声をあげるたびに私の腕や肩にかかるし、
隣に他人がいるのに微妙にいちゃいちゃしはじめるしで本当にやり場がない。
ああこのひとたち、大宮あたりで降りてくれないかな・・・と思うものの、どうやら行き先は軽井沢。
しかも私が以前、友だちたちと泊まったことがある旅館のようである。
それにしてもちょっと笑えたのが、女性が「私、新幹線乗ったことなーい」とか「飛行機もなーい」「旅行にいくのも久しぶりだし、旅館って、パジャマとか浴衣とか歯ブラシとかあるのかなあ」とか言っていることである。
本当か?口調や会話の内容は20代前半だが、どう見ても私とそんなに年齢が変わらなそうで、かつ見目麗しい女性が、そんなになにもかも経験がないのか?なにも知らないのか?
ああ私は友だちの結婚式までこころ穏やかに過ごしたいのに
その癇にさわる態度を頼むからやめてくれ。二人とも。
と思いながら結局軽井沢に到着。こんなことならi-podでも持ってくるんだった。
ともあれ気持ちを切り替えて。
友だちが挙式をおこなうホテルへタクシーで向かう。
駅からそんなに遠くはないが、思いのほか暑い軽井沢、汗だくになりたくない。
結構早いかな?と思ったのだけれども、
もう既に親族の方々らしきひとたちがたくさんいて、
ウエルカムボードのそばで友だちとご主人になるひとが写真撮影をしていた。
はじめて見るご主人、とてもまじめそうで優しそうなひとである。
友だちが私に気づき、早くも涙目になっている私を見て彼女も涙目に。
挙式も披露宴も、とてもよいものだった。
ほとんど親族だけの挙式で、あたたかく和やかな雰囲気。
友だちはとても美しく、ドレスがよく似合っていた。
ご主人は友だちとよく似た雰囲気で、
しきりに照れて大汗をかいていてちょっとかわいそうだったのだけれども
このひとなら友だちのことをきちんと愛し、受け止め、守り、
そうしてどんなことがあってもふたりで歩んでいける、
楽しみながら人生を送れるひとだなあということが伝わってきた。
とても素敵なひとを伴侶に選びあったふたり。
こころからうれしく思う。
友だちへの手紙、というかたちでおこなったスピーチは
緊張のあまり手だけでなく足まで震え、
しかも途中から予想どおり感極まり、涙どころか鼻水まで出てしまい、
きっとそれをばっちり写真にもビデオにも撮られているはずなのだけれども
友だちがとても喜んでくれたことがうれしかった。
司会の方が私のことを紹介するときに
「新婦が同じクラスになってはじめてナオさんを目にしたときに、
このひとと友だちになりたい、と思った方だそうです」といっていて、
実は私も同じことを思い、それを手紙に書いてもいたので
とてもびっくりした。
新郎の紹介、のところで
「新郎、Sさんのご趣味は料理と掃除で・・・」と紹介されるや、
会場からはどよめきが。
「一人暮らしが長いので、好きになってしまった」そうなのだが、
なんていいご主人なんだ!
友だちのお兄さんとも久しぶりにお会いした。
いまは仕事でドイツにいるというお兄さんは、
友だちと私が高校1年生のときに同じ高校の3年生で、生徒会長をされていた。
勉強ができて、当時花形だったバレーボール部のキャプテンで、
端正な顔立ちの生徒会長とくればもてないはずがなく、
少女漫画の登場人物のようにもてもての先輩だった。
友だちも自他共に認めるブラコンで、お兄さんが結婚するときには「しばらく力が抜けてしまった」なんていっていたっけ。
お兄さん以上に素敵な旦那さまと出会って結婚して、本当によかったね。
素敵なお式が終わり、
新幹線の時間にすこし間があったので
歩いて駅へ。
日中よりはだいぶ涼しくなっている。
時間どおり入線した新幹線の車両のなかで
夫が手を振っていた。
夫に、お式と友だちの様子を写真を見せながら報告する。
上田で乗り換えて、戸倉駅へ。
迎えにきてくれていた両親と、笹屋ホテルで中華料理を食べ、
ゆっくりとお風呂に入り、
帰宅途中に夜景がきれいだからと
姨捨山に立ち寄り(途中、狸が道を横切った。私だけ見逃す)、眼下にひろがる夜景を眺める。
千曲川と山のまわりが真っ暗に沈み、その両側にきらきらとした家々のあかりが続く。
とても美しい光景。
姨捨山の棚田はいまは秋の穂だそうだが、夜で街灯がないため見ることはできなかった。
いつか水がはった状態の棚田を夫に見せてあげたいと思う。
「田毎の月」といって、棚田のひとつひとつに月がうつって、それはそれは美しいのだ。
帰宅後、しばらく母と話す。
夫と父はうたたね。
長野の夜はさすがに寒く、
冷房も扇風機もいらない。
窓をあけていると寒いので閉めて寝る。
深夜、星がきれいだったので夫を起こし、
裏庭に出てしばらく星を眺める。
東京の空に星はない。
夫の田舎からの星はそんなに見ることができない。
またたく星をきれいや、きれいだね、といいながら眺める。
いい夜だ。
チャペルにて。
緑がきれい。
結婚、おめでとう!
