今年の「THE W」はニッチェが優勝した。最終決戦に残ったのは3組、Aブロックを勝ち抜いた紺野ぶるま、Bブロックを勝ち抜いたニッチェ、そこに視聴者投票で勝ちあがったエルフが加わった。今年は放送時間が短くなり、ファイナリストが8組に減らされてもいるのだが、そのなかでも、すでに知名度のある3組がちょうど残ったかたちになる。
しかし、それ以上に、今年は粗品が主役になってしまった回だった。初めて審査に加わった粗品の寸評がいちいち面白く、具体的な指摘とアドバイスを不足なく話そうとする。粗品が誰をどう評価するか。粗品が票を入れた、電気ジュース、とんでもあや、ヤメピは報われたのではと思うが、粗品が大会の空気を支配することにもなっている。その空気を初めて視聴者にもわかるように言葉にしたのはエルフ荒川だ。4年連続の決勝進出となったエルフだが、漫才を終えた荒川は「今年がいちばんなんか調子狂った!」と言った。「だって荒れてんだもん、いろいろ」「全体的になんか雰囲気がいつもと違うなっていう」
粗品に寸評されたあとには、荒川は「粗品さん!」と呼びかける。「粗品さん、すいません、ほんとにありがたいんですけど、W(ダブリュー)から出て行ってくれませんか?」 このセリフには観客から拍手と笑いが起こった。「お前もすかしたな。」と返す粗品も強いのだが、この場では、エルフ荒川が誰よりも優れたバランサーに感じられた。
今回、粗品がこの大会を面白いものにしていたことは否定しようがないのだが、出場者よりも審査員が注目されるのはあまりいい状態ではないだろう。それは初期の「M-1」の空気も思い出させる。そういえば、「THE W」の最初の2回には副音声に松本人志が出演していたのだった。
「THE W」は歴代優勝者を並べてみればじつに申し分のない大会なのだが、独自の色が出てきたと思えるのは第3回以降、つまり、無名だった3時のヒロインが優勝してからで、その後は「THE W」発の人気者をかなりの高確率で輩出している。これは「THE W」が「M-1」とは別の価値基準を作ることに成功してきた証だろうと思うのだが、粗品の審査に心配するのは、それをまた「M-1」の基準にそろえることになりやしないかということだ。そうなれば、いとも簡単に大会がしぼんでいくということにならないだろうか。














