『脱出連峰』 | 本だけ読んで暮らせたら

『脱出連峰』

THE RENEGADES (2012)
『脱出連峰』  トマス・W・ヤング/著、 公手成幸/訳、 ハヤカワ文庫NV(2013)


『脱出山脈』 『脱出空域』 につづくシリーズの第3弾。

「脱出・・・」といっても邦題でのことだけであって、原題はまったく違う。

しかも、第1弾の“山脈”と今回の“連峰”じゃ、ほとんど同じじゃねぇかと思うのだが・・・。

なんだかいつもこのシリーズの邦題に文句言ってるナ、俺。。。



このシリーズの2人の主人公=マイケル・パースンとソフィア・ゴールド。パースンは空軍中佐に昇進し、アフガニスタン空軍の顧問となっている。ゴールド陸軍上級曹長はアメリカ本国で高高度降下訓練を行っていた。

そんなとき、地震の発生によりアフガニスタンの広範囲にわたって被害が生じた。

パースン中佐は被災地救援のため、アフガン空軍のヘリコプター・パイロット達を率いて物資輸送や怪我人の搬送を行っていた。被災地救援を行うにあたってコミュニケーション不足を感じた彼は、現地パシュト語を自在に話し、アフガンの文化と宗教を理解し、そしてなによりコミュニケーションのプロフェッショナルであるゴールド上級曹長を本国から呼ぶことにした。


一方、混迷するアフガンには<黒新月>なる新たな反政府勢力が登場していた。

奴らは被災地の混乱に乗じて少年達を拉致し、恐怖と洗脳によって幼い兵士へと変容させ、アメリカ軍およびアフガニスタン政府軍に対する自爆テロを敢行させる。


<黒新月>の蛮行を阻止すべく、パースンとゴールドは敵地への潜入・敵の壊滅・少年達の救出作戦に加わることになる・・・。


本作では、ゴールド上級曹長の活躍が目立つ。

情報収集のために女性兵士が単独で敵地へと潜入することなど実際にはあり得ないだろうが、そこはフィクションである。彼女の活躍によって後半の物語が加速するのだ。

さらに、空軍パラシュート降下レスキュウ隊員のレイエス軍曹、海兵隊ブラウント一等軍曹、という主役級の活躍を魅せる2人の新キャラクターが登場する。彼らの言動は、これまでの2作で主役だったパースン中佐を脇に退けてしまった。。。


戦禍の中で、一兵士、一個人に何ができるのか?を描く物語。

プロット、キャラ造形、そしてキャラに吐かせるセリフ、そのどれもがイイ。

お薦めです。