昨日、夫婦で映画館へ行った。
「碁盤斬り」は予告編を見た時は映像が暗くて、私の眼では全然見えないんじゃないかという気がして、DVDレンタルが出るまで待とうかとも思ったが、早く見たくなり彼を誘って出かけた。かなり前の席で列の真ん中を選べた。
面白かった。(白石和彌監督、加藤正人脚本)
確かに、蝋燭や行灯だけの夜のシーンは俳優さんの表情は見えなかったが、状況はわかるので顔が見えなくても、想像出来る。
お話は。
彦根藩の進物係だった柳田格之進(草彅剛)は碁敵の柴田兵庫(斎藤工)に陥れられ、冤罪で藩を追われた過去を持つ浪人。
江戸の長屋で娘・お絹(清原果耶)と貧しい暮らしをしている。彼は篆刻の内職、娘は仕立物の手間賃でぎりぎりの生活、家賃の支払いも滞っている。
女郎屋の女主人・お庚(小泉今日子)に篆刻の代金としては多めの一両を受け取った格之進が、立ち寄った碁会所で高慢な態度で賭け碁を打つ萬屋源兵衛(國村準)と勝負をした事から縁が出来て・・。
(ここからネタバレになるので、ダメと言う方は避けてください。ただし、消えた五十両については伏せます)
この映画は夫婦共に満足で、映画館へ行って良かったと感じた。
その上で、いくつか気になった点を。
格之進は実直で清廉潔白で、紛れもなく正義の人である。
だが、人の長所は時として短所として現れる。
依怙地で融通がきかない格之進は、源兵衛との碁で勝てる場面なのに放棄して、なけなしの一両を置いて去る。
(おいおい、延滞している家賃を払いなさいよ)
しかも途中放棄した理由が、彦根藩時代の嫌な記憶を思い出したからって。(そんな事?)
そして人の好い大家さんには、娘に嘘を言わせてまた家賃延滞。(自分で謝ったら?)
親しくなった源兵衛の家で碁をする仲になったある日、源兵衛の五十両が消える。
番頭にせっつかれた手代の弥吉(中川大志)が道で格之進に尋ねると「私が盗んだとでも言うのか!」と激高する格之進。
挙句、長屋で切腹しようとする彼をお絹は必死に止めて、自分が女郎屋に身売りする決心をし、お庚から出してもらった五十両を格之進は弥吉に叩きつける。
(はあ? 娘を女郎屋に売る方が「武士の恥」じゃないの? こう思うのは私が現代人だからなのか)
更に変だと思ったのは、格之進が「もし五十両が見つかったとしたら、その時はお前と源兵衛の首をもらうぞ、いいな!」と弥吉を追い込む事。
(別に弥吉達は彼を番所に訴えたわけではない。恐る恐る一度尋ねただけで「武士の面目」をつぶされたと怒り狂う格之進の激しさにはどうも共感できない)
それから、理屈から考えてもこれはおかしい。
殺されるとしたら、たとえ五十両が出てきても誰が馬鹿正直に「お金見つかりました」なんて彼に報告する?
普通は知らん顔するのが当然でしょ?
クライマックスはもちろん柴田兵庫との対決。
私はチャンバラシーンが好きなので、照明が暗くてほとんど見えないのがもどかしかった。
「あーあ」と思ったのが、兵庫の最期の場面。
1列前にいた高齢夫婦の奥さんが「嫌だ」と不快げな声を出してぶつぶつ何か言ったが、無理もない気がした。
池で斬り死にでもいいんじゃないかな。
キャストについて。
夫「草彅剛はなかなか上手かったね。あの四角四面で融通のきかない男の役、よく合っていたよ」
そう思う。DVDで見た「ミッドナイトスワン」でも感心したし、以前夫が見ていたドラマ「罠の戦争」でも議員秘書をそれらしく見せていた。
夫「斎藤工君はまだ時代劇の悪役をする器量がないと言うか、凄味が足りないね」
ふ~ん。
夫「清原果耶はもう少し笑顔を見せてもいいのにな」
私「そうかな。お絹は武士の娘だし、貧乏で苦労しているんだから、笑顔が少なくても当然でしょ」
お「でも、弥吉と最後は結婚するんだから、彼には好意を見せてもいいだろう?」
わ「弥吉は最初からお絹に惚れていたけど、お絹は別にまだ恋してはいなかったのよ」
が、夫の理屈では結婚する結末がある以上、、恋心の揺らめきがお絹にないと、祝言場面が取ってつけたように見えるらしい。
ふ~ん。
お「それからラストシーンは祝言で終わった方が気持ちがいいよ。それに、クライマックスの後が長過ぎる。もっとすっきりさせた方がいい」
それはそうかも。
ずいぶんダメ出しみたいな感想が多いが、基本的にこの映画は気に入りました。
お「囲碁をやらない人間が見ても、囲碁のシーンはわかりやすくて面白かった。あの見せ方は上手いよ」
うんうん。
それに、人生の様々な場面で黒白をつける難しさ、というものも感じた映画だった。
シアターに入った時、お客さんの気配があまりしなくて、後で夫に「お客さん、何割くらいいた?」と聞いたら、
「1割ぐらい。20人」との返事。
う~ん。
公開5日目なのに少ないような。
平日の昼のせい?
時代劇は製作費も時間も掛かる映画。
俳優さんの拘束時間も長くなりやすい。
でも、作り続けてほしい。
時代劇は日本の文化だと思うから。