今回はタイのぬり絵文化についてご紹介します。
以前カブトムシ相撲の記事のとき、ぬり絵絵本の出版社の出しているシールをご紹介しましたが、そのもとになったぬり絵絵本がこちらです。
『タイの子どものおもちゃ』という題名です。
日本でぬり絵というと、「きいちのぬりえ」が有名ではないでしょうか?
そのきいちさんこと蔦谷喜一さんのの姪にあたる金子マサさんが、きいちのぬりえのお仕事を顕彰する「ぬり絵美術館」の館長をされています。
金子マサさんは、実はタイのぬり絵にも造詣が深くていらっしゃり、2004年にお話をうかがったことがあります。
タイのぬり絵文化は、日本の子ども文化を描いたきいちさんのぬり絵に通じるものがあるとのこと。
今、日本では大人のぬり絵がブームですが、子ども向けぬり絵はアニメなどを題材にしたものが多くて、子どもの文化を描いたものがほとんど見られないそうです。
金子さんが当時タイで訪問されたのは、「クラス・パブリッシング・ハウス」という出版社です。
画像のぬり絵が、この出版社の本なのです。
このぬり絵絵本の中はこんな感じですが、
これは、タックローという、竹で編んだボールを足で蹴るタイの伝統スポーツですね。今でも公園などで市民ガタックローで遊んでいるのを見かけます。競技になるとけっこうはげしいです。
こういうふうに、タイの伝統遊びとおもちゃが紹介されているのですが、中に、シールのページがあって、貼って遊べるようになっています。
もう1冊持っているのが『タイの風習』というぬり絵絵本です。
表紙は、「ローイクラトーン」というタイの伝統のとうろう流しですね。おとなりにシャム猫もいます。
この中のシールがとても美しいのです。
この絵本の作者は、絵本にはクレジットが出ていませんが、金子さんによるとシティプーンさんという方で、タイで初めての職業ぬり絵作家で、違法コピー本が出るほど人気があるそうです。
クラス・パブリッシング・ハウスで、金子さんが社長に聴いたお話によると、
タイのぬりえの歴史が始まったのは、ラーマ5世の時代。
日本でいうと明治時代にあたり、このラーマ5世も西欧とも交流してタイの「文明開化」を推進したとして、「大王」の称号を持っています。あの「王様と私」の主人公である、王様のお子様にあたります。
このラーマ5世王が力を入れたのは、科学技術の導入とともに、国民への教育と啓蒙でした。印刷技術も導入され、「新聞」というものが世に出回るようになりました。
この「新聞」に連載された小説が、タイ近代文学の始めだとされていますが、ぬりえの始まりも、この「新聞」なのだそうです!
「新聞」に書かれているイラストや一こまマンガ。それらに庶民が色をぬるようになってから、需要が出たのだそうです。
クラス・パブリッシング・ハウスは、ぬりえだけではなく、知育絵本を中心に出版されていますが、おそらくぬりえ出版で培った美術力の高さで、年に1度のタイの図書週間賞で、何度も「美しい本部門」で入賞されています。
私の持っているのは『タイのことわざ』という絵本ですが、右上についている丸い金色のものが、図書週間賞を受賞した本に貼られるシールです