2019〜20シーズン観戦記3(早大vs日大) | 渡る世間にノリツッコミ リターンズ(兼 続日々是鬱々)

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日本ラグビーの観戦記第3弾は大学選手権準々決勝となる標題の一戦。

 

対抗戦の早明戦で敗れ、この大会での雪辱を期す早大と、史上稀に見る「V字回復」の体現者として、そのうち本の一冊も出版されるかもしれない日大との戦い。日大は2014年シーズンに二部降格となってから5シーズンでリーグ戦の優勝争いをするまでに急成長。

 

花園での上位進出高の出身者が多く、注目度の高い対抗戦グループで数々の大試合を戦って「場慣れ」している早大に対し、こうした短期決戦では得てして「見えない力」となって効いてくる「勢い」というものを、初戦の、47年間チームを率いてきた大西監督のラストシーズンという物語を背負って出場してきた京産大を破ることによって身につけた日大が、どのような戦い方を見せてくれるのか、興味深いカードであった。

 

試合はしかし、早大の「場慣れ」が日大の「勢い」を上回る。日大はFWもBKも元気一杯攻めて行くのだが、いかにも効率の悪い攻撃でスタミナを無駄に使わされていた。対して要所要所のブレイクダウンで、テンポよくボールを出した早大は、ほんのちょっとしたランスキルの披露で至極あっさりとトライを奪った印象。前半の早大の3本のトライがそれこそ指一本も触れさせないような、た巧みなBKの攻撃で奪ったものなのに対し、日大の1本はFWがゴリゴリとモールで押し込んでインゴールを陥れたもの。戦略とスキルでスマートな営業を仕掛け、利益率の高い商売をする外資系に対し、泥臭く手間暇かけてなんとか売上はひねくり出すが、利幅が薄く、いつまでたってももがき苦しむ日本の中小企業が戦いを挑んでいるような構図である。手間暇をかけられる体力がある分だけ、日大だって捨てたものではないし、リーグ戦ではその体力が大きくモノを言ったのだが、早大のテンポの速さと、要領の良さにしてやられた感は否めない。

 

後半になると、さすがの日大にも疲れが見え始め、どんどん試合内容に差がついて行った。こうなると、日大は、外国人留学生を始めとする個々のプレーヤーの力強さを前面に押し出して一点突破を図ろうとするが、こういう荒々しいプレーには得てしてミスがつきもの。端的にいうと、ボールがこぼれたり、ブレイクダウンでターンオーバーされたりというシーンが増える。そして早大はそうしたミスをついて、得点に結びつけることをお家芸とするチームだ。というわけで、後半はスコア的に一方的な展開となった。日大のファンにはさぞかしフラストレーションが溜まる試合だっただろう。

 

今大会は、前々年まで9連覇を果たした帝京大が初戦で敗退するなど、大学ラグビーが新しいステージに入ったことを示す大会である。ワールドカップで防御に長けたチームが上位進出を果たしたこともあり、隙のないディフェンスシステムを布いた上で、相手のミスを誘うという戦法をとるチームが多くなった。もともとそういうプレースタイルだった早大に一日の長があったことが明確になった一戦であった。今後日大はどのようなチームを目指すのか?個人的には、一時期の明治のような、可愛げのある力強いチームになって欲しいなと思う。現在のようなプレースタイルもいずれは陳腐化し、新しいプレースタイルが出現してくるのが世の習い。であるならば、ぜひ日大に先駆者としての役割をお願いしたい。一旦どん底に落ちた経験のあるチームだからこそ、開き直って思い切り新しいことに挑戦していただきたいものだ。