本だけ読んで暮らせたら -8ページ目

『群れは意識をもつ』


『群れは意識をもつ 個の自由と集団の秩序』 郡司ペギオ幸夫/著、 PHPサイエンス・ワールド新書(2013)


群れを構成する個体一つひとつは「モノ」である。

モノである個体おのおのの振る舞いは「コト」である。

それぞれの振る舞いの集積が群れという「モノ」になる。

群れとしての行動というものがあり(例えば集団での移動)、それらは「コト」である。


脳の神経細胞、ニューロンは「モノ」であるが、それらのネットワークは意識・知性を生み出す。意識や知識は「コト」といえる。


神経細胞の集団と、動物の群れは違うのか?同じなのか?


↑ このよう問題提起から始まり、


やがて・・・、


生命とは、モノとコトに分化することでその両義性を備え、またあるときは両者を融合して新たな分化のタイミングを伺う。生命とは、モノとコトの分化・融合を繰り返す生成の場と考えることができる。(pp.210)


という考えを導出し、


個体一つひとつの自由な振る舞いが非同期的に相互作用することによって、集団としての秩序・行動に至る・・・・・。

つまり、

個と社会、モノとコトは対立概念とならない。(pp.270) ことを示す。



オモシロかった。

途中、読むのにチョイとめんどくさい箇所もあったが、最終的に著者の云わんとしていることは判った・・・。「判った」、という快感に浸れた。 しばらく経つと忘れるだろうが・・・・・。


科学に興味を持つ高校生以上なら楽しめると思います。お薦めです。

『作家の本棚』

8月27日の記事で、しばらくはミステリー作品を読んでいこう! などと大嘘を書いてしまった・・・。
このところ読んでいたのは、歴史・・・、サイエンス・・・、を少々、といったところ。

その間に↓このような気軽なモノも。



『作家の本棚』 アスペクト文庫(2012)


角田光代、桜庭一樹、石田衣良、穂村弘、有栖川有栖、神林長平、菊池秀行、川上未映子、みうらじゅん、山崎ナオコーラ、山本幸久、西加奈子、夢枕獏、中島らも

の本棚。

覗き見の本。

なんだかんだで皆さんキチンと整理してらっしゃる。

『ポーカー・レッスン』

8月中旬の夏休み、連日の猛暑日は冷房を効かせた部屋でホムラ・エッセイばかりを読んでた。
だが、その間にも翻訳ミステリー作品はいくつか購入していた。それらが積読状態になっている。
で、夏休み明け、毎朝の通勤電車の中ではミステリー作品を読むことにした。
そろそろそれらに取り掛からねば、未読本の山がカミさんに見つかってしまう・・・。
(すでに見つかっているかもしれないが、未だ何も言われていないのを良いことに、今も山は徐々に高くなり続けている。。。)

では、まずはディーヴァーから。

『ポーカー・レッスン』  ジェフリー・ディーヴァー/著、 池田真紀子/訳、 文春文庫(2013)

16の作品からなる短編集。 前短編集『クリスマス・プレゼント』から実に7年?ぶりとなる短編集。

原題は MORE TWISTED 。 もっとヒネリを!

前短編集『クリスマス・プレゼント』の原題が TWISTED だったから、それを上回る内容だ! との作者の自信の表れか・・・。


■章と節

   ダイイング・メッセージには聖書の章と節の番号が記されていた。

   メッセージの謎を解いたとき・・・・・無常。いや、無情・・・。


■通勤列車

   列車内での携帯電話の通話を注意されながらも逆切れした男。そいつに訪れる悲運。

   おもわず、ザマーッ!って言いたくなる。痛快なエンディング。


■ウェストファーレンの指輪

   一度も捕まったことがないどころか、警察の捜査の対象にもなったことのない宝石泥棒。

   しかし、今度の仕事では何故か目を付けられた。科学捜査の時代の到来によって・・・。

   はたして、警察の疑いから逃れることはできるのか?

   ヴィクトリア時代の名探偵=あの人へのオマージュ作品。

   名探偵の予想外の×××。こういう結末イイ。


■監視

   警備保障会社から大金を盗んだ泥棒と、状況証拠を根拠に監視を続ける刑事との騙し合い。

   騙されてるのは一方的に○○○の方なんだけどね。。。


■生まれついての悪人

   叙述ミステリー? 二人の登場人物=母と娘の視点の違いがもたらすどんでん返し結末。

   もっとも、どの作品もドンデン返しの結末なんだけど。


■動機

   殺人犯を取り調べる刑事。動機だけが判らない。何度尋ねてもあいまいな返事ではぐらかされる。

   だが徐々に打ち解けた会話ができるようになりつつあり、お互いの信頼感が醸成されだした頃・・・。

   プライベートのことまで話題に挙がる・・・。


■恐怖

   出会って間もない男女二人を乗せた車はフィレンツェ中心から郊外に向かう。

   マリッサは何処に向かうかも知らされない。男は「着いてのお楽しみだよ」という。

   途中、「チョットした用事を済ませてくるよ」といってマリッサを車に残して男は姿を消す・・・。

   フロントガラスの向こうに佇む双子の男の子。無表情にこちらをじっと見つめている・・・。

   双子から目をそらした瞬間、助手席のガラスの直ぐ向こうに現れた老婆。その老婆の一言・・・。

   男の別荘に到着。彼女は別荘近くの川で溺死したといわれる少年を弔う白い花束を見かける・・・。

   覗き見ることを禁じられた別荘の地下のワインセラー・・・。

   壁にかかった写真。そこには、マリッサに似た別の女性が男と一緒に写っている・・・。

   どこか変だ?? マリッサがそう思い始めた時、男が目前に立つ。その手には肉切り包丁が・・・。

   恐怖を感じ始めるマリッサ・・・。

   ・・・リドル。


■一事不再理

   自白までしている殺人の容疑者の無罪を勝ち取った弁護士に訪れた結末・・・。

   司法の盲点を突いて遂げる復讐劇。

   結末、イイね。


■トンネル・ガール

   古い市街地域の地下通路の崩落にひとりの少女が巻き込まれた。

   少女の救出に託けて大金をせしめようとする捜索救助のスペシャリスト。

   そいつに反目する一人の男。その男の事務所の地下から崩落現場に向かうとの計画が立てられる。

   だが、男は別ルートが存在することを主張するがその意見は一顧だにされない。

   男は、自ら一人で別ルートの地下通路に突入するが・・・。


■ロカールの原理

   “安楽椅子探偵” リンカーン・ライムもの。

   犯行現場には必ず微細証拠が残る・・・という、ロカールの原理。

   それを逆手に取ったプロの暗殺者による暗殺事件。 ライムとアメリアはどう謎を解くのか?


■冷めてこそ美味

   またまた復讐劇。これまた痛快。

   こんなのが痛快だなんて、俺って性格悪っ!


■コピーキャット

   この作品だけは読了前に何となくオチが判った。


■のぞき

   書店に勤める冴えない男が、最近引っ越してきた美女の部屋を覗いてる一人の男の存在に気付く。

   覗き見をする男を覗く男の顛末を描いた作品。これは唯一平凡な出来かな?って思った。


■ポーカー・レッスン

   大金を掛けるポーカーに挑む18歳の大学生。秘策あり・・・。

   場を取り仕切るプロ中のプロの男(もちろん秘策あり)による実地のレッスンが始まる・・・。

   総額50万ドルの勝負に勝ったのは・・・


■36.6度

   蒸し暑い夜中。車の故障にみまわれ、辺鄙な街の一軒家に助けを求めたセールスマン。

   その家で電話を借り、ロードサービスを呼んだ・・・までは良かった・・・。

   その家の住人=初老の夫婦と甥の3人の態度はどこか変だ?甥を恐れているように見える夫婦・・・。

   ロードサービスが到着し、その家を後にしたセールスマンだが、途中、検問に引っ掛かる。

   刑務所を脱獄した凶悪犯の捜索とのことだ。さっきの一家の態度に感じたことを保安官に告げる。

   一家に事情を聴き、彼らと脱獄との関連性はないと判断した保安官。

   だが彼は、セールスマンに疑問を感じはじめた・・・?


■遊びに行くには最高の街

   詐欺師と、縄張を仕切る親玉と、悪徳警官。

   彼ら3人は、ニューヨークを訪れた際に買春を行った中年男をカモに揺すりを行い大金をせしめた。

   だが決してお互いを信用しているわけではない・・・。

   尾行されたことを切っ掛けに疑心暗鬼になり、悪徳警官は二人を殺害した。

   だが、全ては画策されたものだった・・・・・。


最後の3作品はまさにMore Twisted だった。お見事!


■「恐怖」について

   7番目の作品『恐怖』を例に、サスペンスの書き方をディーヴァー自らが解説してる。


原題どおり、どの作品も一捻りも二捻りもある作品ばかり。ハズレなしのお買い得短編集。

お薦めです。


『現実入門』


『現実入門―ほんとにみんなこんなことを?』 穂村弘/著、 光文社文庫(2009)


人生の経験値が低い(と称する)著者が、初モノという現実に挑戦し、その顛末、その際に感じたことを描いたもの。

体験するのは、献血、モデルルーム見学、占い、合コン、はとバスツアー、ブライダルフェスタ、健康ランド、一日お父さん、競馬、大相撲観戦、部屋探し、そして究極の体験・・・。


初モノ体験を一緒に行う女性編集者が魅力的に描かれている。

ただ彼女の存在は現実なのか虚構なのか? そこが良く判らないように本書は閉じられている。エッセイとしては不思議なエンディング。こんなのもイイけど。


『決定版 切り裂きジャック』

『決定版 切り裂きジャック』  仁賀克雄/著、 ちくま文庫(2013)


日本でただ一人の“切り裂きジャック”研究家? 仁賀克雄氏による切り裂きジャック研究書。

1985年早川書房から出た『ロンドンの恐怖 切り裂きジャックとその時代』の増補版。



1888年、ヴィクトリア時代のロンドン・イースト・エンド、ホワイトチャペル地区に現れた“ジャック・ザ・リッパー”。5人の街娼を惨殺した殺人鬼。

イギリス中に恐怖を撒き散らしたこの事件に対して、時のイギリス政府は国家の威信を掛けて捜査を行ったにも関わらず、ついにその正体すらも不明のまま迷宮入りした・・・。


世界中のミステリー作品に影響を与えてきた事件。

フィクションだけではない。現実の連続殺人事件でも切り裂きジャックの犯行を真似たものが幾つも起こった・・・。



本書、事件に関する情報の量・質が凄い。

被害者ひとり一人について、容疑者一人ひとりについて、主な捜査関係者一人ひとりについて、犯行現場や死体発見者などについて、世界中の資料、出版物を読み解き、解説している。

さらに素晴らしいところは、事件の背景となるヴィクトリア時代のイギリスの世相・雰囲気に関することやスコットランドヤード設立に至るまでの歴史についても説き起こしてくれていることだ。

巻末には、被害者リストと主要容疑者リストが詳細な一覧表として載ってる。

資料的価値の高い本だ。


翻訳モノ海外ミステリーを読んでいると、ときおり切り裂きジャックに関係していると思しきコトが出てくる。英米の読者には当たり前かもしれない背景知識でも、我々には何のことか判らない場合があったりする。そんなとき、本書にあたってみれば見当のつくこともありそうだ。

『つむじ風食堂と僕』


『つむじ風食堂と僕』  吉田篤弘/著、 ちくまプリマ―新書(2013)


『つむじ風食堂の夜』  『それからはスープのことばかり考えて暮らした』  『レインコートを着た犬』

の<月舟町>三部作。

本作はそのスピンオフ作品とのこと。

三部作のうちの最終作が出る前に番外編が出る・・・・? そういうこともあるのか??



『それからは・・・』で登場したサンドイッチ店<トロワ>の店主の息子=12歳のリツ君が主役の連作3短編集。たった100ページ。直ぐ読み終わる。チョットした待ち時間に最適。


実際、私の場合、カミさんと娘が買い物してる間に書店に入って本書を購入し、読み始めてから数十分で読み終わってしまった。(結果として、立ち読みでも良かった・・・)

それでも彼女らの買い物は終わらないので、再度書店に入って別の本 『決定版 切り裂きジャック』 を購入し直す始末。


暑い戸外には出ず、冷房の利いた室内でほのぼの読書するのにイイ本です。もう1回読も。


『世界音痴』


『世界音痴』  穂村弘/著、 小学館文庫(2009)


すみません。また、ホムラ・エッセイ。

本作が著者の初エッセイ集らしい。


中身については題名が語っている。ナイス・タイトル。


対人スキル、対世の中スキル、対初ものスキルの低い著者が、世間をどのように渡ってきたのかを自虐的、諧謔的に描いたエッセイ。


ほどほどの自虐ネタ、諧謔ネタで、他人に笑いと安心感を与えることができるんだから、たいしたものだと思う。


『もうおうちへかえりましょう』


『もうおうちへかえりましょう』  穂村弘/著、 小学館文庫(2010)

本作は著者の第2エッセイ。

1作目の『世界音痴』のほうも読了してるが、先に読んだこちらの方を先ずは記録しておく。

もっとも私が読んだ順番と出版順はバラバラなのだから、記事にする順番などどうでもいいんだけど・・・。


記事にするにあたって、記憶を探るためにもう一度読み返してみることがある。私の脳の短期記憶領域はえらく狭いらしく、3日前に読んだものでもその大部分を忘れているからだ。読み返すと云っても、最初のページから本気で読み返すわけではなく、目次を見てどこかに印象的だった項目タイトルやページはなかったか?そんなことを思い出す作業をしてみるだけだ。ページをパラパラ捲るだけのことだ。


で、ページを捲ってると途中で引っ掛かることがある。引っ掛かるというか、捲るページ数が大きくジャンプするという言い方の方が適当かもしれない。大抵の場合、栞を挟んであったところとかドッグイヤーにしたところだが、そうでない箇所でも引っ掛かることがある。そういった箇所には薄いレシートが挟まれてる。


本書には2枚のレシートが挟んであった。

1枚は本書を購入した書店のもの。発行元は甲府駅の「改造社書店」。初めて入った書店で、そういえば珍しい店名だなァと思ったんだった。最近はホムラ・エッセイ文庫を手当たり次第に探していて、本書は出張先でたまたま入ったこの改造社書店で見つけたんだった。

もう1枚は「和幸」甲府店のもの。“さざんかロース”1080円の昼食料金のレシート。和幸で昼飯が出される前に本書を読んでたってことだ。おそらく食後もお茶など飲みながら本書を読んでたんだろうな。会計の際にも鞄の中に入れずに本書を手に持っていたんだ。だから、和幸のレシートが挟まってるんだろう。


レシートの日付は8月1日。もう10日も前のことだ。甲府へ何しに行ったんだっけ?パッと出てこない。

甲府は気温が40度を超えてるらしい。恐ろしいことだ。。。 埼玉も暑いけど。。。



本書に関しての記事ではなくなってしまった・・・。

ホムラ・エッセイも、もう5冊ほど読んだので、トータルとしての印象は残っていても特定の作品についての感想は霧散してしまった・・・・・。


本書の表紙は著者自身の写真。背景はカプセルホテルだな。

つい最近、酔っぱらって最終電車を乗り過ごし、乗り過ごした先の駅前のカプセルホテルに泊まった。カプセルホテルに泊まったのなんて何十年かぶりだった。

本書から想起されることがそんなことだけだなんて・・・。


『脱出連峰』

THE RENEGADES (2012)
『脱出連峰』  トマス・W・ヤング/著、 公手成幸/訳、 ハヤカワ文庫NV(2013)


『脱出山脈』 『脱出空域』 につづくシリーズの第3弾。

「脱出・・・」といっても邦題でのことだけであって、原題はまったく違う。

しかも、第1弾の“山脈”と今回の“連峰”じゃ、ほとんど同じじゃねぇかと思うのだが・・・。

なんだかいつもこのシリーズの邦題に文句言ってるナ、俺。。。



このシリーズの2人の主人公=マイケル・パースンとソフィア・ゴールド。パースンは空軍中佐に昇進し、アフガニスタン空軍の顧問となっている。ゴールド陸軍上級曹長はアメリカ本国で高高度降下訓練を行っていた。

そんなとき、地震の発生によりアフガニスタンの広範囲にわたって被害が生じた。

パースン中佐は被災地救援のため、アフガン空軍のヘリコプター・パイロット達を率いて物資輸送や怪我人の搬送を行っていた。被災地救援を行うにあたってコミュニケーション不足を感じた彼は、現地パシュト語を自在に話し、アフガンの文化と宗教を理解し、そしてなによりコミュニケーションのプロフェッショナルであるゴールド上級曹長を本国から呼ぶことにした。


一方、混迷するアフガンには<黒新月>なる新たな反政府勢力が登場していた。

奴らは被災地の混乱に乗じて少年達を拉致し、恐怖と洗脳によって幼い兵士へと変容させ、アメリカ軍およびアフガニスタン政府軍に対する自爆テロを敢行させる。


<黒新月>の蛮行を阻止すべく、パースンとゴールドは敵地への潜入・敵の壊滅・少年達の救出作戦に加わることになる・・・。


本作では、ゴールド上級曹長の活躍が目立つ。

情報収集のために女性兵士が単独で敵地へと潜入することなど実際にはあり得ないだろうが、そこはフィクションである。彼女の活躍によって後半の物語が加速するのだ。

さらに、空軍パラシュート降下レスキュウ隊員のレイエス軍曹、海兵隊ブラウント一等軍曹、という主役級の活躍を魅せる2人の新キャラクターが登場する。彼らの言動は、これまでの2作で主役だったパースン中佐を脇に退けてしまった。。。


戦禍の中で、一兵士、一個人に何ができるのか?を描く物語。

プロット、キャラ造形、そしてキャラに吐かせるセリフ、そのどれもがイイ。

お薦めです。

『ワタシの一行 新潮文庫の100冊』


本だけ読んで暮らせたら-p1


日本プレスセンタービル1階のジュンク堂書店でもらってきた新潮社文庫夏のフェアPR冊子。


各界著名人たちが選んだ「ワタシの一行」が、その一行を選んだ理由とともに載ってる。


表紙に描かれてる著名人の似顔絵が結構似てる?