この写真はシーナカリンウィロート大学の児童文学科の学生さんたちが、私たち日本人会バンコク子ども図書館を見学に来てくれたとき、デモンストレーションした
『しろくまちゃんのほっとけーき』
の大型紙芝居です。
子ども図書館は月2回お話し会を開催していますが、この当時は日本人の子どものためのアクティビティがバンコクにはほとんど無かったので、日によっては50~100人近くのお子さんが来てくれることがありました。
そこで、小さい絵本ではよく見えないので、ボランティアの中で絵心のある方が、大きく拡大して描いて大型紙芝居にしてくれたのです。
(「非営利活動の作品著作権使用許可」をいただいています)
この『しろくまちゃんのほっとけーき』については、このブログの「『しろくまちゃんのほっとけーき』タイの人にうけた場所は」という記事に書いていますので、関心がおありになったらクリックしてごらんになってくださいね。
今回注目してほしいのは、この紙芝居の扉付きの木枠です。
これも、ボランティアの方でサイズを計って、見取り図を作って、図書館の本棚を作ってくれたタイの業者に発注したものです。
やっぱり、日本人主婦は、「紙芝居の木枠」がどんなものか知っていたからできたことです。
実際、タイの業者さんは、「紙芝居の枠」のことを知りませんから、最初にできてきたものは、なんと背面の板がくりぬかれていませんでした。
そこが開いていないと、紙芝居をやるにあたって、裏面の文章が読めないではないですか。
もちろん発注する私たちもタイ語での発注がおぼつかず、説明不足のところもあったと思います。
やり直してもらって、ちゃんとしたものになりました。
この木枠、書棚のマピンの木と同じ材料、同じ色なんです。
書棚はすべて、前回ご紹介した一級建築士の駐在員奥さまが設計発注してくれました。
子ども図書館の備品が続々入ってきました。
下足入れ、ブロック棚、ロッカー棚、本だなAタイプ、Bタイプ、掲示板、貸し出し兼作業机、ブロック作業机、サインボードなどなど・・・
シンボルマークのふくろうのWHOちゃんは、もと博物館員の駐在奥さまが制作しました。
しかし、一番かんじんなことは、本を貸し出せるような形にすることです。
個人やトヨタ財団、日本人会会長などの寄贈による図書制作1360冊を、貸し出せるような形にしなければなりません。
しかし、それこそが「図書館司書」の方がいなければわからないことでした。
(日本でも個人で家庭文庫を開いている方は、司書でなくても、公立図書館やほかの文庫さんを参考にして貸し出せるようにしていると思います)
そこでまた、前回登場された司書だった駐在奥さまボランティアの聞き書きを書いてみましょう。
このお話は司書のお仕事を知らない私にはとてもおもしろいものでしたのでぜひ書き留めてご紹介したいと思います。
「この時私の頭の中はパニックでした」
「頼るべき図書館学の本はすべて日本の倉庫の中にあって」
「まさかバンコクで必要になるとは思わなかったし、「日本目録規則」だの「日本十進分類法」などという代物が役にたつことはほとんど無いのです」
「例えば「日本十進分類法」というのは学校や公共図書館で、本の背に貼ってあるラベルに910とか210などと書いてあるあの番号の表のことで」「普通これ無しに本の整理はできません」
「そしてたとえこういう本があったとしても、ああでもないこうでもない、あそこが違うここが違うという事が起こるのは学校時代の実習や図書館に入ってからの研修で経験したことでした」
「でも、この時は悩んでいる暇さえ無く、もう開き直るしかなかったのです」
「つまり、この図書館はほとんどが子どもの本であるし、蔵書数が何万冊にもなるということはすぐには考えられない開架式の図書室です」
(現在は1万冊以上あります)
「かつ整理を担当するのは基本的に素人のボランティアであって常に交代していくのだから「日本十進分類法」だのを厳密に適用することはあまり意味はないし無理でもある、と割り切ってもっとおおざっぱな分類を考えました」
「それが「絵本」「図鑑」「物語」「大人」という分類です」
「こんな単純な分類でもグレーゾーンはあるし(たとえば親が読んで聞かせるなら4,5才から、自分で読むなら小学生からというような本を「絵本」にするか「物語」にするか」
とにかく、もう一人の司書の奥さまと、マニュアルや見本用のカードを作りながら、とんでもない欠陥があるのではないかと戦々恐々の毎日だったそうです。
8月に入って、統括する逆単身奥さまのがんばりで、日本からラベルやブック・ポケット、ブック・カード、ナンバリングやスタンプなどがそろい(図書館がほとんど無いタイでは一般に売っていないし、たとえ大学図書館用にあるにしても、タイ語用のものと日本語用のものは違います)、図書の受け入れ作業が始まったのは8月に入ってからでした。
オープン日は9月16日と決まり、1か月しか残されていない中、手の空いたボランティアはとにかく行って作業をするという人海戦術になりました。そのリーダーとしての司書奥さまたちは
「弁当持参あるいは休日返上で作業を進めました」
1冊についての手順はこうです。
図書に番号を与え原簿に記入して、ブックポケット、日限表(デート・スリップ)を装備して、分類し、目録をとり、ブックカードを記入し、ラベルを貼って書架に並べます。
この時、さらに日本で公共図書館司書で働いていらした別の奥様が参加されのたですが、
「前に働いていた日本の図書館は蔵書20万冊あったけれど、すべてパソコンに入っていました。
でも、バンコク子ども図書館の2000冊の蔵書は、手書きでずっとたいへんでした。
時々書き間違えては、こっそり修正液をかけることもたびたびでした」
・・・・
この項、まだまだ続きます!司書さんの仕事ってほんとにたくさんあるのですね。
その後手作りの大型紙芝居も増えに増えて、その紙芝居を収納するための棚も発注して作ってもらいました。
この棚は、裏にあるので、とくに色はそろえていませんよ。