飼い犬に手を噛まれる |   荒野に呼ばわる声

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      耳を澄ませば聞こえてくる
                 
                   南山 遥

 飼い犬に手を噛まれる

 

 世界の歴史を見ると、よく、こういうことがあった。また、これからもあるだろう。

 犬の話ではない。国と国との話である。

 

 ある国が兵器の開発を一生懸命に行ない、軍備強化を進めていた。そして、その国を喜んで支援する国々もあった。敵とみなす国が同じだったからである。ところが、軍備強化を進めていた国が、ある時が来て、その支援国に嚙みつき、大変な致命傷を負わせた。

 

 それまで新兵器の発表のたびに、ご親切に、射程距離も発表された。敵とする国々は東の方角にあって、確かに同心円内にまるまる入っていた。敵と目されていた国々は、恐ろしいことだと思っていた。

 

 だが、よくよく見ると、ある国を支援している国々の首都も、しっかりとその同心円の中に納まっていたのだ。

 

 気前のいい、お人好しの人が、飼い犬に噛まれることがある。

 「自分は賢い」と思っている人でも、だ。

 

 国際政治と世界の歴史は、ときに、遠近法で見ると、真相が見えてくる。