タイの古典というと、『ラーマキエン』のほかにご紹介したいのが『スサコーン』です。
この作品の原作は『プラアパイマニー』の中の1部に入っていて、作者のスントーンプーは19世紀前半活躍した不世出の詩聖とたたえられる人です。
タイの文学シーンでは、現在も詩(韻文)は大きな位置をしめていますが、その中でもスントーンプーをこえる人はいないとされています。
当時の詩人として、彼は王様につかえていましたが、その奔放な性格と言動から、一時うとまれ投獄されてしまいます。その獄中で書き始めたのが、この作品です。
またこの作品はタイで随一のファンタジー作品とも言われています。
その中で『スサコーン』の章は、子どもが活躍するというので、タイの国語教科書の小学校4年生の1の巻の表紙にもなっています。そして、内容は一単元として、もとの韻文が載せられています。
最初にあげた絵本は、タイの出版社プラン・フォー・キッズから出ているのですが、この日本語訳が、2005年財団法人おはなしきゃらばんセンターさん(現在は解散)で作られています。
これです!
実はこの『スサコーン』は財団法人おはなしきゃらばんセンターさんが当時公演していた、アジアのお話を人形劇にするプロジェクトで、2005年のタイ編のときとりあげられたのでした。
私もそのときお手伝いしました。
そのときのお人形さんたちの写真です。
スサコーンは元気な男の子。人魚のおかあさんと老仙人に育てられました。
しかしほんとうは、スサコーンのおとうさんは、ある国の王子さまアパイマニーだったのです。
スサコーンは人魚と人間のこどもとして、海の中でも陸の上でも過ごせ、また育ててくれた仙人にたくさんのわざを教わります。
さて、ある日スサコーンは海の上でとびはねる不思議な生き物と出会います。それは竜と馬のあいのこという魔法の生き物。ニンマンゴーンと名づけて、二人は仲良くなります。
そこで老仙人はスサコーンに魔法のつえをわたし、本当の父親さがしに向かわせます。
スサコーンは冒険の旅に出て、ある島で、はだかで暮らしている仙人にあいます。
スサコーンは無欲な仙人だと誤解して尊敬しますが、実はこの「はだか仙人」はとんでもない悪党。スサコーンをだまして崖からつきおとし、杖とニンマンゴーンをうばいさってしまいます。
がけから落とされたスサコーンのところへ、仙人が助けにあらわれます。
はだか仙人は、とある国に行って、魔法が使えると言いふらして王様たちにとりいろうとするのですが、そこへスサコーンが現れ、真実があきらかになります。
スサコーンは、また父親を探す旅に出かけることになり、その国の王子たちもついていくことになります・・・。
ざっとこのようなお話でした。
原典『プラアパイマニー』は、抄訳が『タイ古典文学名作選』(井村文化事業出版社)に載っています。