朝ヨガ、30分。
夫と朝食をとる。
午前中仕事をし、「パスタキッチン」でランチをしてから、
一度いえに戻る。
午後、初・病院へ。
代田橋、といういままで一度も降り立ったことのないところへ行く。
わが家から直線距離にすると5~6キロと結構近いのだが、
バスは途中までしか出ていないので電車で行く。
電車に乗っている時間じたいは乗り換えを含め10分もない。近いのはいいことだ。
すごく綺麗で豪華、高級ホテルみたい、とどこかに書いてあったのだけれども
そこまでか?というような印象のS病院。
綺麗は綺麗だし整えられているとは思うけど、「ホテルみたいにゴージャス」というのは言いすぎではないだろうか。
待合室で珈琲が無料で飲めるというサービスも、妊娠したいひと、あるいは妊婦に珈琲って・・・というようなことを思うのは私だけではないはずだ。
しかし広い待合室でたくさんある本を読んだり、パソコンが複数台あるのはとても便利に思う。
最もいいことは、産科と生殖医療科を完全に分離していること。
以前、聖路加で病気の治療をしていたときに、思いっきりにこにこしたお腹のおおきい奥さんといとおしそうに見つめる旦那さん・・・なんて図を何度も見ていて、それはやはりつらいことだったから。
もちろんどんな場所だろうと「結果」がすべてではある。
そうしてこの病院の「数々の結果」と「身近なひとの結果」を信じて、私はここにやってきた。多くのひとたちと同じように。
私はひとりで行ったのだけれども(事前の電話で、最初から男性は一緒ではなくていいですといわれたため)、
夫同伴で来ているひともちらほらいる。
とても混んでいる病院という噂だったが、完全予約制のせいかそこまで混んでいない。
「火曜日と木曜日の夕方が一番空いています」という事前予約電話で聞いた時間帯に予約をとったせいもあるだろう。
待つこと15分程度、診察室へ。
問診票と基礎体温票を見ながら、センセイ、
「どうしたいという希望はある?」
そうですね、年齢のこともありますので、すぐにでも子どもが欲しいです。まずはタイミングで、でも体外受精までを視野に入れてます。
と応えると、センセイはおもむろに、
「そうかー。Kさんの場合ね、人工授精したほうがいいと思う」とおっしゃる。
えええええ、いきなりですか。
最初はタイミング療法を行い、数ヶ月してだめなら人工、体外、とステップアップしていくものだとばかり思っていた私は、このいきなりの提案に相当慌てる。
どうしてですか?と尋ねると、
「どうしてかというとね、この生理周期。23日って、本当?間違えてないよね?下手したら40代の卵巣(子宮といわれたかも?)ですよ。それから子宮頸癌してるよね。子宮頸癌をしていると、場合によっては精子が入りにくい状態にまでカットされている可能性がある。あとは年齢。これからいろいろ検査してタイミングしてとなると5ヶ月くらいかかっちゃうのね。それから人工授精して、人工授精は5回までだから(5回以上しても成功率は低い)、その後に体外受精とかいうと、もう2年先になっちゃうでしょ?そうなるとね・・・」
というようなことを、図を示したりされながらおっしゃった。
そうですか。そうですか。
まず生理周期は確かにおかしいと自分でも思っている。
ただ正確には、ここ4ヶ月で突然おかしくなった、というか、それまでは27日周期(これは正常範囲)で着々、という状態だったのだが、「いざ子どもを」と思い始めた途端に狂いはじめ、短いときは23日、長いときは29日というばらばらになってしまった、という状態なのだ。
センセイ曰く、短い生理周期がすなわちイコール「老化」とは言い切れないのだけれども、老化の可能性が高い、らしい。
えええ。老化、ですか。
念のため「センセイ、あのー、若返るってことはありますか?」と聞くと、
「ないです!」ときっぱりといわれた。そうだよなあ。
本当に老化なのか、というのは、血液検査の結果を10日ほど待たないといけないのだけれども、
老化・・・これはかなりショッキングである。
一方、子宮頸癌の影響。これは仕方のないことだ。
癌になりたくてなったわけではないし、執刀医は「再発の懸念」と「今後の妊娠、出産」のぎりぎりのところで執刀されているはずで、そこを私がとやかくいうことはできない。
子宮頸癌になったときにもっとも恐れていたことで、もっとも悩んだことでもある。
ああ、やっぱり・・・と、しかし淋しくは思う。淋しく、そうして残念に。
しかしその後の内診の結果、この、子宮頸癌の執刀による影響、は「手術をしているかしていないかわからないくらいのカット」だということで、心配はほぼない、ということになった。ほっとする。
さらに最後の年齢。
これだってもはや、仕方のないことなのだ。
若くなりたくたってなれるわけがないのだから。
もうあと戻りはできなくて、だからいまの年齢で、これからなにをしたら最良なのか、をひとつひとつ、なるべく間違えずに、選択していくことが夫も私もたいせつだと思っている。
実際にセンセイのいっていることはひとつひとつとてもまともで
納得のできることなのだ。
しかし如何せん、全体的に、ショックなことだった。
自分は若いかも!大丈夫かも!といういわれなき自信をなぜか持っていて、それが見事に打ち砕かれたともいう。
36歳は36歳であり(下手したらおなかの中はもっと上かもしれなくて)、
そうしてその年齢なりのリスクを背負っているということだ。
ただし前向きに解釈すると、いま、このタイミングでそれがわかった、ということはまだ打ち手が用意されている、ということでもある。
その打ち手のひとつが、人工授精。
うーん。
ここでまたひとつ悩む。
いきなり、かあ。
視野には入れてはいたし、抵抗感はまったくない。
でも、いきなり、かあ。
いえで待つ夫に電話をする。
「どうやった?」と慌てていう夫に、
「そとで話したいから喫茶店で待ち合わせよう」とだけいって、
ときどき行く静かな喫茶店で待ち合わせる。
先に待っていた夫。
あのね、人工授精をしましょう、って。
と理由をいいながら説明をする。
おかしくなった生理周期。子宮頸癌。年齢。そういうことすべて。
ときどき相槌をうちながら黙ってきいていた夫。
まじで?いきなり??とかいうかなと思っていたのだが
「ええやん、そうしようや」という。
手段なんかどうでもええ、少しでも早く確実なほうがええやん、と、やはりどこまでも前向きな夫。
いまからすぐに病院にいこう、くらいな勢いの夫に、
いやえっと、病院には私だけが行けばよくって・・・と人工受精の手順などを説明する私。
ああこの前向きさと明るさにどれくらい助けられているだろう。
ありがとう、世の中には、どうして俺が病院にいかなあかんねん、ってひとが結構いるみたいだから、
こんなにいってくれるのはほんとうにうれしい。というと、
「俺そういうの全然わからへん。俺にとって俺はおとこだ、みたいなのはどうでもいい。そんな根拠のない自信はいらん。意味がわからん」と夫はいう。
「もしかしたら子どもが産めないからだだっていわれたのか、
それとも大逆転で、実は(妊娠していて)もうおなかにいますといわれたのか、
どっちかなんかなーと思ってた」とにこにこしながらいう夫。
ああなんて能天気な(後者のほうが)発言なんだろう!私の夫というひとは!!
なんだかとても明るい気持ちになる。救われる。
いつだってそうだ。夫の明るさ、前向きさ、やさしさは私にとっておおきな救いだ。
しばらく話をし、人工授精をすることにまとまる。
とはいえ私のなかではもうすこしタイミングをみたいという気持ちもあるので
時期はまだすこし悩むかもしれないのだけれども。
それにしても老化かあ~。ショクだなあ。
主婦友に早速、メールで報告。
とても的確でこころのこもった返信をもらう。いつもありがとう。
夜、ナオの好きなところで食べよう、といわれたのだが
いえでゆっくりご飯を食べたくていえごはんにする。
朝ごはん。
夫はさいごのホルモン鍋とごはん。
私はジャムバタートースト。
昼ごはん。
「パスタキッチン」にて。
晩ごはん。
青椒肉絲、ひきわり納豆、大根とまいたけの味噌汁。
夫は青椒肉絲丼にして食べていた。