虫に噛まれた大王 |   荒野に呼ばわる声

  荒野に呼ばわる声

      耳を澄ませば聞こえてくる
                 
                   南山 遥

 虫に噛まれた大王

 

 聖書は、どこを読んでも興味深いことが綴られている。信仰の書ではあるが、歴史の書でもある。

 

 新約聖書の「使徒行伝」という中にーー

 

 定められた日に、ヘロデ(アグリッパ)は王服をまとって王座にすわり、彼ら(民)に向かって演説をした。集まった人々は、「これは神の声だ、人の声ではない」と叫びつづけた。するとたちまち、主の使が彼を打った。神に栄光を帰することをしなかったからである。彼は虫に噛まれて息が絶えてしまった。

                 (第12章21節以下)

 

 最近どこかの国々で見た光景と重なる。また今後も見るであろう。いつもこうして「神」に祭り上げられた権力者は衰退し、滅びゆく。歴史から謙虚さということを学ばない人々は、これからも出てくるであろう。しかし、われらは恐れることは要らない。神の義と真と愛だけが明らかとなり、彼らは悪名だけを残して川のあぶくのように流されるであろう。

 

 神の義と愛とに敵する者を打つのに、大軍隊は要らない。ミサイルも要らない。われら人間が何かする必要もない。小さな虫で十分なのだ。聖書はそう語りかけている。  南山 遥