「碁盤斬り」ざっくばらん | なのはな22のふたり言

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本・テレビ・映画の感想が多くなると思います。たまにフィギユアスケート。
ミステリーや時代劇、ビジネスドラマが好きです。

昨日、夫婦で映画館へ行った。

「碁盤斬り」は予告編を見た時は映像が暗くて、私の眼では全然見えないんじゃないかという気がして、DVDレンタルが出るまで待とうかとも思ったが、早く見たくなり彼を誘って出かけた。かなり前の席で列の真ん中を選べた。

面白かった。(白石和彌監督、加藤正人脚本)

 

確かに、蝋燭や行灯だけの夜のシーンは俳優さんの表情は見えなかったが、状況はわかるので顔が見えなくても、想像出来る。

 

お話は。

彦根藩の進物係だった柳田格之進(草彅剛)は碁敵の柴田兵庫(斎藤工)に陥れられ、冤罪で藩を追われた過去を持つ浪人。

江戸の長屋で娘・お絹(清原果耶)と貧しい暮らしをしている。彼は篆刻の内職、娘は仕立物の手間賃でぎりぎりの生活、家賃の支払いも滞っている。

女郎屋の女主人・お庚(小泉今日子)に篆刻の代金としては多めの一両を受け取った格之進が、立ち寄った碁会所で高慢な態度で賭け碁を打つ萬屋源兵衛(國村準)と勝負をした事から縁が出来て・・。

 

 

(ここからネタバレになるので、ダメと言う方は避けてください。ただし、消えた五十両については伏せます)

 

この映画は夫婦共に満足で、映画館へ行って良かったと感じた。

その上で、いくつか気になった点を。

 

格之進は実直で清廉潔白で、紛れもなく正義の人である。

だが、人の長所は時として短所として現れる。

依怙地で融通がきかない格之進は、源兵衛との碁で勝てる場面なのに放棄して、なけなしの一両を置いて去る。

(おいおい、延滞している家賃を払いなさいよ)

 

しかも途中放棄した理由が、彦根藩時代の嫌な記憶を思い出したからって。(そんな事?)

 

そして人の好い大家さんには、娘に嘘を言わせてまた家賃延滞。(自分で謝ったら?)

 

親しくなった源兵衛の家で碁をする仲になったある日、源兵衛の五十両が消える。

番頭にせっつかれた手代の弥吉(中川大志)が道で格之進に尋ねると「私が盗んだとでも言うのか!」と激高する格之進。

挙句、長屋で切腹しようとする彼をお絹は必死に止めて、自分が女郎屋に身売りする決心をし、お庚から出してもらった五十両を格之進は弥吉に叩きつける。

(はあ? 娘を女郎屋に売る方が「武士の恥」じゃないの? こう思うのは私が現代人だからなのか)

 

更に変だと思ったのは、格之進が「もし五十両が見つかったとしたら、その時はお前と源兵衛の首をもらうぞ、いいな!」と弥吉を追い込む事。

(別に弥吉達は彼を番所に訴えたわけではない。恐る恐る一度尋ねただけで「武士の面目」をつぶされたと怒り狂う格之進の激しさにはどうも共感できない)

 

それから、理屈から考えてもこれはおかしい。

殺されるとしたら、たとえ五十両が出てきても誰が馬鹿正直に「お金見つかりました」なんて彼に報告する?

普通は知らん顔するのが当然でしょ?

 

クライマックスはもちろん柴田兵庫との対決。

私はチャンバラシーンが好きなので、照明が暗くてほとんど見えないのがもどかしかった。

 

「あーあ」と思ったのが、兵庫の最期の場面。

1列前にいた高齢夫婦の奥さんが「嫌だ」と不快げな声を出してぶつぶつ何か言ったが、無理もない気がした。

池で斬り死にでもいいんじゃないかな。

 

 

キャストについて。

 

夫「草彅剛はなかなか上手かったね。あの四角四面で融通のきかない男の役、よく合っていたよ」

そう思う。DVDで見た「ミッドナイトスワン」でも感心したし、以前夫が見ていたドラマ「罠の戦争」でも議員秘書をそれらしく見せていた。

 

夫「斎藤工君はまだ時代劇の悪役をする器量がないと言うか、凄味が足りないね」

ふ~ん。

 

夫「清原果耶はもう少し笑顔を見せてもいいのにな」

私「そうかな。お絹は武士の娘だし、貧乏で苦労しているんだから、笑顔が少なくても当然でしょ」

お「でも、弥吉と最後は結婚するんだから、彼には好意を見せてもいいだろう?」

わ「弥吉は最初からお絹に惚れていたけど、お絹は別にまだ恋してはいなかったのよ」

が、夫の理屈では結婚する結末がある以上、、恋心の揺らめきがお絹にないと、祝言場面が取ってつけたように見えるらしい。

ふ~ん。

 

お「それからラストシーンは祝言で終わった方が気持ちがいいよ。それに、クライマックスの後が長過ぎる。もっとすっきりさせた方がいい」

それはそうかも。

 

 

ずいぶんダメ出しみたいな感想が多いが、基本的にこの映画は気に入りました。

 

お「囲碁をやらない人間が見ても、囲碁のシーンはわかりやすくて面白かった。あの見せ方は上手いよ」

 

うんうん。

 

それに、人生の様々な場面で黒白をつける難しさ、というものも感じた映画だった。

 

シアターに入った時、お客さんの気配があまりしなくて、後で夫に「お客さん、何割くらいいた?」と聞いたら、

「1割ぐらい。20人」との返事。

 

う~ん。

公開5日目なのに少ないような。

平日の昼のせい?

 

 

時代劇は製作費も時間も掛かる映画。

俳優さんの拘束時間も長くなりやすい。

 

でも、作り続けてほしい。

時代劇は日本の文化だと思うから。