’18〜’19シーズン日本選手権決勝サンゴリアスvsコベルコスティーラーズ観戦記(TV観戦) | 渡る世間にノリツッコミ リターンズ(兼 続日々是鬱々)

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三連覇を狙うサントリーサンゴリアス(以下サンゴリアス)と18年ぶりのVを目指す神戸製鋼コベルコスティーラーズ(以下スティーラーズ)との対戦となったのが、今シーズンのラグビー日本選手権決勝。

 

私の青春時代、この選手権を7年連続で制し、常勝軍団の名をほしいままにしていたスティーラーズが最後に王座を譲ってからすでに18年も経つのか、という感慨にまず襲われた。スティーラーズのV7以後のトップリーグはまさに戦国時代。東芝ブレーブルーパス、三洋電機(現パナソニック)ワイルドナイツ、サンゴリアス、ヤマハ発動機ジュビロなどのチームが何度かづつ覇権を握ったが、「PからGO」のプレースタイルでV3を果たしたブレーブルーパス以外はめぼしい「長期政権」はなし。V7の戦士であった故平尾誠二氏によれば「V3くらいが一番難しい」のだそうだ。選手は過去2年続いた成功体験を捨てられないし、敵チームはチャンピオンチームを標的に徹底的に研究して挑んでくる。また、世界クラスの有力選手の入団によって、チーム力が格段の進歩を遂げるチームもある。

 

今シーズンのサンゴリアスは、まさにその「難しさ」に直面していた。主力選手がほとんど残った上に、有望な新人も入団し、チーム力としては上がっているはずなのに、「辛勝」続き。ロスタイムでようやく逆転したトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦をはじめ、ワンチャンスでひっくり返る試合ばかりだったし、長らくNZオールブラックスの司令塔を務めたダン・カーターを獲得したスティーラーズにはシーズン本割の対戦では敗れている。日本全体のラグビーのレベルアップという意味では、各チームの切磋琢磨は喜ばしい限りなのだが…。

 

さて、この決勝の舞台は終始スティーラーズペースで進んだ。TV画面で時折見せられたデータによれば、ボールポゼッションの割合はスティーラーズ7に対しサンゴリアス3。画面から受けたイメージからすると、ほぼ全ての局面でスティーラーズが攻めていた。たまにボールを持ったサンゴリアスの攻撃は本来の円滑のつながりを欠き、密集戦では相手ボールを奪うどころか、自ら持ち込んだボールをターンオーバーされることが目立った。焦れば焦るほど強引なプレーに走らざるを得ず、ミスも生じやすくなるし、首尾よく防御網を突破したものの、突出しすぎて孤立したプレーヤーに追いつかずにターンオーバーを許す…、悪循環とはこういうゲームのことだ、という典型例を見せてもらったというところだ。

 

スティーラーズは常にチーム全員の力の向く方向が一致していたように思う。サンゴリアスから移籍してきたSH日和佐の相変わらずの素早い球さばきとダン・カーターの的確な戦術選択が見事にハマった。元々選手個々の質は高いチームだったのだが、昨シーズンまでは、チームとしての一体感に欠けており、それが上位進出の妨げとなっていたのだが、センターラインがしっかりしたことで、文字通りチームに一本筋が通った。V7の頃を彷彿とさせるような、敵チームがいかに攻めて来ようとも、その力をずらしてずらして、得点だけはしっかり奪うという、「イヤラシイ」強さがシーズン開始から終了まで持続したのだ。

 

トップリーグのライバルチームは眠れる獅子の覚醒と、少なくとも後2年くらいは目覚めた獅子が大暴れすることを予感したことだろう。仮にダン・カーターが欠場したとしても、今年のサンウルブズを支えた「スーパーブーツ」ヘイデン・パーカーが控えているし、来シーズンは例年になく有力な新人が大量に入団するようだ。平尾、林、大八木というビッグネームがいるうちに、堀越、元木、吉田、伊藤といった有力新人が入団し、次の時代に強さを引き継いでいく、といういい循環に入りつつあるのだ。

 

今回大敗を喫したサンゴリアスだって当然黙ってはいないだろう。思えば、スティーラーズのV8を阻んだのはサンゴリアスだったし、前回のスティーラーズの日本選手権の決勝はサンゴリアスと同点で両チーム優勝、トップリーグ発足の年の開幕戦カードもこの両雄の対決だった。この両者には不思議な因縁があり、それが続いて行くのだろうと思う。ワイルドナイツ、ヴェルブリッツの巻き返しも期待できる。心配なのはブレーブルーパスだが、まあこれはチーム以前の問題なので仕方がない。またひとつ強豪が現れたトップリーグの来季以降が楽しみだが、その前に来年はワールドカップイヤーだ。今シーズンの競り合いがジャパンのレベルを引き上げてくれていることに期待したい。